ダム堤体改修
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/15 17:15 UTC 版)
ダム本体(堤体)を改修する再開発事業は、ダム機能の維持を最大目的とする。対象となるダムは明治時代・大正時代以前に建設された古いダムである。特にコンクリートダムにおいては従前に限局的な修繕はされているものの、全面的な大修理が行われた例はかつてなかった。しかし老朽化の進行により地震や異常出水への懸念が出始めた。 1995年(平成7年)1月17日に阪神・淡路大震災が発生し阪神地方に莫大な被害を与えた。被災地の六甲連山には多数のダムが建設されているが、特に古いものとして1900年(明治33年)に完成した神戸市水道局管理の布引五本松ダム(生田川)があった。築95年を経過しての大地震の遭遇であったが、重力式コンクリートダムの特性を存分に発揮し震災によって決壊などの致命的損壊を負うことはなかった。だが、その後の調べで亀裂や漏水が起こることが発見され、放置すれば再度大地震が発生したときの安全性に重大な影響を及ぼしかねない。このためダムを管理する神戸市は貯水池の水を全て抜いて空にし、漏水の原因となっている亀裂箇所を修繕し、さらに湖底に溜まった堆砂を掘削して貯水容量も確保した。だがダムは日本最初の重力式コンクリートダムとして土木史的に極めて貴重なものであるから、外観を損ねないように細心の注意を払いながら修理を行った。この「布引五本松ダム再開発事業」の完成により、ダムは1世紀を経た現在でも神戸市の水がめの1つとして稼動し続けている。また、外観を損ねない修理の結果、2006年(平成18年)には国の重要文化財(建造物、近代化遺産)に指定された。このようにダム機能を維持しつつ外観を保護した再開発事業として他には、日本唯一の五重マルチプルアーチダムである香川県の豊稔池ダム(柞田川)再開発がある。 一方、ダム外観を全く変更して再開発を行った例としては広島県の帝釈川ダム(帝釈川)がある。1924年(大正13年)に水力発電を目的として上帝釈峡に建設された堤高62.1mの重力式コンクリートダムであるが、こちらも築80年近くを経過しており老朽化が進行していた。既に嵩上げと洪水吐きの改修は行われていたが、堤体を全面的にリニューアルし併せて発電能力の増強を図ろうとした。2004年(平成16年)より着手されたこの事業ではダム表面にコンクリートを打ち増し、非越流式であった型式をダム天端から越流させる越流型に変更し2門のゲートを設けた。この「帝釈川ダム再開発事業」は2006年7月に完成したが、ダム所在地が比婆道後帝釈国定公園に指定されていることから環境への配慮を最大限に行ったのも特徴である。このため、貯水位は低くしたもののダム湖である神竜湖は湛水したままで工事を遂行している。
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