第一の手帳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 06:50 UTC 版)
18歳の旧制高校生で弓術部に属している汐見は、1年生の藤木 忍(ふじき しのぶ)を、同性でありながらも友情の域を超え、恋する状態と呼んでいいほどに愛していた。 伊豆のH村で部の合宿が行われたとき、汐見は藤木と二人で散歩する機会を得て、「藤木、そうした見える世界から見えない世界にはいって行く、それが愛なんだよ。(中略)もし君が愛したら、……いいかい、その時には人間の経験を超越したイデアの世界に僕等の魂が飛翔して行くんだ」と、自身の精神的な愛を藤木へ語る。 その翌日の夜、村の祭りに出かけるために部員らが乗り込んだ舟が艫を流され、海上の舟で汐見と藤木は二人きりになる。汐見は藤木の身体を抱き寄せて「気が遠くなるような恍惚感」を味わう。だが藤木は「僕は愛するということの出来ない人間」「愛するというのは自分に責任を持つこと」として、汐見の愛を拒むのだった。 そして藤木は合宿の中途で、母の病気のために急遽船で東京へと帰ることとなる。岬の先端で汐見は船を見送り、自分の愛の形を確認した。 合宿ののちは二人の関係は途絶え、その夏に静養中の親戚の家で、藤木は突然の死を迎える。死者となった藤木は、「彼の魂は永遠に無垢のまま記憶の中にとどまっている」「美しい魂を持った少年」として、汐見の中で永遠に生き続ける存在となった。
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