「ホームステイ」の起源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/26 10:07 UTC 版)
「ホームステイ」の記事における「「ホームステイ」の起源」の解説
現在の「ホームステイ」は、1932年にアメリカのドナルド・ワット博士が提案した「国際生活体験」がその起源といわれている。 ワットは幼少期から世界の様々な国に行く機会に恵まれていた。ペンシルベニア州ランカスターでデパートを経営する父が、商用でイギリスやフランス、ドイツなどに行く機会を利用し諸国の風俗習慣に接する機会をもてたのである。アメリカ人の典型であるような開拓精神に満ちた彼は、第一次世界大戦の中、YMCAの使節団の一員としてインドやイランで働いた。そこで目の当たりにした、インド・イラン・イギリス軍の間に見られる人種的・階級的差別に、ワットは強烈な嫌悪の情をいだいたのだった。大戦後、使節団としての義務も終わり、ペルシャ、インド、中国、日本を経て帰国、その後ペンシルベニア、イェール、ハーバードの各大学で、心理学の研究に専念することとなる。 1921年に亡くなった父親から、ワットは50万ドルもの遺産を受け取り、いかにしてその遺産を社会のために還元できるかということを考えるようになった。当時発足したばかりの国際連盟が中心となってスイスで開催された国際青少年代表キャンプに、ワットはアメリカ代表として参加することとなった。しかし、自国へのプライドばかりで互いに肩をいからせる青年たちを見ていたく失望する。また、毎日続く討論会と講演に嫌気がさし、もっと違った方法で国際理解を効果的に深める道はないかと探っていきたどりついたのが、外国での「家庭生活体験」という試みであった。 こうして、1930年に12人のアメリカの少年たちをヨーロッパに連れて行き、ドイツやフランスの少年たちと交流させるプログラムを実施した。少年たちは、互いに相手国の言語や習慣の理解につとめ、スポーツやハイキングなどの活動をともにすることで親善の絆を作り上げた。その中で、キャンプよりもホームステイを、しかも3ヶ国ではなく1ヶ国で体験することのほうが実りが多いのではないかと考え、翌年はホームステイのグループを送り大成功を収めた。さらにイギリス、フランス、ドイツでのホームステイにも成功したワットは、1932年に正式に「The Experiment in International Living」("Experiment in International Living" in English)を発足させ、世界各国の旧知を頼り、また巨額の私財も投じてこの組織の発展に努力した。 もともとアメリカではホストファミリーはボランティアで受け入れる形式のホームステイが発展した。一方、イギリスでは金銭を支払って受け入れる形式のホストファミリーに滞在するホームステイが発展した。オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどほとんどの英語圏でも、イギリスの形式でホームステイが発展していった。近年、アメリカでもこの有償でのホストファミリー形式が増えてきている。
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