馬力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/05 08:47 UTC 版)
馬力(仏馬力) horsepower | |
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![]() 荷役馬。当初の1馬力。 | |
記号 |
PS(仏馬力) HP, hp, ㏋(英馬力) |
系 |
メートル法重量単位系(仏馬力) ヤードポンド法重量単位系(英馬力) |
量 | 仕事率、工率 |
SI |
735.498 75 W(仏馬力)ただし、日本の計量法では、735.5ワット(正確に) 745.699 871 582 270 22 W(英馬力)[1] |
定義 |
75 kgf·m/s(仏馬力) 550 lbf·ft/s(英馬力) |
由来 | 標準的な荷役馬1頭の仕事率 |
国際単位系 (SI) における仕事率、工率の単位はワット (W) であり、馬力は併用単位にもなっていない。
由来
名前の通り、元々は馬一頭が発揮する仕事率を1馬力と定めたものであった。1馬力は輓馬(荷を引く馬)が継続的に荷を引っ張る際の仕事率を基準にしており、単純に「馬の最高出力=1馬力」を表すわけではない[2]。馬力は馬一頭が定常的に出せるパワーを基準にしたもので瞬発的にはさらに大きなパワーを出すことができる[3]。全力で加速しているサラブレッドは、実際には数十馬力もの脚力を出している。人間の瞬間的な最大仕事率は約1馬力、継続的に発揮できる仕事率は約0.14馬力である[4]。
英馬力
馬力という単位は、ジェームズ・ワットが蒸気機関の能力を示すのに、標準的な荷役馬1頭のする仕事を基準としたことに始まる。これが英馬力の起源で、数値的には「1秒間につき550重量ポンド (lbf) の重量を1フィート (ft) 動かすときの仕事率」(550 lbf·ft/s) となる。
こういう数値になった経緯は次の通り。ウマの牽引力の平均が180重量ポンド、1時間ウマに牽引させ進んだ距離が10 852フィート、したがって1時間当たりの仕事率は、180×10 852=1953 360フィート・重量ポンド/時である。そして1分当たりは、1953 360 ÷ 60=32 556フィート・重量ポンド/分となる。この数値を33 000フィート・重量ポンド/分と丸めた上で、1秒当たりを算出すると550フィート・重量ポンド/秒となる。
ワットで表すと、1英馬力は約745.700ワットである。イギリスの法令上の正確な換算値は、1英馬力 = (正確に)745.699 871 582 270 22 ワットである[1]。この17桁もの数値は、550フィート・重量ポンド/秒 = 550×0.3048(m/フィート)× 0.453 592 37(kg/ポンド)×重力加速度9.806 65 (m/s2) を、桁を丸めることなく算出したものである。
英馬力は、英語の「horse power」の頭文字をとってHPという記号で表される。hpと小文字で書くこともあり、HPを合字にした㏋ (U+33CB、JIS X 0213 1-3-62) も使われる。また、出力を測定するダイナモメータが制動力(ブレーキ力)を利用して測定されたことから、「brake horse power」の頭文字をとったbhpが使われることがあり、数値はHP=bhpとなる。(カタログなどではBHPと大文字で表記されることもある。)同様に、エンジンやタービンの軸出力(軸馬力)として英語の「shaft horse power」の頭文字をとったshpが使われることもある。
近年では後述のPSやkWが使われることが多く、HP、bhpは主にアメリカとイギリスの自動車メーカーで使われている。
仏馬力
仏馬力は、メートル法(重力単位系)に基づいて、英馬力の値に近づけながらも可能な限り簡素な数値によって定義したものである。メートル法がフランス発祥であることから仏馬力と呼ばれる。その定義は、「1秒間につき75重量キログラム (kgf) の力で1メートル動かすときの仕事率」(75 kgf·m/s) となる。ワットで表すと、1仏馬力は 735.498 75 ワットである。ただし、日本の計量法では、1仏馬力= (正確に)735.5 ワットである(計量単位令第11条第2項)。
こういう数値になった経緯は、英馬力から仏馬力を決めたことにある。1 ft·lbf ≒ 0.138 255 kgf·mであり、550フィート・重量ポンド/秒が1英馬力である。それをメートル法に換算すると 550 lbf·ft/s ≒ 76.040 225 kgf·m/sとなる。この数字をもとに、きりのいい 75 kgf·m/s がフランス馬力とされた。
このため英馬力と仏馬力は等しくなく(英馬力>仏馬力)、1 仏馬力 (PS) = 約 0.986 32 英馬力 (HP) である。
記号
言語 | 呼称 | 記号 |
---|---|---|
日本語 | 馬力 | PS[5] |
ドイツ語 | Pferdestärke | |
フランス語 | cheval-vapeur | ch |
イタリア語 | cavallo vapore | CV |
スペイン語 | Caballos | |
ポルトガル語 | Cavalos | |
スウェーデン語 | hästkraft | hk |
デンマーク語 ノルウェー語 |
hestekraft | |
英語 | horse power | HP |
フィン語 | hevosvoima | hv |
チェコ語 | koňská síla | k, ks |
クロアチア語 | konjska snaga | |
ポーランド語 | koń mechaniczny | KM |
マジャール語 | lóerő | LE |
ロシア語 | Лошадиные силы | л. с. |
オランダ語 | paardenkracht | pk |
記号は、ドイツ語のPferdestärke(馬の力)の頭文字の、PS または ps がヨーロッパで使われるほか、表のような各国固有の記号も使われる。
- ^ a b The Units of Measurement Regulations 1995 No.1804 SCHEDULE[1]
- ^ a b 講談社1983年刊『大辞典』1,275頁
- ^ 八坂保能編著 『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、3頁。
- ^ a b c “馬力(仏馬力)”. 大日本図書. 2022年10月7日閲覧。
- ^ 計量単位規則 別表第7
- ^ 計量法 附則6条 第六条 仏馬力は、内燃機関に関する取引又は証明その他の政令で定める取引又は証明に用いる場合にあっては、当分の間、工率の法定計量単位とみなす。 2 仏馬力の定義は、政令で定める。
- ^ 計量単位令 第11条 第2項 法附則第六条第二項の政令で定める仏馬力の定義は、ワットの七百三十五・五倍とする。
- ^ 計量単位規則 - e-Gov法令検索 第2条第2項第2号で参照される、別表第7 に示される通り。小文字のpsは表に掲載なし。
- ^ 計量法 - e-Gov法令検索 第8条第2項
- ^ 空調冷暖房新旧換算表 空調機 kW ⇔ kcal/h 換算表
- ^ http://www.e-matsumura.jp/AC_kw-kcal-kansan-.html 空調冷暖房新旧換算表]
- ^ “CJK Compatibility” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
- ^ “The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。
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