《杜撰》の正しい読み方
「杜撰」の正しい読み方
「杜撰」の読み方は、「ずさん」である。「杜」の音読み「ず」と、「撰」の音読み「さん」を組み合わせた形になる。禅の概念とともに中国から日本へと伝わった当初は、「ずざん(づざん)」という読み方であった。しかし時代が移り変わるにつれ、「さ」の濁音が省略され現在の「ずさん」という読み方に変化している。なお「杜撰」の誤読例として挙げられるのが、「とせん」である。「杜」は「ず」の他に「と」と読むことができ、「撰」は「さん」の他に「せん」と読むことができるからだ。正しくは「ずさん」であり、「とせん」は誤りであるため注意しておきたい。「杜撰」の意味解説
「杜撰」は、物事の仕方がぞんざいで誤りが多い状態を意味する言葉である。事象の取り扱いが不適切であったり、手抜きをしていたりする際に用いられる。また著作物に記述されている内容の根拠・出典先が不明瞭で、いい加減である様子を意味する言葉でもある。「杜撰」という言葉の誕生は、中国の『野客叢書』に登場する「杜黙(ともく)」が関与している。杜黙が詠む漢詩の多くが詩の定型に合わず、人によってはいい加減だと評されることもあった。いつしか杜黙が詠んだ詩はいい加減ということが定着し、漢詩・文を作るという意味を持つ「撰」と杜黙の「杜」を組み合わせた「杜撰」が「誤りが多くいい加減」という意味を持つようになった。なぜ「ずさん」と読むのか・理由
「杜撰」の読み方が「ずさん」である理由は、「杜」と「撰」それぞれの字の音読みに「ず」および「さん」が存在するからである。「杜」は「神社の森」や「ふさぐ・とじる」といった意味を持ち、訓読みに「と(じる)・ふ(さぐ)」や「もり・やまなし」といったものがある。一方で音読みには「ず」の他に、「と」や「ど」といったものが挙げられる。形声文字である「杜」の意味を担う部首は「木」の部分であり、読みを担うのは「土」だ。「土」は常用漢字表内の音読みに「と・ど」、常用漢字表外の読みに「ず」を持つ。「杜撰」の際に、「杜」が「ず」と読む理由は「土」の常用漢字表外の音読みが適用されていると考えるべきであろう。「詩や文を作る」という意味を持つ「撰」は、「杜」と同様に形声文字である。意味を担う部首は「手」の部分であり、読みを担うのは「巽」の部分だ。「巽」には「そん」という読みの他に、「せん・さん」という読みも持つ。このように「杜」と「撰」が持つ音読みを合わせて、「ずさん」と読むのである。
「杜撰」の類語・用例・例文
「杜撰」の類語として、いい加減なさまを表す「粗雑」が挙げられる。「粗」と「雑」の両方の漢字に、ぞんざいかつ大まかな様子がその意味に含まれていることから類語として用いられやすい。同じ「粗」を用いた「粗製」も、作りが雑であることを意味する言葉であり「杜撰」の類語として使われる。「いい加減・雑」という意味合いで使われる際の「適当」も、「杜撰」の類語に当てはまる。他にもいい加減なさまを表す「やっつけ」や、無計画に成り行き任せで行う「行き当たりばったり」も置き換え表現として用いられる。「杜撰」が文中で用いられる際、工事・創作などの作業や計画の出来映えを評することが多い。たとえば「係長が立てた計画が杜撰であったために作業が滞り、その結果部内では毎日残業が続いている」といったように用いる。また「杜撰な作品ばかりを作り続けていた結果、彼は職を失ってしまった」のように創作物に対しての評価や、「椅子の造りが杜撰だったので、もうあの家具店の商品は買わない」といったように製品・商品の精度の評価を下す際にも使う。
「杜撰」の英語用例・例文
「杜撰」の英語表現の1つに、形容詞の「sloppy」が挙げられる。「sloppy」は「うっかりこぼす」という意味を持つ動詞「slop」が形容詞に変化したものであり、「ずぼらな・汚い」という意味を持っている。また「泥まみれの」という意味を持っており、そこから派生して「だらしない」という意味を含むようになった。「sloppy」を使った例文としては、「She took up a sloppy attitude.(彼女はいい加減な態度をとる)」が挙げられる。またbe動詞を併用して、「He is very sloppy.(彼はとてもずぼらだ)」といったようにも用いられる。- 《杜撰》の正しい読み方のページへのリンク