「慰霊歌」の執筆とは? わかりやすく解説

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「慰霊歌」の執筆

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 06:50 UTC 版)

草の花」の記事における「「慰霊歌」の執筆」の解説

福永1947年昭和22年)の秋から1953年昭和28年3月末まで、結核のため東京都北多摩郡清瀬村東京療養所で、5年余りに渡る入院生活送っている。1949年昭和24年)には腸結核咽頭結核再発見舞われたほか、副睾丸結核手術受けてもおり、長い間絶対安静余儀なくされていた。こうした中で福永自殺観念囚われるようになり、同年1月1日日記には「思ふこと、死、自殺運命的な愛」、翌2日には「自殺思ふ孤独感痛烈と書き記している。 そして福永この年作中汐見同様、「自殺として手術受けた女性死に遭遇してもいる。 朝、吉山さん死んだといふ悪いニュース聞く昨日の肺摘手術の結果。(中略手術中医師止めようと言つたのに無理に続行してもらつたとのこと。某医師個人的にこの手術に反対でさう忠告したさうだが、きかなかつたとのこと何よりも癒るためでなく、合法的な自殺として手術受けたらしいこと。栄さんによれば虚勢を張つてゐたのだからとめることが出来たに違ひないと。死を覚悟しそれを準備してゐた心。 — 福永武彦四九年日記」1949年3月23日付 この1949年昭和24年12月10日から翌1950年昭和25年5月10日にかけて、福永は『草の花』の原型となる中編小説慰霊歌」を執筆し200字詰め原稿用紙にして374書き上げた執筆時は固いベッドの上に横になり、「私は左手原稿用紙を恐らく下敷か何かの上重ねて持ち、それをの横のところで支え右手万年筆握り身体左向きにして少しずつ書き進めていたに違いない」とのちに述懐している。身体の状態は思わしくなく、この「不自然な恰好」での無理な執筆のために背中溜まり医者から厳重な警告受けたこともあった。当時自身心境を、福永次のように記している。 私は絶望的であり、ひたすら過去見詰め、そこに私の生きた痕跡を、或いは生きることの意味を、見出そうとしていた。それとも、こう言えばいだろうか。――藤木忍が死んでから十年上の歳月過ぎ去っていながら、その死は常に私の負目のようなものになっていた。私は彼について書かなければならない死者この世に引きとめておく唯一の方法は彼を表現し著しその姿をもう一度甦らせることである。私が作中書いたように、死者生者たちの記憶と共になお生きており、生者たちの死と共に決定的な死を死ぬのである死者について書くこと生者義務他ならない。 — 福永武彦『「草の花遠望』 この記述は『草の花』中の汐見言葉、「生者は、必ずや死者記憶を常に新たにし、死者と共に生きなければならない」「僕の死は、僕にとっての世界の終りであると共に、僕の裡なる記憶と共に藤木をもまた殺すだろう。僕の死と共に藤木二度目の死を死ぬだろう」と類似しており、汐見思い作者福永のものであった見做すことができる。 こうして書かれた「慰霊歌」は全体4章分かれ構成は『草の花』の「第一の手帳」と同様となっているほか、全体一人称「僕」語りにより統一されている。福永はこの作品を「冗漫な箇所多くて我ながら下手である」とし、原稿を『群像』に送った採用されなかったことを「かえって有難かったと思っている。こんな荒削り中篇がもし活字になっていたら、私は再起不能なまでに叩かれただろう」としている。 「慰霊歌」を脱稿してのち、病状悪化したため福永はしばらく執筆を行うことができなかったが、1950年昭和25年秋になって健康をやや恢復して『風土』の執筆着手し、これを完成させてのちに『草の花』の執筆入った

※この「「慰霊歌」の執筆」の解説は、「草の花」の解説の一部です。
「「慰霊歌」の執筆」を含む「草の花」の記事については、「草の花」の概要を参照ください。

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