『動物社会』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/08 00:09 UTC 版)
「アルフレッド・エスピナス」の記事における「『動物社会』」の解説
博士論文の『動物社会』はデュルケームに先立ってオーギュスト・コントを評価し、またアドルフ・ケトレーやハーバート・スペンサーの議論なども引き合いにしながら、社会の進化をヘーゲル的な歴史展開によって語り、社会学についての基礎付を行った。エスピナスにとって、社会学は統治の技術である政治学とも、経済学とも教育学とも距離をおいた学問であり、アリストテレスや生物学の成果をひきつけつつ、”社会的なもの”を解き明かす学問であるとし、その社会的なものは人間以外の動物にもみられることを指摘した。 われわれはまず、動物社会へと注意を向ける。そののち人間社会の実験的知識が十分進歩したとき、両者はともに同じ法則のもとに包摂されるであろう。共同生活は、動物界において偶然的事実ではなく、正常で恒常的で普遍の事実である。 このようにコントの実証主義哲学のカリキュラム、化学をもとにした生物学、生物学をもとにした社会学というヒエラルキーに則り構成されたのが『動物社会』であった。 さらにエスピナスはコントの実証主義から進んで、社会的事実の実在論へ議論を進めた。 社会的事実の普遍性…もっとも微小な生物をのぞけば、あらゆる生物は様々な程度に社会であるか、社会の要素である。動物学的な序列や分類はそれゆえ、実際のところ個体の類型ではなく社会類型からなっていることになる。 『動物社会』の出版によって、コント以来アマチュアグループで語られてきた”社会学”がアカデミズムの中でも研究されるようになった。 日本において、梯明秀が『社会の起源』(1936年)で『動物社会』を生物学者による動物社会の進化論としてまとまったかたちで紹介した。生態学分野においては、生態学に先行する動物社会学の歴史的重要文献として『動物社会』が位置づけられることがある。門司正三は『生態学総論』において、動物社会学の始祖の一人として位置づけ、森下正明も同様に「Espinasを動物社会学の創始者と呼んでよいであろう」としている。またWarder Clyde Alleeの”Animal aggregations, a study in general sociology” (1931)も、エスピナス『動物社会』の批判的検証に多くのページが割かれている。 なお日本の社会学において新明正道が『社会学史概説』(1954年)においてフランス社会学におけるエスピナスの貢献を記述しているなど、古い社会学辞典には独立した項目があったが、近年発行された社会学辞典『現代社会学事典』(弘文堂)、社会学事典(丸善)などにおいて独立した項目が与えられていない。
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