矢部川とは? わかりやすく解説

やべ‐がわ〔‐がは〕【矢部川】

読み方:やべがわ

福岡県南部流れる矢部川水系本流福岡・大分・熊本の3県にまたがる三国山に源を発して筑後(ちくご)平野南部を西流し有明海に注ぐ。長さ61キロ上流山地日向神(ひゅうがみ)峡の景勝地中・下流は農業地帯。八女(やめ)市の黒木の大フジ筑後市船小屋(ふなごや)ゲンジボタル発生地は、ともに国の天然記念物指定されている。


矢部川

いのちを育む川~矢部川
矢部川は、その源を福岡県八女郡矢部村三国山発し日向神峡谷の渓流をあつめ西流したのち、山間離れ八女市において最大支川星野川合わせ、更に支川辺春川白木川等を合流し基準地点船小屋下流沖端川分派し筑紫平野蛇行しながら、途中支川飯江川楠田川合わせ有明海に注ぐ、幹川流路延長61km、流域面積620km2一級河川である。

筑後市を流れる矢部川
筑後市流れる矢部川

河川概要
水系矢部川水系
河川名矢部川
幹川流路延長61km
流域面積620km2
流域内人182,889人
流域関係都県福岡県

矢部川流域図
○拡大図
1.矢部川の歴史
"矢部川の歴史は、古くから治水利水に意が注がれいました特長として挙げられるのは、用水堰と廻水路工事あります。矢部川にかんがい用水求めた関係で、右岸有馬久留米左岸立花柳川)の両藩間の水争い生じましたもう一つ特長は、強固な石積の「水刎」は、今もなお所々昔のままで見られます。"

矢部川の歴史先人の知恵活用

矢部川は福岡県有数河川であって古くから治水及び利水に意が注がれていたことは、古書あるいは現在もなお昔日面影とどめている河川工作物などによって容易に推察されます
【水刎】
水刎(みずはね)
まず目につく施設は、きわめて強固な石積みの「水刎(みずはね)」で、今日もなおところどころに昔のままの姿で見ることができます。矢部川をはさんで右岸有馬久留米左岸立花柳川)の両藩が対立していた関係で、相手側に向かって水勢をはねだすために、互いに競って構築したものです。もう一つ特徴用水堰とそれに関連する水路工事(かいすいろこうじ)であり、この川の流域早くから開拓されそのかんがい用水を矢部川に求めた関係で、松原堰、花宗堰、唐の瀬堰、黒木堰等の大規模な用水取入堰等が、地元両藩間の激し水争いや、施工上の困難な問題をおして完成されました。そしてこれらの堰の設置により、必然的に内水問題、および堰防衛のための施設等問題発生しました
矢部川の藩政時代治水利水先人者として田尻総馬(たじりそうま)あげられます。総馬(そうま)は、元禄より享保にかけての30余年間、利水土木有る限りの力を注ぎ彼の千間土居(せんげんどい)工事は、昼夜兼行突貫工事で、夫役苦労なみなみならぬものがありました工事着手する前に降雨の際は、独り半切り浮かべてそれに乗り流れ任せて水流緩急をよく調査しまた、水の勢い激しい所には「羽根(はね)」を築いてその水流
【千間土居】
千間土居(せんげんどい)
勢いを、久留米領である対岸堤防激しく当たるように、新工夫提案しましたこのような施設は、隣の藩、久留米領に迷惑を及ぼすことは明らかであり、工事はごく秘密に、しかも綿密かつ迅速に遂行されなければなりません。また、工事中は、数人の侍を変装させて、久留米領内侵入させ、常に警戒怠らず、他藩に対して用心と、仕事むずかしさは、生やさしいものではありませんでした
矢部川の上流、山下から北田に至る長い堤防には、青々と茂った大木が天にそびえており、その壮観さは見事であります。これは、総馬(そうま)築いた堤防に、苗木手植えしたもので、この堤防により住民洪水の災を受けることなく彼の偉業心から敬意表し感謝してます。
2.地域の中の矢部川
"矢部川は、福岡県西南部に位置し、4市10町216市町村またがり大和町において有明海注いでます。そのため、市町村地形特性気候条件適応した産業盛んに行われてます。このような地域特性の中で、市民団体では、積極的な活動が行われています。"

