「武道館公演」の位置付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 01:45 UTC 版)
「日本武道館における公演」の記事における「「武道館公演」の位置付け」の解説
日本を中心に活動するミュージシャンにとっては、武道館はコンサート会場として極めて重要な位置づけに置かれている。武道館の規模となると、会場としての大きさ故に興行を実現させその興行を収益・内容の両面で成功に至らせることは容易ではない。また、上述した格闘技と同様に音楽・芸能の有料興行に使用する場合の会場使用条件も大変に厳しく、大道場を借りるには費用面も含めて様々な条件をクリアしなければならない。そのため武道館公演の成功は、大規模会場での大型興行も充分に務め上げられるミュージシャンであるという「一流」の興行能力・集客力を持っていることを業界の内外に誇示する、一種のステイタスとしての意味を持っているのである。 また、古くは1966年のザ・ビートルズ、1968年のザ・ウォーカー・ブラザース、ザ・モンキーズ、1972年のディープ・パープル、1975年のクイーンなど、海外の著名ミュージシャンの来日公演における使用例も数多い。このことから、ロック・演歌・アイドル歌謡などのジャンルを問わず、新人やデビュー前のミュージシャンはもとよりプロの一線級のミュージシャンでさえ「武道館公演の実現」を憧れとし、これを目標に活動する者は数多い。特にバンド・グループ・アイドル歌手などでは、武道館公演が活動の事実上の1つの節目となったり、解散や引退の記念として1度きりの武道館公演を実施した者も多々見られている。 逆にこのような大規模会場を好まず、『NHK紅白歌合戦』への出場と同様に武道館級以上の規模の施設ではライブをしないことを公言しつつ活動するミュージシャンやバンドも、山下達郎 をはじめ少数ながら存在し、そのまま「大物ミュージシャン」と呼ばれる域にまで至るとむしろそれがステイタスとなる場合もある。2009年に初のアリーナ公演を開催したスピッツも、「(武道館で公演を行うことによって)アリーナ公演に意味を持たせたくない」として武道館の使用を意識的に避けていたり(スピッツは2014年7月に武道館初ワンマンライブを決行)、チューリップもここで公演したビートルズを敬愛するあまり、1997年に再結成するまで武道館公演を避けていたりと、現在に至るまで「武道館でのコンサート」への一定の影響力とその影響力への強いこだわりを持つアーティストは存在する。 最近では、武道館の数倍の観客収容能力を持つ全国のドーム球場での単独公演、さらには、東京・名古屋・大阪・福岡・札幌の全国5大ドーム球場を巡回する“ドームツアー”と言ったものが、「ミュージシャンの国内活動として最大の到達点」として見なされることも多く、絶対的な価値こそ薄れてきているものの、現在においても武道館規模での単独公演は大多数のミュージシャンにとって大きな挑戦かつ試練である。そのため、武道館公演に成功し高評価を受けることは、前述の通り十分な価値を持っており、現在でも音楽業界・芸能界にとっては一種の聖地的な存在として格別の意味を持つ重要なコンサート会場であることに変わりは無い。 また、時にドーム単独公演を目指すための重要な関門としても機能している一面があり、ドーム公演を目指すならば武道館公演では数日間・複数回にわたって開催される公演のチケットを概ね完売できる集客力が要求されることになる。一方で、セットや機材・スタッフ・警備なども遥かに大規模になり、施設利用料も高額になるドーム公演よりも各種コストが低く抑えられる武道館公演は、収益性を考えた場合には重要なイベントとなっている一面もある。
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