コンドン委員会
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空軍の研究が疑われ始めたことにより、1966年、議会はこの問題でUFO論争史上初めてになる公聴会を開くことになった。その結果、より詳細なUFO研究を行うため、空軍はUFO研究を大学に委託することが決定された。(この結果は空軍はこれまでの研究が不十分なものであったと暗黙のうちに認めた事によるものだとも言われている。)1966年、空軍はコロラド大学がUFO研究を引き受け、エドワード・U・コンドン(英語版)がその責任者となることを正式に発表し、「コンドン委員会(英語版)」がここに発足することになった。多くの研究者が賛意を示したが、コンドン自身は初めからUFOには懐疑的であり、研究者からは相手にされていないUFO目撃例を茶化して極端に取り上げるなど「公平」ではないと言われる点があった。 コンドン委員会ではあるトラブルが起きた。委員会がUFOを客観的に研究しているフリをするために、UFOを物理的に研究するのではなく「UFO目撃者の心理学的研究」に重点を置く事を提言した「ロウの覚書」の存在が発覚し、委員会の研究の客観性に疑問がもたれることになった。その流れを受けて1968年には議会調査による公聴会が行われた。公聴会へは天文学者のカール・セーガンや宇宙航行学のロバート・ベイカーなど様々な分野の学者が参加した。公聴会ではコンドン委員会への批判は場違いであるとして禁じられていたが、参加したメンバーの多くはコンドン委員会に批判的であるスタンスを終始保ったまま、公聴会は幕を閉じた。なお、この公聴会で取り上げられた様々なUFO事例の中には、コンドン委員会で取り上げられた事例と共通のものも含まれていたが、ほぼ同時期であるコンドン委員会の研究とは結論が全く異なっていたというケースがいくつも見られている。 コンドン委員会は最終報告書を公開する前に、全米科学アカデミー(NAS)に報告書の審査を依頼した。NASはコンドン委員会の報告書の内容を絶賛し、その結論に同意した。コンドンの教え子で、全米科学アカデミーの議長フレデリック・スィエッツは後に「空軍の決定を助けるという”ただ1つの目的のために”NASは報告を作成した」と後日手紙に記している。コンドン委員会の報告書はプラズマ理論や気象光学などUFO問題以外のテーマが多数を占めていた。そしてUFOを扱った章では、UFO目撃例の91の事例のうち、61件が「誤認・でっち上げ」であり、残り30件は「既知現象の可能性あり、または識別不能」の未解決事例であるとした。この30件のうちのいくつかの事例に「本物のUFO」が紛れていることを委員会は強く示唆した。(宇宙飛行士のマクディビット(:en:James McDivitt)やボーマンによる目撃例や、1956年のレイクンヒース事件など)。しかし最終報告書のほとんどのスペースは「識別済み」であるUFO目撃例の記述に費やされた。そして最終的にコンドン委員会は「過去21年間のUFO研究から科学的知識は全く得られなかった。これ以上UFOの研究を続けても、おそらく科学の進歩に貢献することはないだろう」と最終報告書の結論を締め括った。 最終報告書が発表された数日後にキーホーやマクドナルドらの民間研究者は記者会見を開き、コンドン委員会を批判した。マクドナルドは「コンドン委員会は重要なUFO報告の大部分をまともに調査しておらず、しかもコンドンの結論は報告書に書かれてある調査結果を反映していない」と非難した。キーホーは「コンドン委員会はNICAPが提供した『信頼できる説明不能事例』のうちわずか1%を調査したに過ぎない」と主張した。またキーホーはNICAPの機関紙にて「『目撃者は素人であり興奮しすぎていた』など、コンドンがUFO目撃者の信用を傷つけようとしたこと」「コンドンが『変人が報告した事例』にこだわったこと」などを非難した。APRO(→#APRO)の反応もNICAP同様に批判的であり「コンドン自身が多くの目撃報告を『内部矛盾がある』として捨て去ったように、この最終報告書も内部矛盾があるのだから捨て去られるべきであろう」とAPRO会長は皮肉を述べた。マスコミや政治家、科学者たちのコンドン報告書への評価は分かれたが、一般的にコンドン報告書によりUFO現象ブームは下火になった。空軍はコンドン報告書の結論を支持し、1969年にプロジェクト・ブルーブックを終了してUFO現象との関わりを絶った。 空軍が調査した事件は計12800件で、そのうち未解明とされたものは700件だった。その大部分は情報不足からくるもので、本当に「不可思議」な報告は130件だった。
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