トゥジマン大統領時代
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「クロアチア民主同盟」の記事における「トゥジマン大統領時代」の解説
1992年の大統領選挙では、後にクロアチア民主同盟の絶対的な指導者として1999年に死去するまで大統領職に君臨したフラニョ・トゥジマンが大統領として初めて選出された。 党は1990年代を通してクロアチアの政権を主導し、その政権下で1991年のクロアチア独立宣言、1992年の国際的な独立承認、1998年までにかけてのセルビア人勢力(クライナ・セルビア人共和国)の駆逐と全国土の回復を成し遂げた。この間、党は1992年と1995年の総選挙に勝利し、支配政党としての立場を維持した。 トゥジマン政権はセルビア人を公職から追放し、反セルビアのキャンペーンを推し進めた。党はクロアチアの独立を強く支持する立場をとったため、クロアチアの独立に反対し、ユーゴスラビア連邦への残留を望む同国のセルビア人少数民族からは嫌悪されていた。このことは、セルビア人がクロアチアからの分離とクライナ・セルビア人共和国の創設、その後のクロアチア紛争の一因となった。これらの動きに対するクロアチア民主同盟の行動には賛否両論あり、クロアチア紛争初期の頃の党の政策を過激な民族主義とみなし、暴力を増大させる一因となったとする見方がある一方で、クロアチア民主同盟はセルビアやユーゴスラビア人民軍に懐柔されており、そのためにクロアチアがとるべき防衛行動は十分ではなかったとする見方もある。トゥジマンやクロアチア民主同盟の政策は状況に応じて変動しており、党の政策を論ずるにあたってはその時々の社会的、政治的、経済的、軍事的情勢を考慮する必要がある。 クロアチア民主同盟はまた、クロアチアの共産主義から資本主義への移行プロセスを主導した。特に、クロアチア民主同盟主導の政府は公営企業の民営化を進めた。これは、第二次世界大戦後の共産主義政権による国有化への不満を解消する有効な方法であった。1992年には株式会社を認める法を施行した。 多くの実業家たちが、クロアチア民主同盟の影響下で政府が出資するローンを得て、かつての国営企業を手中に収めていった。このモデルは濫用され、クロアチア民主同盟以外の政党が関与しているものもあったが、他党の関与の比重は大きくはなかった。しかし、すべての民営化がこの方法で行われたわけではなかった。クロアチア民主同盟に対するロビー活動を行ったり、クロアチア政界との強いつながりがある者については、速やかに国有財産の返還を受けることができた。国有化されていたクロアチアのカトリック教会の資産や、ザグレブ郊外のペトリニャのガヴリロヴィッチ社(Gavrilović)などは、このようにして速やかに民営化が進んだ。 クロアチア民主同盟のイデオロギーとしては、党幹部らは当初は右翼政党と規定し、後にトゥジマンはサッチャリズムの影響を受けていると言明した。後に、中道右派やキリスト教民主主義が党是とされるようにあった。しかし、唯一の公式の党のイデオロギーは、「国家的な和解」であるとされ、これはクロアチアにおいて、左翼のパルチザンと右翼のウスタシャの子孫が、父祖の時代の対立を乗り越えて、現代的で民主的な独立したクロアチアのために協調することを目指すものであった。実際には、この方針で、党の過激派を代表する人物であった防衛大臣のゴイコ・シュシャク(Gojko Šušak)はトゥジマンからの支持を取り付けた。トゥジマンの過激主義者への傾倒を嫌ったスティエパン・メシッチやヨシップ・マノリッチ(Josip Manolić)は1994年に党を去り、クロアチア独立民主党(Croatian Independent Democrats)を結成した。過激主義者への傾倒はクロアチア紛争の終結後には緩和され、より現実の生活に即した政治に転じ、社会保守主義の主力政党となっていった。 紛争の終結とクロアチアの領土回復が実現したことによって、クロアチアの国民の関心もまた、国家の独立や外交といった問題から、経済や生活水準などへと移っていった。1990年代末には、これに加えてトゥジマンの健康状態の悪化と、その後継をめぐる党内の対立が激化した。党内の各派閥は、それぞれ自派に親和的なメディアを使ったり、民営化プロセスの暗部に関する対立派閥の秘密情報を漏らすなどして党内争いを続けた。更に、ザグレブ危機(Zagreb Crisis)でのトゥジマンの不適切な関与もあり、クロアチア民主同盟に対する支持は大きく低下した。
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