アメリカ大陸の奴隷制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 07:08 UTC 版)
「キリスト教の奴隷制度に対する見解」の記事における「アメリカ大陸の奴隷制」の解説
中世初期のヨーロッパではキリスト教化されたことでヨーロッパでの伝統的な奴隷制度は消滅し、そして封建制に取って代わられた。しかしこの総意はアメリカの奴隷制度を導入した奴隷州では破られ、奴隷制の正当化は宗教(異教徒)から人種へと切り替わった。実際、1667年にバージニア州議会は洗礼を受けたからといって奴隷に自由が与えられないと宣言する法案を制定してしまったのである。1680年、フロリダのスペイン植民地政府は、現アメリカ合衆国の植民地から脱走した奴隷のうちカトリックに改宗した者に自由を与えた。こうした脱走は何度も繰り返された。 南北アメリカへのカトリックのスペイン植民地の編入は、先住民への年季奉公や奴隷制をもたらした。ポルトガル人とスペイン人の探検家の中には、新世界で遭遇した先住民を早速、奴隷にしようとする者もいた。しかし教皇権はこのような慣行に断固として反発した。1435年、ローマ教皇エウゲニウス4世は、奴隷貿易に従事するすべての者を破門することを盛り込んだ教皇勅書「シクト・ドゥドゥム」を公布し奴隷制を攻撃した。その後、教皇パウルス3世は「スブリミス・デウス」(1537年)で西と南のインディアンと呼ばれるアメリカ大陸の先住民とその他のすべての人々を奴隷にすることを禁じた。教皇パウルス3世は奴隷にする者を悪魔の仲間と描写し、奴隷制を正当化する試みを「まったくの無効である」と宣言したのである。 ...崇高な神は人類を愛しており、他の被造物と同様に善の共有者であるだけでなく、到達できず不可視な至高の善に到達し、それを直接見ることができる状態で創造された......。このことを見て、それを嫉妬する人類の敵は、種族が腐敗するように常にすべての善良な人々に敵対し、神の救いの言葉が国々に伝道されることを防ぐために、今まで誰も聞いたこともないような手口を思いついた。彼(サタン)は、自らの強欲を満たそうとする同盟者たちを扇動し、米先住民が...カトリックの信仰を欠いているという口実で...我々に奉仕する理性のない動物のように成り果てると遠く、そして広く主張できると仮定している。そして、彼らは米先住民を奴隷とし、理性のない動物にさえほとんど使わないような苦悩を与える...我々の使徒的権威とこれらの手紙によって、米先住民や他のすべての民族は、たとえ彼らが信仰を持たない者であっても...自由を奪われてはならないと...宣言する。むしろ彼らはこの自由と財産の所有権を自由にかつ合法的に使用し享受すべきであり、奴隷にしてはならない.... ブラジルとパラグアイのイエズス会「レダクシオネス」のイエズス会司祭であるペーテル・クラベール(英語版)のように、多くのカトリック司祭は奴隷制廃止に尽力した。バルトロメ・デ・ラス・カサス神父はアメリカ先住民を奴隷制度から守るために活動し、後にはアフリカ人の保護までするようになった。ハイチにおけるフランス植民地時代の奴隷制を終わらせたハイチ革命は、敬虔なカトリックの元奴隷トゥーサン・ルーヴェルチュールが主導した。 1810年、メキシコのカトリック司祭で、メキシコの父とも呼ばれるミゲル・イダルゴ・イ・コスティージャ神父が奴隷制度の廃止を宣言したが、独立戦争が終結するまで公式なものではなかった。1888年、ブラジルはアメリカ大陸で奴隷制を完全に廃止した最後の国となった。
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