キー・システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 06:23 UTC 版)
クラリネットの前身楽器であるシャリュモーが一般化しなかったのは、前述のように第2倍音が使えないので、1オクターヴと完全5度の音のために異なる指穴を開けなければならない。それでは穴が多すぎる上、間隔も広すぎて人間の手指では押さえきれないので、狭い音域しか実用にならなかったためである。しかし、キー装置が開発されたことにより、必要なとき以外は常に閉じておいたり、指の届かないところに開けた穴を開閉したりすることもできるようになった。これによって、初めて1オクターヴと完全5度の指穴に対応し、基音と第3倍音との間に隙間のない、連続した広い音域を持った楽器が作れるようになったのである。 指穴の配列並びにキー・システムは、現在までさまざまなものが開発されている。 ベーム式(フランス式) 最も一般的なシステム。1843年にフランスのビュッフェ(L. A. Buffet 1885年没)とクローゼ(H. E. Klosé 1808年-1880年)によって、1832年のベーム式フルートのキー・システムを応用して開発され、1844年に特許を得た。機構は複雑であるが、運指が比較的単純で機動性が高く、初心者にも扱いやすい。日本では、ほとんどの奏者がベーム式の楽器を使用している。 エーラー式(ドイツ式) 1812年にミュラー(I. Müller)が開発した13キーのクラリネットを元に、ベーム式クラリネットの発明から約60年後にオスカール・エーラーによって開発されたシステム。ベーム式の利点も取り入れられ、音色もよいことから、特にドイツのクラシック演奏者はエーラー式を好んで使っている。吹奏楽ではあまり使われず、オーケストラで用いられる。 その他 オーストリアではウィーンアカデミー式(ウィーン式)という楽器が使用されている。 アルバート式は、音量は大きいが、音色がベーム式やエーラー式とは明らかに異なる。古いスタイルのジャズでよく使われたが、最近はあまり用いられていない。 リフォームド・ベーム式は、エーラー式用の管体に、ベーム式キー・システムを実装したものである。エーラー式の音色のよさとベーム式の機動性とを兼ね備えている。 かつては木材や象牙でキーを製造した時代もあった。しかし、現在はほとんどが金属製で、主に洋白が用いられており、表面に銀メッキあるいはニッケルメッキを施されているのが一般的である。金属の配合比率やメッキの質・厚さなどは、メーカーによって異なっている。キーは素手で簡単に曲げられる程度の強度なので、楽器の組み立て・分解の際に変形させないよう注意する必要がある。変形するとキーバランスが崩れ、音質・音程に影響する。 キーのうち、音孔を指で直接塞ぐ部分以外には、タンポ(次項)が接着されている。また、キーを操作したとき、管体や他のキーと触れる部分にはコルクなどが貼られており、この厚みもキーバランスに影響する。 ベーム式クラリネット エーラー式クラリネット アルバート式クラリネット
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