【AGM-114】(えーじーえむひゃくじゅうよん)
AGM-114 Hellfire(ヘルファイア)
BGM-71"TOW"の後継として、1983年に開発されたヘリ発射型の対戦車ミサイル。
その名の如く、対戦車ミサイルとしてはトップクラスの破壊力を持つ中の一つで、AH-64やAH-1の海兵隊型、タイガーなど多くの攻撃ヘリコプターに装備され、十数カ国で採用されている。
約8kgの成形炸薬弾頭をもち、セミアクティブレーザー誘導により誘導されるため、発射後は別の機体や地上の要員が誘導を制御することができ、簡易的な撃ちっ放し能力を得た。
射程は約500~8000mで、初期型では「山なりに飛翔するため雲に入って目標を見失ってしまう」、「悪天候に弱い」などの欠点があったが、その後改良が続けられ、現在ではミサイル自身がレーダーを装備して自立的に誘導を行うという完全な撃ちっ放し能力を有しているL型の配備が進んでいる。
また、破片効果弾頭を搭載した汎用対地型や、対艦ミサイルなどに改造した派生型も存在する(UH-60やSH-60などに装備される)。
日本でも、陸上自衛隊のAH-64に採用される他、海上自衛隊では不審船対策にオーバーキルとならない兵器として、SH-60Kに搭載の予定としている。
スペックデータ
全長:1.63m/1.8m(AGM-114F)
直径:17.8cm
翼幅:36.2cm
発射重量:45.7kg(AGM-114A/B/C)、48.6kg(AGM-114F)、44.9kg(AGM-114K)
射程:8km/7km(AGM-114F)
速度:Mach 1.7
推進方式:固体推進ロケットモーター
エンジン:M120E3(アメリカ陸軍)/M120E4(アメリカ海軍)
弾頭:
スーパーチャージHEAT(8kg、AGM-114A)
タンデム配列HEAT(9kg、AGM-114F/K/L)
爆破破砕・焼夷弾頭(AGM-114M)
圧力増強型金属サーモバリック弾(AGM-114N)
誘導方式:セミアクティブレーザー誘導・赤外線画像誘導(AGM-114B/C)・慣性誘導(ファイヤーアンドフォゲット)(AGM-114L)
派生型
- AGM-114A:対戦車・対装甲車両への攻撃に使用される基本型。
- AGM-114B/C:M120E1低発射煙ロケットモーターを採用し、赤外線画像誘導が可能な型。
- AGM-114D/E:AGM-114B/Cのデジタル自動航法版提案型。製造されず。
- AGM-114F:弾頭をタンデム配列HEAT弾頭にした型。
- AGM-114G:AGM-114FをSAD(電子式安全・武装デバイス)に対応させた提案型。製造されず。
- AGM-114H:AGM-114Fのデジタル自動航法版提案型。製造されず。
- AGM-114J:AGM-114Fの軽量化・胴体長短縮・射程距離延長提案型。製造されず。
- AGM-114K:デジタル自動航法を採用し、レーザーロックが外れても目標を再認識するように改修された型。
愛称「ヘルファイアII」。 - AGM-114L:ミリ波レーダーシーカーを搭載し、ファイヤーアンドフォゲットとホームオンジャム能力を搭載した型。
- AGM-114P:UAV用に、AGM-114Kのレーザーシーカーの探知可能範囲を40度から180度に拡大した型。
- AGM-114N:爆破破砕・焼夷弾頭を搭載した型。
掩蔽壕や軽車両、都市の非装甲目標への攻撃に使用される。 - AGM-114M:圧力増強型金属サーモバリック弾を搭載した型。
陣地や船舶、対空兵器への攻撃に使用される。 - RBS17:スウェーデン軍での対艦攻撃型の呼称。
- ブリムストーン:ヘルファイアを参考に開発されたイギリス空軍の空対地ミサイル。詳しくは項を参照。
搭載機種
- A-10「サンダーボルトII」
- AC-208「コンバットキャラバン」(セスナ208の軽攻撃機型)
- MQ-1 プレデター
- MQ-8 ファイアスカウト
- MQ-9 リーパー
- MQ-1C ウォーリア
- AH-1W「スーパーコブラ」
- AH-64「アパッチ」/AH-64D「アパッチ・ロングボウ」
- WAH-64「アパッチ」
- タイガーARH
- UH-60「ブラックホーク」
- MH-60R/SH-60R/SH-60K
- OH-58Dカイオワ・ウォーリア
- P6297 ミサイルボート
- ハンヴィー(TOW搭載型。テスト中。)
- KC-130(「ハーベストホーク」と呼ばれる爆撃キットを装着することで可能)
Photo:MASDF
AGM-114M ヘルファイア対艦型(訓練弾)
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