セルロースナノファイバー
英語:Cellulose nanofiber Materials、Cellulose nanofiber、CNF
パルプなどの加工処理に用いられるセルロース繊維をナノメートルサイズまで微細化して再生成したもの。天然素材から採取できる超微細な繊維状物質。
セルロースナノファイバーは、植物細胞壁(セルロースを主成分とする)を解きほぐし、その構成要素の繊維を取り出して作られる。セルロースナノファイバーの繊維の太さは十数ナノメートル単位の微細さであり、これは従来のパルプ繊維の1000分の1ほどの細さである。
セルロースナノファイバーの、微細さ以外の性質は、従来の製紙原料(パルプ)と変わらない。セルロースナノファイバーで作られた紙は、通常の紙と同じく、折りたためる、燃やせる、軽い、といった性質を持つ。ただし、その繊維の細さ(数ナノメートル)が可視光線の波長(百ナノメートル単位)よりも格段に細かく、光の散乱をあまり生じさせないため、光を透過する、つまり透明素材にすることが可能になる。
セルロースナノファイバーは鉄鋼材料に並ぶ強靭さを持ち、石英に並ぶ熱膨張率の低さを持つ。植物由来の繊維であるため鉱物よりもはるかに軽い。セルロースナノファイバーを補強材料に用いることで、素材の性能を格段に引き上げることができる分野が少なくない。鉄鋼材料に使用すれば、強度を保ちつつ格段の軽量化が実現し得る。透明樹脂に混ぜ込めば、透明さを失わずに、強度の向上や柔軟性の向上、熱による変化の低減といった性質を追加することができる。自然由来の素材から得られる点で環境負荷も比較的少ない。
セルロースナノファイバーはナノテクノロジーの進展により研究が急速に進みつつある。
関連サイト:
セルロースナノファイバーとは - 京都大学生存圏研究所
セルロース‐ナノファイバー【cellulose nanofiber】
ナノセルロース
(セルロースナノファイバー から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/10 04:00 UTC 版)
ナノセルロース(英語:Nanocellulose)とは、ナノ構造化セルロースを指す用語である。植物の細胞壁の主成分セルロースをナノレベルまで微細に解きほぐしたものである。セルロースナノクリスタル(CNCまたはNCC)、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースナノウィスカー(CNW)、バクテリアによって生成されるバクテリアナノセルロース等がある。
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- 1 ナノセルロースとは
- 2 ナノセルロースの概要
- 3 関連項目
セルロースナノファイバー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 03:36 UTC 版)
「ナノセルロース」の記事における「セルロースナノファイバー」の解説
セルロースナノファイバーには製造方法によって、もっとも基本となる単位である幅 4 nmのセルロースミクロフィブリル(シングルセルロースナノファイバー)、それが数本のゆるやかな束となって細胞壁中での基本単位として存在する幅10~20 nmのセルロースミクロフィブリル束、ミクロフィブリル束がさらに数十~数百 nmの束となりクモの巣状のネットワークを形成しているミクロフィブリル化セルロース(MFC)などがある。 通常の条件下ではゲルまたは粘性のある流体であるが、攪拌したり振動を与えると粘性が低下するチキソトロピーを示す。攪拌・振動を止めると元のゲル状に戻る。
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