ダム堆砂の対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/01 20:21 UTC 版)
このように堆砂問題は古くから提起されていたが、以前は浚渫以外有効な除去方法がなく、技術的に堆砂除去は不可能と言われていた。だが近年では河川工学や土木技術の解明・進歩により有効な対策が実用化されて来ている。 天竜川水系では美和ダム(三峰川)や佐久間ダムで「排砂バイパストンネル」を設置、洪水時に土砂を含んだ河水を下流に迂回させることでダム湖堆砂防止と流砂機能促進を図ろうとしている(ただし、直下流の高遠ダムに貯まる堆砂対策はまだ実施されていない)。2004年(平成16年)には美和ダムにおいて排砂トンネルが完成し、さらに深刻な堆砂が進行している小渋ダムでも完成が間近である。黒部川水系では出し平ダム・宇奈月ダム(黒部川本川)の連携排砂が行われて、洪水時に下流に直接流砂させることで同様の効果を図っている。現在建設が進められている一部の治水専用ダムでは平常時は貯水せず水門を開放し通常の流況を維持、増水時のみ洪水を貯留し洪水調節を行い堆砂を防止する試みがある。このようなダムは「穴あきダム」と呼ばれ、足羽川ダム(足羽川)を始め益田川ダム(益田川)・立野ダム(白川)等で導入されている。この他ダム湖上流に貯砂ダムを設置し定期的に土砂を除去したり、「緑のダム」として植林を進めることで山腹からの土砂流出を抑制する試みが行われている。相模川水系では相模ダム・城山ダム(相模川)に溜まった土砂を直接採取し下流部の河原に運搬、洪水時に自然流下させることで湘南海岸の砂州後退を防止する試みを始めている。 ただし、長年湖底に堆積した堆砂はヘドロ化していたり、枯死した植物による硫化水素の発生等ダイレクトな流下は環境に悪影響を及ぼす。実例として先述の出し平ダム連携排砂事業において、第1回排砂後ヘドロが河川に堆積・固着し黒部川・富山湾への漁業被害が発生、排砂被害訴訟も起きた。このため現在の堆砂流下事業は洪水時の自然流下を条件に実施し漁業被害は起きていない。だが実施して日も浅く環境に与える影響が未だ不確定の面があるため、今後も注意深く観察して行く必要がある。荒瀬ダム(球磨川)のようなダム撤去も根本解決の一案ではあるが、堆砂処理対策が万全でないと同様の被害を及ぼしかない。「堆砂が進行するからダム撤去」ではなく、「堆砂を除去しダムをメンテナンスして、機能を維持」する方がリサイクル時代の現代においては、資源・財源保護の上で合理的と言える。ただし、水循環とそれに付随する流砂サイクルを考慮した場合、小手先の対策は問題を先延ばしにしているに過ぎないという意見もある。
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