矢部川と地域社会つながり

矢部川は、その流域福岡県西南部に位置し、4市10町216市町村またがり大和町において有明海注いでます。流域主な産業は、黒木町八女茶立花町山川町ミカン栽培瀬高町酒造業有明海ノリ養殖加工業など、地形特性気候条件適応した産業盛んに行われます。
【日向神ダム】
日向(ひゅうが)ダム
矢部川流域は、利水対す関心が高い地域であり、歴史的な観点からみても「水争い」が激しく井堰造り川の水領土内に引き込んではもどす水路(かいすい)が計十箇所つくられており、このような」を巡る状況は、江戸時代はもちろん、明治大正になって変わらず上流日向(ひゅうが)ダム出来るまで続いていました
河川利用については、上流域では水力発電として現在4箇所発電所があり、中下流域では耕作かんがい用水として利用されています。
また、」を主体とした淡水漁業行われており、さらに、矢部川より分派し沖端川流れたは、水郷のまちとして全国的に知られている”柳川川下り”にも利用されています。
【柳川の川下り】
柳川川下り
このような地域特性の中で、市民団体積極的な活動行ってます。また、グラウンドワーク住民企業行政の3者がお互いに協力通して身近にある自然環境社会環境豊かにしていく)活動通して自然環境改善環境教育福祉支援様々な環境改善行っているNPO法人等の存在は、地域住民河川関心を持つ足がかり作る役割果たしています。
3.矢部川の自然環境
"矢部川流域は、自然豊かな環境有しており、中、上流域及び星野川一部は、県立自然公園指定されており、船小屋付近クスノキ及びゲンジボタル上流域位置する黒木町の大フジが国の天然記念物指定されています。また、上流域日向渓谷周辺には、豊かな自然が残されています。下流域瀬高堰下流には、貴重な延性植物見られ河口付近は、有明海特有の干潟形成してます。"


矢部川は、その源を福岡、大分、熊本の3県にまたがる三国山標高994m)に発し日向渓谷(ひゅうがけいこく)山あい流下し、八女市において最大支流星野川合わせ、さらに辺春川(へばるがわ)白木川飯江川(はえがわ)等を合わせながら、また、山ノ井川花宗川沖端川(おきのはたがわ)分派しながら有明海注いでいる。その流域は、福岡県八女市筑後市柳川市等)の4市10町216市町村からなり流域面積620k㎡、幹川流路延長61km、直轄管理区間19.6kmの福岡県有数河川です。
【クスノキ林】
クスノキ
矢部川の中上流域及び星野川一部は、県立自然公園普通地域)に指定されており、船小屋付近クスノキ及びゲンジボタル天然記念物指定されています。
上流域には、日向渓谷(ひゅうがけいこく)呼ばれる神々伝説秘めた大岸壁や白糸の滝等があり、この周辺には豊かな自然が残されており、鳥類昆虫類多く生存してます。また、日向渓谷(ひゅうがけいこく)下り黒木町立花町過ぎて八女市に至る区間は、矢部川沿川に集落果樹園間近に迫る渓流区間であり、近くには国の天然記念物指定されている黒木町の大フジ見られます。
船小屋温泉を含む市街地耕作地広がる平野部流れ中流域は、河岸クスノキ竹林帯状分布しており、水際にはヨシツルヨシ群落点在し一部にはマコモ群落見られます。この樹林帯存在により、山野生息する鳥類昆虫類多く見られます。また、河原中洲形成されていることから、砂礫地を好むシギチドリ類が生息してます。河道内は、瀬淵の変化富んでおり、瀬や淵を好むオイカワウグイ生息し、瀬はアユ産卵場にもなっています。初夏には清流を好むゲンジボタル成虫出現し穏やかな流れは、水遊びの場としても利用されています。そのほか船小屋付近では、ゲンジボタル生息配慮した護岸工事が行われており、松原堰上流の津島地区では、筑後川広域公園考慮した多自然型川づくりが行われています。
【ゲンジボタル】
ゲンジボタル
下流域瀬高堰下流は感潮区間となるため、アイアシ群落前面には、貴重な塩生植物見られます。また、水域では汽水域生息するエツ見られます。また、矢部川河口付近は、有明海特有の河口干潟形成しており、他の地域では見られないムツゴロウトビハゼ等、干潟特有の魚介類生息してます。この河口干潟には、多く水鳥訪れサギ類やカモメ類の干潟沿岸部生息する鳥類見られます。このほか、瀬高堰上流には、ヨシアイアシオギ等のイネ科草本の大規模な群落見られホオジロ類やオオヨシキリ草地を好む鳥類多く出現します。河道内は、緩やかな区間多く流れ緩やかな所を好むハス生息してます。
4.矢部川の主な災害


発生発生原因被災市町村被害状況
昭和28年6月梅雨前線矢部川流域既往最大
詳細不明
平成2年6月梅雨前線大和町高田町瀬高町山川町床下浸水1,662
床上浸水484

(注:この情報2008年2月現在のものです)

矢部川

読み方:ヤベガワ(yabegawa)

所在 福岡県

水系 矢部川水系

等級 1級


矢部川

作者中薗英助

収載図書南蛮
出版社新潮社
刊行年月2002.6


矢部川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 21:58 UTC 版)

矢部川(やべがわ)は、福岡県の南部を流れる一級水系の本流である。


  1. ^ 矢部川源流域(福岡県八女郡矢部村) ―福岡県:矢部川水系 ―水土の巧”. suido-ishizue.jp. 2019年9月7日閲覧。
  2. ^ 矢部ある記(11)ふるさとのあゆみ|八女市ホームページ”. www.city.yame.fukuoka.jp. 2019年9月7日閲覧。
  3. ^ 矢部川水系河川整備基本方針 (PDF)
  4. ^ 下川耿史 家庭総合研究会 編『明治・大正家庭史年表:1868-1925』河出書房新社、2000年、406頁。ISBN 4-309-22361-3 
  5. ^ 川の管内図12 - 筑後川河川事務所 (PDF)


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