アメリカ合衆国におけるスクールバス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 09:56 UTC 版)
「スクールバス」の記事における「アメリカ合衆国におけるスクールバス」の解説
アメリカ合衆国では、19世紀末期から20世紀初頭にかけて、都市近郊から遠く離れた地域の生徒のために運行が開始された。しかし次第にスクールバス導入は、広い国土や通学の安全性よりも、人種問題の解消が目的とされるようになってきた。20世紀半ばまでアメリカは白人の通う学校と黒人の通う学校に分かれていた。1954年に合衆国連邦最高裁が人種で学校を分けることを違法としたが、郊外化が進む中で白人は郊外に、黒人はインナーシティにという人種の住み分けが起こってしまい、学校における人種の偏りは改善されないままであった。 その解決法として考案されたのが、人種統合バス通学(Desegregation busing)である。1971年に連邦最高裁が合憲としたもので、「強制バス通学」とも呼ばれる。白人とマイノリティーの割合が一定になるように、黒人を郊外へ、白人を都心部へ通学させたため、多くの子どもたちが自宅から遠く離れた学校へ通うことを余儀なくされた。その後マグネット・スクール、チャーター・スクール、越境通学、ホームスクーリングなど多様な教育形態が生まれたことで、ようやく1990年代に強制的なバス通学は終わった。 近年は人種統合という目的よりも、ますます郊外が広がり徒歩や自転車による通学が長距離となり困難または犯罪や交通事故に巻き込まれるのを防ぐため、そしてマグネットやチャーター・スクール、ESL、特別支援教育といった学区全体(日本の都道府県に相当する面積のものもある)の生徒を対象にした学校が様々な場所に位置するため、通学にバスが利用されている。 その一方、バスの代わりに自家用車で通学する子どももいる。いわゆる「カギっ子」状態は、アメリカにおいては保護者が児童虐待の疑いを受ける可能性があり、バスの到着時刻前に両親ともに出勤する共働き家庭では、親が出勤途中に学校で子どもを降ろして、始業時間まで早朝学童保育 (Before school Program) に預けるのが一般的である。また少数だが、小学校低学年ではスクールバスでの喧嘩やいじめを避けるために、親が車で送り迎えをする家庭もある。このほか、学区を越えた通学はバスのサービスを受けられないことが多く、車で通学する。 スクールバスは、小・中・高校の始業時間を時間差にして使い回しすることもある。一般的には高等学校の始業時間が最も早い。理由の一つとして、小学生以下の放課後のカギっ子状態を避けるため、中高生の兄や姉が先に帰宅して迎えられるよう配慮されているためである。高校の校区は広大であるためバス路線も長く、午前6時前後に到着するような地域もあるため 運転免許証を取得して自分の車で通学する高校生も多い(路線バスが発達した地域では、高校生がスクールバスではなく一般のバスを利用する学区もある)。また、登下校以外(遠足など)にもスクールバスを利用する。
※この「アメリカ合衆国におけるスクールバス」の解説は、「スクールバス」の解説の一部です。
「アメリカ合衆国におけるスクールバス」を含む「スクールバス」の記事については、「スクールバス」の概要を参照ください。
- アメリカ合衆国におけるスクールバスのページへのリンク