カラリメトリー
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/10 05:09 UTC 版)
カラリメトリー(英: colorimetry)は体系化された色の測定と表現である[1][2]。
概要
カラリメトリーは人間の色覚を物理的に表し定量化するための科学的および技術的手法である[2]。色覚とスペクトルの間の物理的相関への依存を減らし、CIE 1931 XYZ色空間の三刺激値および同様の定量化方法に基いて行われる[4]。カラリメトリーはいくつかにカテゴリ分けできる(⇒ #分類)。カラリメトリーには様々な専門の機材が用いられる(⇒ #計測機材)。
分類
測色は以下のように分類できる:
-
視感測色 (、英: visual colorimetry): ヒトの目を用いた色刺激の相互比較による測色[5] -
物理測色 (、英: physical colorimetry): 検出器を用いた物理量測定による測色[6]
等色
等色とは「同じ色をつくる」ことである。すなわちリファレンスとなる色刺激が提示され、操作可能な色刺激を調整してこれをリファレンスと同じ色にする[8]。色刺激を作る/調整する操作の例としては R/G/B 原色光の輝度変更が挙げられる。等色は視感測色に関連した操作でありヒトの目を用いるため、照明条件や視野サイズなどの条件を適切にコントロールする必要がある。
なお、等色はスペクトルの一致とは必ずしも同義でない。スペクトルが不一致にも関わらず特定条件下では等色が成立するものは条件等色という。
類似の概念に
等色関数

様々な色を体系立てて表現する手法の1つに原刺激(≒原色)セットの加法混色がある。ある色を得るために必要な各原刺激の量/比率は原刺激そのものとその組み合わせに依存し、これを記述する手法の1つが等色関数である。原刺激
三刺激値色度計
デジタルイメージング技術において、色度計は三刺激値を計測する機材であり、カラーキャリブレーションに用いられる。カラープロファイルを用いて、画像の入力から出力に至るワークフローにおける色の一貫性を保っている。
分光放射照度計、分光測色器、および分光色度計
光源の絶対スペクトル分布は、分光放射照度計で計測することができる。分光放射照度計は、入射光を光学的に集め、モノクロメーターを使って細分化された波長ごとに照度を求める。
反射光に関しては分光測色器 (あるいは分光反射測色器、反射測色器とも呼ばれる) を用いて、試料の可視光域 (および少しの非可視光域を含む) の計測を行う。例えば10 nm の幅で読み取る場合、可視光域である400-700 nm は31サンプルにより読み取ることができる。これら31サンプルを用いて、その特性を表すのに最も重要な、スペクトル反射曲線 (波長毎の反射率) を描くことができる。
分光測色器の読み取り値自体はスペクトルであり、より重要な三刺激値には、色空間変換による色度座標変換により計算される。この目的でも分光測色器は用いられる。分光色度計は分光測色器の一種であり、数値積分 (等色関数の内積の積分を光源のスペクトル分布に対して行う) により三刺激値を測定することができる。 分光色度計の三刺激値色度計に対する利点として、物理フィルタを持たないため、フィルタ製造時のばらつきに影響されず、経年変化を起こさない限りは単一のスペクトル反射曲線を得ることが可能である。[14] 一方で、三刺激値色度計は専用の設計・製造がされているため、安価であり、簡単に使用できる。[15]
国際照明委員会 (CIE) は、より滑らかなスペクトルを得るため、5nm以下のサンプル間隔での計測を推奨している。 サンプル間隔が大きくなると、例えば右に示したCRTディスプレイの赤色蛍光体の光の放射のような急峻なカーブのような場合において、計測精度が悪化してしまう。
色温度計
色温度計は、写真や映画撮影において、異なる色温度の光源においてどのようなカラーバランスが必要かを判断するために使われる。参照色温度を入力すると、参照色と計測された色の間の差異をミレッドで表示される。これを基に、適切なミレッド値に近いカラーフィルターやレンズフィルターを使うことで、より適切なカラーバランスが実現できる。[16]

内部的にはシリコンフォトダイオードを用いた三刺激値色度計となっている。対応する色温度は、CIE 1960 色空間の色度座標を計算し、黒体軌跡上の最も近い点を特定することで計算される。
脚注
出典
- ^ a b "測色 一連の規約に基づいた色の測定。 ... colorimetry" JIS Z 8113:1998, p.53 より引用。
- ^ a b Ohno, Yoshi (16 October 2000). CIE Fundamentals for Color Measurements (PDF). IS&T NIP16 Intl. Conf. on Digital Printing Technologies. pp. 540–45. 2009年6月18日閲覧。
- ^ "測色− ... Colorimetry-" JIS Z 8781-1:2012, p.1 より引用。
- ^ Gaurav Sharma (2002). Digital Color Imaging Handbook. CRC Press. pp. 15–17. ISBN 978-0-8493-0900-7
- ^ "視感測色 人間の目によって,色刺激相互の比較を行う測色。... visual colorimetry" JIS Z 8113:1998, p.53 より引用。
- ^ "物理測色 物理的(放射)検出器を使用して測定を行う測色。... physical colorimetry" JIS Z 8113:1998, p.53 より引用。
- ^ "分光測色 分光測定によって行う測色 spectrocolorimetry" JIS Z 8113:1998, p.53 より引用。
- ^ a b "等色(とうしょく)... 与えられた色刺激と,色が等しく見える別の色刺激を作る行為。 ... 視感色彩計で二つの視野の色が等しくなるように調整すること ... colour matching" JIS Z 8113:1998, p.15 より引用。
- ^ "色合わせ(いろあわせ)... あるイルミナントの下で基準の物体と等しい知覚色をもつ別の物体を調合又は選出すること ... colour matching" JIS Z 8113:1998, p.15 より引用。
- ^ a b c d "等色関数(三色表色系の) 可視波長の全域にわたって,それぞれ等しい放射パワーをもつ単色光刺激の三刺激値。... colour-matching functions" JIS Z 8113:1998, p.30 より引用。
- ^ ICC White Paper #5
- ^ Lee, Hsien-Che (2005). “15.1: Spectral Measurements”. Introduction to Color Imaging Science. Cambridge University Press. pp. 369–374. ISBN 0-521-84388-X . "The process recommended by the CIE for computing the tristimulus values is to use 1 nm interval or 5 nm interval if the spectral function is smooth"
- ^ Schanda, János (2007). “Tristimulus Color Measurement of Self-Luminous Sources”. Colorimetry: Understanding the CIE System. Wiley Interscience. doi:10.1002/9780470175637.ch6. ISBN 978-0-470-04904-4
- ^ Andreas Brant, GretagMacbeth Corporate Support (2005年1月7日). “Colorimeter vs. Spectro”. Colorsync-users Digest. 2008年5月6日閲覧。
- ^ Raymond Cheydleur, X-Rite (2005年1月8日). “Colorimeter vs. Spectro”. Colorsync-users Digest. 2008年5月6日閲覧。
- ^ Salvaggio, Carl (2007). Michael R. Peres. ed. The Focal Encyclopedia of Photography: Digital Imaging, Theory and Application (4E ed.). Focal Press. p. 741. ISBN 0-240-80740-5
参考文献
- JIS Z8113:1998 - 照明用語
- JIS Z8781-1:2012 - 測色−第1部:CIE測色標準観測者の等色関数
関連項目
- カラリメトリーのページへのリンク