共和国防衛隊とは? わかりやすく解説

共和国防衛隊

(イラク共和国防衛隊 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/11 22:01 UTC 版)

イラク共和国防衛隊アラビア語: حرس العراقي الجمهوري Ḥaris al-‘Irāq al-Jamhūriyy Iraqi Republican Guard 通称RG)はサッダーム・フセイン政権時代の軍事組織。創設者はフセイン・カーミル・ハサンイラン・イラク戦争時代から存在しており、湾岸戦争では主力部隊として戦った。湾岸戦争後は、非ティクリート系の部隊の反乱が発生し、改めて特別共和国防衛隊が編成された。イラク戦争では、初期の空爆により通信網を遮断され大規模な組織的作戦能力を奪われたり、多くの指揮官CIAの調略を受けたりしたため、[要出典]一部の部隊を除き有効な反撃はできなかった。

概要

イラク共和国防衛隊のシンボル

共和国防衛隊(以下RG)は、当初、「大統領特別警護隊」として発足しており、任務はサッダームの身辺警護であり、通常戦闘にはほとんど参加することはなく、隊員はバアス党員で固められており、またティクリート出身者が多くを占めていた。

イラン・イラク戦争時の1986年、イラン軍の大規模反攻が始まり、イラク軍は占領地を次々と奪還された。この危機に際して、イラク政府は、一般大学を閉鎖し、大学生を緊急に召集した。この際、非ティクリート出身者にも、RG入隊、従ってバアス党入党の資格が与えられた。この結果、RGでは、一時的に血縁・地縁によらない能力主義が採られ、指揮官にはイラク軍の有能な将校が就き、イラン軍の撃退、後のクウェート侵攻でその作戦能力を誇示することができた。

徴兵制の旧イラク軍では珍しく志願制の部隊であり、装備・給料・待遇の面で格段の差がある。イラク戦争開始時の兵力は軍全体で約35万人に対して、6個師団7万人の勢力を保持していた。なお、イラクと同じくバアス党による支配が続くシリア同名の軍部隊)やイラクと同じく汎アラブ主義を掲げるイエメン(同国の共和国防衛隊は内務省管轄の準軍事組織とされる)等にも同名の部隊が存在する。

現在、元RG隊員の多くは旧バアス党支持派やISILのような反政府組織に参加していると言われている。

組織

発足時はイラク陸軍出身の将校がRG司令官としてRGを統率していたが、その後の機構改編により、政権内部で台頭したサッダームの次男クサイが長を務める特別保安機関(OSS)の傘下に入り、OSS長官を務めるクサイが、実質上の最高指導者となった。公式なポストでは無いものの、RG監督者の肩書が与えられている。

指揮命令系統は、監督者であるクサイから、RG事務局に伝えられ、そしてRG参謀総長から各軍団へと流れる仕組みになっている。

2003年4月時点でのRG事務局長は、カマール・ムスタファー・アブドゥッラー・スルターン陸軍中将。参謀総長は、サイフッディーン・フライイフ・ハサン・ターハー・アッ=ラーウィー中将であった。

編成

北部及び南部の2個軍団と直轄部隊から成った。

  • 北部軍団(アッラーフ・アクバル)
    • アル=マディーナ師団(第2装甲師団)
    • バグダード師団(第5自動車化歩兵師団)
    • アドナーン師団(第7機械化歩兵師団)
    • アル=アービド師団:?自動車化歩兵師団
  • 南部軍団(アル=ファーティフ・アル=ムビーン)
    • ハンムラビ師団(第1機械化歩兵師団)
    • ネブカドネザル師団(第6自動車化歩兵師団)
    • アル=ニダー師団(?装甲師団)
  • 直轄又は所属不明部隊
    • タワカルナ師団(第3機械化歩兵師団)
    • アル=ファウ師団(第4自動車化歩兵師団)

旧イラク軍の装備

ここでは湾岸戦争直前の1990年時点での装備を一覧とする。なお当時も現在も正規軍と共和国防衛隊の人数や装備は混同して同時に紹介される事が殆どで、軍事作戦などでも共同歩調をとっていたため、ここに記載されているのは共和国防衛隊も含めた旧イラク軍全体の装備である[1]

