朝木明代市議転落死事件 転落死事件をめぐる名誉毀損訴訟

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朝木明代市議転落死事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 09:35 UTC 版)

転落死事件をめぐる名誉毀損訴訟

創価学会による名誉毀損訴訟・告訴

謀殺疑惑が広まったあと、創価学会は『週刊現代』・『週刊新潮』・『東村山市民新聞』の記事に対して、それぞれ名誉毀損で提訴し(1995年~1997年)、3つとも学会側が勝訴(確定)している。『東村山市民新聞』では矢野穂積・朝木直子が被告、『週刊現代』の裁判では雑誌関係者と朝木直子父娘、『週刊新潮』の裁判では雑誌関係者のみが被告となった。

『週刊現代』の裁判では、朝木直子らは、一審の途中から「週刊現代の取材は受けていない」「週刊現代が朝木直子らの言葉を捏造した」と主張した。一審判決では「取材を受けたことは確かだが、名誉毀損となる部分の掲載を完全に了解していたとまでは言えない」とされ、朝木直子らは勝訴、週刊現代だけが敗訴したが[15] 、控訴審判決では掲載を予期・期待していたと認定されて両者ともに敗訴となった[16]。ただし、判決で命じられた謝罪広告の掲載はされなかった。

『東村山市民新聞』裁判では、矢野・朝木直子は、自殺と断定できないこと、草の根市民クラブが創価学会と対立していたことの根拠を示したが、創価学会が関与したとした根拠を示さず、「万引捏造・謀殺に関与したとは記述していない」と主張した。しかし、見出し・記事構成により全体として印象づけることを意図したと認定されて敗訴し[17]「貴会が、故朝木明代の万引き事件のねつ造及び同人の殺害に関与した事実は存在せず、右記事は事実に反しているものでした」とする謝罪広告を『東村山市民新聞』126号(2002年5月)第1面に掲載した(ただし、「司法と創価学会の癒着」を告発する証拠としての掲載であった)。また、万引きでっち上げ説を主張する『東村山市民新聞』の記事も、万引き被害を届け出た店主に名誉毀損で提訴されて(1997年)敗訴している。 瀬戸も矢野・朝木直子に倣って「創価学会による捏造/謀殺」という表現を注意深く避けていた。しかし、瀬戸の協力者のうち2名は、2009年6月14日に東村山市・東大和市で「創価学会による犯罪、殺人事件」「万引きをしたんだという事件をでっち上げました」との街宣に及び、創価学会から名誉毀損で提訴されるにいたった。裁判で、2名は、殺人や万引捏造を立証する根拠は示さず、街宣の音量が小さかったことや他者の街宣に相槌を打ったに過ぎないことの主張に力点を入れたが、2010年7月30日 敗訴して連帯での110万円の損害賠償の支払いと指定された地域・内容の街宣の禁止を命じられた(2011年4月21日 控訴審で控訴棄却)。

また、市民運動活動家の瀬戸弘幸に同調した西村修平は、東村山署元副署長が万引の捏造・謀殺の隠蔽をしたという内容の街宣を行い、元副署長に名誉毀損で提訴された。矢野・朝木直子らは、西村の裁判に密接に協力し、西村から入手した元副署長の準備書面をウェブサイトで公開し俎上に上げた。西村は、矢野らに提供された書証に全面的に依存しつつも、矢野ら自身は直接の主張を避けている「創価学会による捏造/謀殺・警察と共謀しての隠蔽」の真実性・相当性を主張した。上腕内側の内出血・矢野の言う「再現写真」も含め、矢野らの挙げる証拠を総動員したが、主張を裏付けるものとは認められずに敗訴し(2010年4月28日)、わずかに、公正な捜査と真相解明を求める側面、個人攻撃だけでなく組織(東村山署)の活動に対する批評としての側面もあると認められて賠償額(10万円)に反映したのみであった。西村は控訴したが、2010年10月28日に棄却、その後上告したが上告も棄却された。

