エーラー・システム

エーラー・システム(ドイツ語: Oehler-System、英語: Öhler system)は、オスカール・エーラーによって開発されたクラリネットのキーの仕掛けである。ミュラー・システムのクラリネットを基礎として音孔を追加し[1]、イントネーション(音程)と音響上の欠陥として特にフォークフィンガリングをする音(FとB♭)を補正した。キーはベーム・システムよりも多い。改良の主な成果は特許の C♯、低い E - F の補正、フォークフィンガリングの F / B♭ 、同じく B♭ の補正である。主にドイツとオーストリアで使用されている。
エーラー・システムのクラリネット製作者たち

オスカール・エーラーには3人の弟子がいた。フリードリヒ・アルトゥール・ユーベル、ルートヴィヒ・ウァルシェウスキー(Ludwig Warschewski 1880年- 1950年)[2]、カール=フリードリヒ・トート(Karl-Friedrich Todt)である。ユーベルとトートはドイツの伝説のクラリネット製作者である。
ウァルシェウスキーはストックホルムに移住してロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団に入団し[3]、クラリネットのソロ奏者としても活動した[4]。またユーベル工房製から未完成のクラリネットを入手すると、ボアと機構の研究に励んだ。ウァルシェウスキー製のクラリネットは、たとえばディーター・クレッカー(ドイツ)など著名なクラリネット奏者たちに使われた。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に初めて参加した時にユーベル製クラリネットを用いたカール・ライスターだが、のちにヴァーリッツァー工房(1959 年創業)の楽器に乗り換えた。この工房の1970年代以前に製作されたクラリネットはボアがより大きく、イントネーションがより優れており、同時に音色はユーベル製と遜色がなかった。1970年代以降、いくつかの改良を設計に施し、今やドイツの大多数のオーケストラに採用されている。それらのクラリネットは非常に値が張るが、ヴァーリッツァの見習い職人には、同様のクラリネットを安く頒布する者もいる[要出典]。またヤマハ製のドイツ式クラリネットもエーラー・システムを採用する[5]。
脚注
- ^ “クラリネットのしくみ:[実験ベーム式とエーラー式 - 楽器解体全書 - ヤマハ株式会社]”. www.yamaha.com. 2025年5月15日閲覧。
- ^ “Clarinet. Nominal pitch: A.” (英語). www.europeana.eu. 2025年5月15日閲覧。
- ^ “Ludwig Warschewski - Biography, Compositions, Labels” (英語). Classite - Online Classical Records Database. 2025年5月15日閲覧。
- ^ Carl Maria von Weber; Axel Malm(ホルン); Ludwig Warschewski(クラリネット); Roman Dukstulsky(チェロ); Swedish Radio Symphony Orchestra(交響楽団); Tor Mann(指揮) (1986). “Oberon, romantic and fairy opera, J.306, 1826, Overture” (LP). Swedish Radio Orch: 50 Years - Szell, Kubelik, Stravinsky, Solti, D.Oistrakh, D.Brain, Stokowski,etc play Beethoven, Brahms + 33 more. BIS. BIS LP 331 2025年5月15日閲覧. "スタジオ録音:1933-12-08。場所:Kungliga Musikaliska Akademien, Stockholm。録音時間:00:07:15。注記:欠落=86-139バー。小冊子付き。LP全編の録音は1928年-1979年。"
- ^ “YCL-857II/847II - クラリネット - 概要”. jp.yamaha.com. ホーム > 製品情報 > 楽器 > 管楽器・吹奏楽器クラリネット. 2025年5月15日閲覧。
関連資料
- オスカール・クロル 著、大塚精治、玉生雅男 訳、ディートハルト・リーム、Riehm, Diethard 編『クラリネット・ハンドブック : 歴史と音楽と名演奏家たち』音楽之友社、1984年10月。doi:10.11501/12433850。NDLJP:12433850、全国書誌番号:85012138。原タイトル『Die Klarinette』。
- 22 コマ:のちにオスカール・エーラーによって行なわれた歌口の抜本的改革と、それから同じくかれの発明になる"湾曲バーン"であった。
- 27 コマ:ベルリンのオスカール・エーラーによるモデルである。
- 29 コマ:かつてオスカール・エーラーの協力者であったニュルンベルクのゲオルク・グレーセル〔原注3〕は、独自のシステム(後略)
- 87 コマ:オスカール・エーラーは1858年2月2日にアンナベルク(エルツ山地)で生れた
- 100 コマ:図10. ベルリンのオスカール・エーラーのクラリネット(1902年)。図11. ベルリンのオスカール・エーラーによるA管とb管クラリネット
- 「文献案内」153-155頁。
- 千葉理「クラリネット:D・クレッカー」『Pipers = パイパーズ』7巻4(通号76)、杉原書店、1987年11月、22-27頁、doi:10.11501/7957814、NDLJP:7957814。
- 14 コマ:(中略)オスカール・エーラーの自作。
- 15 コマ:(前略)オスカール・エーラーの楽器(後略)
関連項目
- アルバート・システム
- ベーム式(ベーム・システム)
外部リンク
- クリスチャン・レーダーマン・コレクション : クラリネット・ギャラリー(エーラー式) 3世紀にわたるクラリネットを収蔵
エーラー式(ドイツ式)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 06:23 UTC 版)
「クラリネット」の記事における「エーラー式(ドイツ式)」の解説
1812年にミュラー(I. Müller)が開発した13キーのクラリネットを元に、ベーム式クラリネットの発明から約60年後にオスカール・エーラーによって開発されたシステム。ベーム式の利点も取り入れられ、音色もよいことから、特にドイツのクラシック演奏者はエーラー式を好んで使っている。吹奏楽ではあまり使われず、オーケストラで用いられる。
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