アンモニウムとは? わかりやすく解説

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アンモニウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/13 07:23 UTC 版)

アンモニウム(ammonium)は、化学式NH4+分子イオンである[1]アンモニア(NH3)のプロトン化によって形成されるオニウムイオンである。 アンモニウムは、NH4+の1つ以上の水素原子が有機基に置き換わってできる、陽電荷を持った、またはプロトン化置換基を持つアミンや、第四級アンモニウムカチオン(NR4+)に対する一般名でもある。「アンモニウムイオン」とも呼ばれるが、「アンモニウム」という用語自体がイオンの名前である。

アンモニウム
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChemSpider
MeSH D000644
PubChem CID
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 NH+
4
モル質量 18.03851 g mol−1
構造
正四面体型
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

酸塩基反応

塩酸とアンモニアを接触させると、塩化アンモニウムの白煙が形成される。

アンモニウムは、弱塩基であるアンモニアがブレンステッド酸(プロトンドナー)と反応して形成される。

アンモニウムの形成

アンモニウムイオンは、炭酸アンモニウム塩化アンモニウム硝酸アンモニウム等の様々な塩で見られる。大部分の単純なアンモニウム塩は、非常に溶解性が高い。例外はヘキサクロリド白金(IV)酸アンモニウムで、かつては、これを生成させることでアンモニウムを検出していた。硝酸塩や過塩素酸塩は爆発性が高く、この場合はアンモニウムは還元剤となる。

アンモニウムイオンがアマルガムを形成する場合もある。これは、アンモニウム溶液を水銀電極を用いて電気分解した場合に生じる[2]。このアマルガムは最終的に分解してアンモニアと水素を放出する[3]

構造と結合

アンモニアの窒素原子の孤立電子対は、水素と結合を形成する。その後、4つ全てのN-H結合は等価になり、極性共有結合になる。このイオンは、メタン及びテトラヒドリドホウ酸イオンと等電子的である。イオン半径(rionic = 175 pm)は、セシウムの陽イオン(rionic = 183 pm)と近い。

検出

それに金属水酸化物を加えると、アンモニアが生成される。

有機アンモニウムイオン

アンモニウムイオンの水素原子は、アルキル基または他の有機基で置換され、置換アンモニウムイオン(IUPAC名ではアミニウムイオン)を形成することができる。有機基の数に依って、アンモニウムイオンは、第一級から第四級と呼ばれる。第四級アンモニウムイオンを除き、有機アンモニウムイオンは弱酸性である。

アンモニウムイオンを形成する反応の例としては、ジメチルアミン((CH3)2NH)と酸の反応があり、ジメチルアミニウムイオン((CH3)2NH2+)を生じる。

第四級アンモニウムイオンでは、窒素原子に4つの有機基が結合しており、窒素原子に直接結合する水素原子はない。テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミドのようなこれらのイオンは、陰イオンの有機溶媒への可溶性を向上させるために、ナトリウムイオンカリウムイオンと置換されることがある。第一級から第三級アンモニウムイオンも同様の性質を持つが、親油性は弱い。相間移動触媒界面活性剤としても用いられる。

生物学

アンモニウムイオンは、動物の代謝における老廃物である。魚類や水棲無脊椎動物では、水中に直接排泄される。哺乳類サメ両生類では、毒性を低くし貯蔵を容易にするために、尿素回路尿素に変換される。鳥類爬虫類、陸棲カタツムリでは、固体であるため最小限の水で排泄できる尿酸に変換される[4]

アンモニウムは、多くの植物、特に低酸素土壌で生育するものにとっては、重要な窒素源である。しかし、穀物にとっては毒でもあり、単一の窒素源として用いられることは滅多にない[5]

アンモニウム金属

アンモニウムイオンは、重アルカリ金属と非常に似た性質を持ち、しばしば近い関係にあると考えられる[6][7][8]。アンモニウムは、天王星海王星のような木星型惑星の内部等の超高圧の環境下では、金属として振る舞うと考えられる[7][8]

関連項目

出典

  1. ^ 代置命名法においては、NH4+はアザニウム(azanium)と呼ばれる。
  2. ^ Pseudo-binary compounds
  3. ^ “Ammonium Salts”. VIAS Encyclopedia.
  4. ^ Campbell, Neil A.; Jane B. Reece (2002). “44”. Biology (6th ed.). San Francisco: Pearson Education, Inc. pp. 937–938. ISBN 0-8053-6624-5 
  5. ^ Britto, DT; Kronzucker, HJ (2002). “NH4+ toxicity in higher plants: a critical review”. Journal of Plant Physiology 159 (6): 567–584. doi:10.1078/0176-1617-0774. http://www.utsc.utoronto.ca/~britto/publications/amtox.pdf. 
  6. ^ Holleman, A. F.; Wiberg, E. (2001), Inorganic Chemistry, San Diego: Academic Press, ISBN 0-12-352651-5 
  7. ^ a b Stevenson, D. J. (November 20, 1975). “Does metallic ammonium exist?”. Nature (Nature Publishing Group) 258: 222–223. Bibcode1975Natur.258..222S. doi:10.1038/258222a0. https://www.nature.com/articles/258222a0 2012年1月13日閲覧。. 
  8. ^ a b Bernal, M. J. M.; Massey, H. S. W. (February 3, 1954). “Metallic Ammonium”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (Wiley-Blackwell for the Royal Astronomical Society) 114: 172–179. Bibcode1954MNRAS.114..172B. https://articles.adsabs.harvard.edu/cgi-bin/nph-iarticle_query?1954MNRAS.114..172B&data_type=PDF_HIGH&whole_paper=YES&type=PRINTER&filetype=.pdf 2012年1月13日閲覧。. 




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