グラフィックス統合チップセットによるオンボードグラフィックス
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「オンボードグラフィック」の記事における「グラフィックス統合チップセットによるオンボードグラフィックス」の解説
「Integrated Graphics Processor」および「チップセット#統合チップセット」も参照 システムに不可欠のグラフィックス機能を他チップに統合する試みは古くから存在し、CPUに統合した Cyrix MediaGX、ノースブリッジに統合した SiS 520 なども存在した。しかし、これら製品はグラフィックス機能の貧弱さに加え、元々シェアの少ないメーカーのCPUやチップセットだったことや、低価格市場を目的にしていたため利用できるCPU性能にも制限があり、広く採用されるには至らなかった。 状況を大きく変えたのがインテルが1999年に発表した Intel 810 チップセットである。i810 はハブアーキテクチャと呼ばれる設計を採用した、当時としては最新のチップセットであり、Graphics and Memory Controller Hub(GMCH)と呼称されるノースブリッジに、同社製3Dグラフィックスチップ i752 をベースとした Intel Graphics Technology コア(以下IGTコア)を統合していた。ベースとなった i752自体、3Dに関しては描画機能・性能ともにグラフィックスチップとしては当時すでに貧弱な存在であったが、2Dの描画性能は十分な性能を有していたため、IGTコアは大多数のユーザーが主に行うオフィス処理や、ウェブブラウジングなどには十分な性能を有していた。 また、i810 は当時としては高速な100MHzシステムバスもサポートしていたため、同設計でハイエンドからローエンドまでのCPUを採用した製品ラインナップを作りやすく、さらにグラフィックスカードを搭載しないで済むため、省スペースデザイン(省スペースパソコンの設計)なども可能であった。このため、メーカー製PCを中心に広く採用され、爆発的な成功を収めた。 しかし、i810 は外部AGPをサポートしていなかった。つまり、後から必要になっても高性能なグラフィックスボードを追加する事ができない(ただし、PCIインターフェイス搭載のビデオカードを増設することでアップグレードすることは可能であった)ため、特に自作パソコンユーザーに敬遠される傾向にあった。この事から、次代の i815 では、システムバスが133MHzに向上すると共に外部AGPがサポートされた。この i815 を搭載した、AGPスロットとオンボードグラフィックスの両方を持つマザーボードが発売されると、今度は自作PC用のマザーボードでもヒット商品が続々と登場した。 この i810・i815 の大成功以降、各チップセットメーカーも競ってグラフィックス統合チップセットを投入し、普及価格帯以下のPCではチップセット統合グラフィックス機能を用いる製品が一般的になった。オンボードグラフィックスの呼称である「内蔵ビデオ」、「内蔵グラフィックス」などはこの形態に由来する。 当初こそチップセット統合グラフィックスは貧弱さを揶揄される存在だったが、需要の拡大とともに進化していった。 機能面ではDirect3D/OpenGLのプログラマブルシェーダーによる3Dグラフィックスおよびビデオアクセラレーションへの対応、HDCPに対応したHDコンテンツ出力、マルチディスプレイなどを実現しており、DirectX 9.0c(シェーダーモデル3)世代ではほぼ単体GPUと遜色の無い水準に達していた。ただし、Intel GMAはDirectX 10(シェーダーモデル4)には対応するものの、OpenCLやDirectComputeを利用したGPGPUには対応しなかった。 反面、性能面では i810 以降のオフィス用途を主眼とした統合グラフィックス製品に対して、主にゲームユーザーなどからの不満も多かった。2001年、NVIDIAが発表したnForceチップセットは統合グラフィックス性能の高さをアピールしており、これ以降は性能を重視した統合グラフィックス製品も多く登場した。 グラフィックス機能を統合したチップセットでは、AGPまたはPCI Expressなどのバスを用いて内部的にチップセットとグラフィックス・コアを接続した。このため、AGPのように1本しか存在しないバスを用いたチップセットの場合、そのバスを用いた外部スロットを使用すると、チップセット統合のグラフィックス・コアは無効になる場合もある。またPC/AT互換システムで必要となるビデオBIOSもマザーボードのBIOSに統合された。
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