アメリカ合衆国における1990年代からの新球場建設ブームの背景
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1992年のオリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズを皮切りにMLBは未曾有の新古典派新球場建設ブームに沸いた。 開場年球場名(開場時)球団備考1992年 オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズ ボルチモア・オリオールズ 1994年 ザ・ボールパーク・イン・アーリントン テキサス・レンジャーズ 1994年 ジェイコブス・フィールド クリーブランド・ガーディアンズ 1995年 クアーズ・フィールド コロラド・ロッキーズ 1997年 ターナー・フィールド アトランタ・ブレーブス 1998年 バンク・ワン・ボールパーク アリゾナ・ダイヤモンドバックス 世界初の開閉式屋根付き天然芝球場 1999年 セーフコ・フィールド シアトル・マリナーズ 開閉式屋根付き天然芝球場 2000年 ミニッツメイド・パーク ヒューストン・アストロズ 開閉式屋根付き天然芝球場 2000年 パシフィック・ベル・パーク サンフランシスコ・ジャイアンツ 2000年 コメリカ・パーク デトロイト・タイガース 2001年 アメリカンファミリー・フィールド ミルウォーキー・ブルワーズ 開閉式屋根付き天然芝球場 2001年 PNCパーク ピッツバーグ・パイレーツ 2003年 グレート・アメリカン・ボール・パーク シンシナティ・レッズ 2004年 ペトコ・パーク サンディエゴ・パドレス 2004年 シチズンズ・バンク・パーク フィラデルフィア・フィリーズ 2006年 ブッシュ・スタジアム セントルイス・カージナルス 2008年 ナショナルズ・パーク ワシントン・ナショナルズ 2009年 シティ・フィールド ニューヨーク・メッツ 2009年 ヤンキー・スタジアム ニューヨーク・ヤンキース 2010年 ターゲット・フィールド ミネソタ・ツインズ 2012年 ローンデポ・パーク マイアミ・マーリンズ 開閉式屋根付き天然芝球場 2017年 トゥルーイスト・パーク アトランタ・ブレーブス 2020年 グローブライフ・フィールド テキサス・レンジャーズ 2023年(予定) オークランドボールパーク オークランド・アスレチックス 上記のように、2020年までの29年間に23もの新球場が開場し、現在建設・計画中のもので1つの球場が開場となる予定である。 新球場ラッシュの背景には、ほとんどの野球場が建設費用の大半を税金でまかなっていることが挙げられる。2015年1月までコミッショナーを務めたバド・セリグの卓越した経営手腕の下、アメリカ野球史上に残る好景気を記録し、日本に比べて黒字経営球団の多いメジャーリーグといえど野球場の建設費用は莫大であり、簡単に調達できる金額ではない。 そこで、ほとんどの新球場建設にあたっては、住民投票によって地元住民の同意を得て税金投入や特別税徴収、公債発行が行われている。さらに球団は自治体から完成した球場を格安でリース契約できるなど、多くの優遇政策があり、その結果、このような新球場建設ラッシュを生んでいる。2006年までに建設された新古典派球場のなかで住民投票で税金投入などが認められなかったのはオラクル・パーク(サンフランシスコ・ジャイアンツ)のみである。例えば、2010年開場のミネソタ・ツインズの新球場は、建設費用5億2200万ドルのうち、約4分の3に相当する3億9200万ドルがミネアポリス市など地元自治体の負担であり、ミネアポリス市があるヘネピン郡では消費税率を引き上げている。このように新球場建設には地元住民の理解と協力が不可欠である。 なぜこのような公金投入が行われることになるのかは、アメリカの経済学者、アンドリュー・ジンバリストの著書『May the Best Team Win』 などに詳しい。それによると、MLB機構は球団の数や移転を管理し、球団数よりもそれを欲しがる自治体のほうが多い、需要過多・供給不足の状態を意図的に作り出している。そのため、フランチャイズ都市では球団オーナーがより良い待遇・環境を自治体から引き出すために「移転」という選択肢を選ぶこともある。地域の象徴であり、地域活性化にもつながるプロスポーツチームを手放したいと思う自治体は少なく、オーナーや球団の要求を呑むケースが多い。 かつて存在した「アメリカの古き良き野球場」を模した球場が、人々に懐かしさという感情をわき起こさせたことが、新古典派球場ブームの根底にある、というアメリカ固有の事情があるということが重要である。
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