陸軍装備
兵員100万人。戦車5500両等保有[2]
画像 名称 原産国 分類 保有数 兵装・備考
T-54 ソビエト連邦 主力戦車 計1500両
T-55 ソビエト連邦
TR-580 ルーマニア社会主義共和国
59式戦車 中華人民共和国 計1500両
69式戦車 中華人民共和国
T-62 ソビエト連邦 1500両
T-72 ソビエト連邦 1000両
チーフテン イギリス 30両
M60パットン アメリカ合衆国 不詳
M47パットン アメリカ合衆国 不詳
PT-76 ソビエト連邦 軽戦車 100両
BRDM-2 ソビエト連邦 偵察戦闘車 1300両
AML装甲車 フランス 300両
ERC 90装甲車 フランス 不詳
MOWAG ローランド スイス 不詳
EE-9 ブラジル 600両
EE-3 ブラジル 300両
BMP-1 ソビエト連邦 歩兵戦闘車 計1500両
BMP-2 ソビエト連邦
BTR-50 ソビエト連邦 装甲兵員輸送車 不詳
BTR-60 ソビエト連邦 不詳
BTR-152 ソビエト連邦 不詳
OT-62 ポーランド
チェコスロバキア
不詳
OT-64 ポーランド
チェコスロバキア
不詳
MT-LB ソビエト連邦 1500両
63式装甲兵員輸送車 中華人民共和国 1000両
M113装甲兵員輸送車 アメリカ合衆国 不詳
パナール M3 フランス 不詳
EE-11 ブラジル 不詳
Mod56榴弾砲 イタリア 榴弾砲 不詳
D-74カノン砲 ソビエト連邦 不詳
D-30榴弾砲 ソビエト連邦 100門以上
M-30榴弾砲 ソビエト連邦 400門以上
M-46カノン砲 ソビエト連邦 不詳
59式カノン砲 中華人民共和国 不詳
ML-20榴弾砲 ソビエト連邦 不詳
D-1榴弾砲 ソビエト連邦 不詳
G5榴弾砲 南アフリカ共和国 100門
GC-45榴弾砲 カナダ 200門
M114榴弾砲 アメリカ合衆国 不詳
2S1自走榴弾砲 ソビエト連邦 自走砲 不詳
2S3自走榴弾砲 ソビエト連邦 不詳
M109自走榴弾砲 アメリカ合衆国 不詳
AuF1自走榴弾砲 フランス 85門
BM-21 ソビエト連邦 多連装ロケット砲 不詳
ASTROS ブラジル 60基
カチューシャ ソビエト連邦 不詳
M-87 オルカン ユーゴスラビア
イラク
不詳 イラクでは「アバベール」と呼ばれた。
M-43迫撃砲 ソビエト連邦 迫撃砲 不詳
9K52 ソビエト連邦 弾道ミサイル 50基
R-17 ソビエト連邦 36基
アル・アッバス イラク 不詳
アル・フセイン イラク 不詳
9M14 ソビエト連邦 対戦車ミサイル 不詳 BRDM-2等に搭載される。
9M111 ソビエト連邦 不詳
SS.11 フランス 不詳
ミラン フランス
西ドイツ
不詳
HOT フランス
西ドイツ
不詳 パナール VCR等に搭載される。
パナール VCR フランス 装甲兵員輸送車 100両
SPG-9 ソビエト連邦 無反動砲 不詳
B-10無反動砲 ソビエト連邦 不詳
Mi-24 ソビエト連邦 攻撃ヘリコプター 40機
SA 342 フランス 50機 攻撃型20機、輸送型30機。
SA 321 フランス 13機 一部エグゾセ空対空ミサイルを搭載。
エグゾセ フランス 空対地ミサイル 不詳
SA 316 フランス 攻撃ヘリコプター 30機 AS.12空対地ミサイルを搭載。
AS.12 フランス 空対地ミサイル 不詳
Bo 105 西ドイツ 攻撃ヘリコプター 56機 SS.11対戦車ミサイル、HOT対戦車ミサイルを搭載。
Mi-6 ソビエト連邦 輸送ヘリコプター 15機
ベル 214ST アメリカ合衆国 80機 中輸送型40機、軽輸送型40機。
Mi-8 ソビエト連邦 計140機
Mi-17 ソビエト連邦
SH-3 アメリカ合衆国 5機
SA 330 フランス 20機
Mi-4 ソビエト連邦 20機
A109 イタリア 3機
ベル 212 アメリカ合衆国 5機
ヒューズ300 アメリカ合衆国 30機
MD 500 アメリカ合衆国 56機 ヒューズ500型30機、ヒューズ530型26機。
