クレスタ PA
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/03 18:15 UTC 版)
「ボクスホール・クレスタ」の記事における「クレスタ PA」の解説
1957年に発表されたPA型のクレスタ(と姉妹モデルのヴェロックス)は、おそらく戦後の上級ボクスホール車では最も広く知られたモデルである。 この車は、巨大なテールフィン、ラップアラウンド・ウインドウ(側面まで回りこんだ窓)、ホワイトリボン・タイヤといった当時最新の米国車スタイル様式を取り入れており、1955年モデルのパッカード・カリビアン(Packard Caribbean)への近似性が強かった。キャデラックやビュイックと比べれば控えめであったが、ここまで英国的伝統を逸脱してアメリカ風にデザインを振られた英国製サルーンはほとんど他例がなく(同じく米国資本であるイギリス・フォード「コンサル」「ゼファー」の同時期モデルもアメリカ風ではあったが、PA系ボクスホールほど極端なスタイルは用いていない)、特異な存在となった。ボクスホール伝統のボンネット上の「フルート」は、当初、フェンダーのサイドパネルを細い帯状に凹ませる事で継承されたが、このモデル途中でついに廃止されている。 メーカー製の全てのPAは4ドア・サルーンであったが、ハンプシャーのベージングストーク(Basingstoke)にあるフリアリー(Friary)が改装したエステート版もあり、現在この車は希少である。 メカニズムについては先代のEシリーズ同様に英国車ではありふれた平凡なもので、前輪にコイルバネを使用したウィッシュボーン式独立懸架、後輪にスタビライザーを備えたリジッドアクスルを半楕円リーフスプリングで吊るごく一般的な設計である。全輪共にAPロッキード製9 in (230 mm) ドラムブレーキであった。先代から受け継いだ2,262 ccの6気筒エンジンは、プッシュロッドで作動するOHVで、圧縮比は7.8:1(6.8:1の低圧縮比版もあった)で82.5 bhp (61.5 kW) /4400 rpmの出力を発生した。ゼニス製キャブレターを1基装備し、トランスミッションは前進3速であった。 PA型のクレスタは生産期間中に様々な変更が施され、その最も大きなものは2,262 ccのエンジンが全面刷新され、ショートストローク高速型の2,651 ccに変更されたことであった。この新しいエンジンは、直列6気筒という点では以前のものと同じであったが、その出力は72 PS/4400 rpm から 104 ps/4800 rpmへと劇的に向上していた。 この車は、革とナイロン製表皮を持つ前後席のベンチシートとパイル織りカーペットといった上等な内装を備えていた。ヒーターは標準装備であったが、ラジオは英国市場ではオプション品であった。その他のオプション品にはフォグライト、バックライト、鍵付き給油口、サイドミラー等があった。6名が乗車できるよう前席の床を空けるために、サイドブレーキ・レバーはダッシュボードの下に備え、シフト・レバーはコラムシフトとなっていた。塗色は、単色か2トーン・カラーのどちらかを注文することができた。 1958年に『ザ・モーター』誌がPA型クレスタをテストし、最高速度89.8 mph (144.5 km/h) と0-60 mph (97 km/h) 加速に 16.8 秒、25.2 ml/英ガロン (11.2 L/100 km; 21 mpg-US) の燃料消費率を記録した。テスト車は、£358の税込みで£1,073であった。1960年にはオーバードライブ付きの2.6 L エンジン版をテストし、最高速度が94.7 mph (152.4 km/h) と0-60 mph (97 km/h) 加速が15.2 秒に向上し、燃費は26.8 ml/英ガロン (10.5 L/100 km; 22.3 mpg-US) に改善されていることを確認した。テスト車は、£317の税込みで£1,077で、オーバードライブ無しは£1,014であった。 1970年代に多くのPA型クレスタが改造されカスタマイズの素材とされた。このモデルはフィフティーズ文化の隆盛と共に人気となり、テディボーイ(teddy boy)達により運転され、ロックンロールのイメージと重ね合わせて見られることが非常に多かった。1981年のスペシャルズによる『ゴースト・タウン』(Ghost Town)のビデオ内でフィフティーズの服装をしたメンバーと共に1960年型のPA型クレスタを見ることができる。 現在ではPA型クレスタはクラシックとして認識されており、その他のモデルへの評価はそれよりも幾分低いかもしれないが注目度は上がってきている。1950年代終わりのPA型クレスタの有名なオーナーにドン・ラング(Don Lang)がいる。
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