ZSU-23-4 ソビエト連邦 高射砲 不詳
61-K対空砲 ソビエト連邦 不詳 二連装型も存在する。
ZSU-57-2 ソビエト連邦 不詳
S-75 ソビエト連邦 地対空ミサイル 160基
S-125 ソビエト連邦 140基
2K12 ソビエト連邦 計300基以上
9K33 ソビエト連邦
9K31 ソビエト連邦
9K34 ソビエト連邦
9K32 ソビエト連邦 不詳
ローランド フランス
西ドイツ
100基
海軍装備
兵員5000人。軍艦38隻等保有[2]。(ただし、当時イラクが導入した軍艦で、湾岸戦争時の制裁で引き渡されなかったものは記載していない。)
画像 名称 原産国 分類 保有数 兵装・備考
イブン・ハルドゥーン級フリゲート ユーゴスラビア フリゲート 1隻 対潜魚雷発射管2基搭載、練習艦である。
オーサ型ミサイル艇 ソビエト連邦 ミサイル艇 8隻 P-15対艦ミサイル発射機4機搭載。
P-15 ソビエト連邦 対艦ミサイル 不詳
P-6型魚雷艇 ソビエト連邦 魚雷艇 6隻 533mm魚雷発射管2基搭載。
SO-1級駆逐艇 ソビエト連邦 哨戒艇 3隻
ニルヤット2級哨戒艇 ソビエト連邦 4隻
艦級不詳 不詳 13隻
T-43級掃海艇 ソビエト連邦 掃海艇 2隻
艦級不詳 不詳 6隻
アル・ザラー級揚陸艦  デンマーク 揚陸艦 3隻 兵員250人乗艦、戦車20両・ヘリコプター1機搭載可能。
ポルノクヌイ級揚陸艦 ソビエト連邦 3隻 兵員180人乗艦、戦車6両搭載可能。
大統領専用ヨット  フィンランド
 デンマーク
ヨット 2隻
空軍装備
兵員4万人。作戦機689機等保有[2]
画像 名称 原産国 分類 保有数 兵装・備考
Tu-22 ソビエト連邦 爆撃機 10機 爆撃機型8機、練習機型2機。
Tu-16 ソビエト連邦 4機
H-6 中華人民共和国 4機
MiG-23 ソビエト連邦 戦闘攻撃機 90機
ミラージュF1 フランス 110機 攻撃機型64機、戦闘機型30機、練習機型16機。
Su-7 ソビエト連邦 30機以上 攻撃機型30機、練習機型不詳。
Su-20 ソビエト連邦 70機
Su-24 ソビエト連邦 16機
Su-25 ソビエト連邦 60機
J-6 中華人民共和国 30機
J-7 中華人民共和国 戦闘機 40機
MiG-21 ソビエト連邦 155機 戦闘機型150機、偵察機型5機。
MiG-25 ソビエト連邦 32機 戦闘機型25機、偵察機型7機。
MiG-29 ソビエト連邦 30機
Il-76 ソビエト連邦 早期警戒管制機 22機 警戒機型「アドナン」2機、空中給油機型1機、輸送機型19機。
An-2 ソビエト連邦 輸送機 10機
An-12 ソビエト連邦 10機
An-24 ソビエト連邦 6機
An-26 ソビエト連邦 2機
MBB-223 西ドイツ 練習機 16機
Yak-11 ソビエト連邦 10機
L-29 チェコスロバキア 50機
L-39 チェコスロバキア 40機
PC-7 スイス 50機
PC-9 スイス 30機
EMB-312 ブラジル 88機
AS-202 スイス
イタリア
35機
R.530 フランス 空対空ミサイル 不詳
R.550 フランス 不詳
R-3 ソビエト連邦 不詳
R-40 ソビエト連邦 不詳
R-24 ソビエト連邦 不詳
R-60 ソビエト連邦 不詳
エグゾセ フランス 空対地ミサイル 不詳
SY-1 中華人民共和国 不詳
Kh-22 ソビエト連邦 不詳
KSR-2 ソビエト連邦 不詳
Kh-58 ソビエト連邦 不詳
Kh-25 ソビエト連邦 不詳
AS.30 フランス 不詳

脚注

  1. ^ 国際戦略研究所防衛庁防衛局調査第二課 編『ミリタリー・バランス 1990-1991』メイナード出版、1991年6月12日、188-190頁。 
  2. ^ a b c 湾岸戦争前と現在のイラクの戦力”. 共同通信 (2003年). 2025年7月13日閲覧。




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