矢野穂積・朝木直子による名誉毀損訴訟

『聖教新聞』・『創価新報』・月刊誌『潮』・『月刊タイムス』に掲載された万引き・アリバイ工作・自殺を主張・示唆する記事を矢野穂積・朝木直子が名誉毀損で提訴した(1996年~1999年)。『創価新報』に対するものを除く3つの裁判では、創価学会や雑誌発行者・編集者、執筆者だけでなく、店主や東村山署副署長(当時)も「取材への回答によって名誉毀損に加担した」として責を問い、店主と東京都(副署長の所属する警視庁の所轄自治体)を被告に加えた。矢野らや週刊誌による名誉毀損行為への正当な反論行為であったかどうかが争点となった『聖教新聞』の裁判を除く3つでは、万引き・アリバイ工作・自殺の真実性・相当性が争点となり、いずれも「真実と断定するには足りないものの根拠は十分にあり相当性が認められる」とされた。また、矢野らも、相当性を認めた判決に対して控訴せず、確定するに任せた(ただし、矢野のアリバイ部分についてのみ控訴)。結果として、『聖教新聞』・『潮』・『創価新報』についての請求は全て棄却された。『月刊タイムス』に対しては、後述するように一部の請求(いずれも、万引き・アリバイ工作・自殺の事実認定とは直接関わらない)が認められた。

1998年に宇留嶋瑞郎が『民主主義汚染』を出版し、万引きでっち上げ説・謀殺説と矛盾する多数の事実を記述すると、矢野・朝木直子らは『東村山市民新聞』94号で「余りにひどい内容なので現在、近々提訴予定(原文ママ)」と報じたが、実際には提訴しなかった。矢野らは、出版前に名誉毀損・誹謗中傷になることを宇留嶋に直接「忠告」し、宇留嶋は訴訟を受けて立つ態度を示したという。『月刊タイムス』(平成8年2月号)の宇留嶋らが執筆した記事を矢野・朝木直子が名誉毀損で提訴した裁判の地裁判決(2003年11月28日)では、朝木明代と矢野穂積に関する中傷的な表現数ヶ所のみ請求が認容されたものの、万引き・自殺を示唆する記述については相当性が認められて請求が棄却された。しかし、矢野らは控訴せず、宇留嶋らの控訴・上告が棄却されて宇留嶋らの一部敗訴が確定(2005年5月13日)した後になってから「『××汚染』(原文ママ)というこのライターの出版物の主要な柱が確定判決で否定されている」と『民主主義汚染』の内容が裁判で否定されたという誤解を与えかねない広報を行った[18]。2003年には、宇留嶋が名刺広告恐喝商法事件に関与した疑いがあるかのような印象を与えるべく技巧を凝らした記事を『東村山市民新聞』134号(2003年7月)に掲載した。記事を宇留嶋に名誉毀損で提訴される(2005年7月)と、「互いに名誉毀損記事または名誉毀損のおそれがある記事を執筆しないことを確約する」との条項を入れて和解することを求めたが、宇留嶋に拒絶され、この条項を入れずに15万円を払って和解(2008年3月)した[19](同内容の別発言も提訴されて敗訴し10万円の賠償を命じられている)。2007年ごろになると、矢野らは、宇留嶋を「創価御用ライター」と呼び始めたが、宇留嶋に名誉毀損で提訴される[20]と、広辞苑を引用して「御用ライターの定義に『事実を曲げて記述している』は含まれていないから宇留嶋の記述の真実性は争点にならない」と主張した[21]

救急隊訴訟

「朝木明代が突き落とされて殺された」という主張と並行して、朝木直子らは、朝木明代の死は東京消防庁東村山消防署救急隊の緩慢かつ誤った処置による過失死であるとして、1億4千万という巨額(逸失利益と慰謝料、葬儀代に加え中田康一弁護士らへの報酬1260万円を含む)の損害賠償を求めて1998年に東京都を提訴した。被告側は朝木明代の司法解剖鑑定書を証拠として提出し、朝木直子らは「鑑定書は死亡から1,023日も経過してから作成され、鑑定人の署名押印がなく、信用できない」と主張したが、東京地方裁判所で請求棄却された(2001年6月29日)[22]。『判例タイムズ』には、朝木直子らは控訴したが棄却、さらに上告して争ったとある[23]

東村山署副署長による名誉毀損訴訟

事件当時の東村山署副署長(提訴時は退職)が矢野らを提訴したものも多い。しかし、これらはいずれも記事や発言による名誉毀損に対して損害賠償を求めるものであり、第一に名誉毀損の成否が検討され、次いで公益性・公共性、そして真実性または相当性(真実相当性、真実と信ずるに足りる事情)が検討された。万引き事件・アリバイ工作については被疑者死亡で捜査が中断しており、転落死については不明な点が多いため、高度の蓋然性が求められる真実性は、どちらの主張にしても認められたことがなく、訴訟の形式的な勝敗はもちろん、判決中の判断においても、自殺説・謀殺説の真実性を認めた判断は示されていない。万引き・アリバイ工作・自殺については複数の裁判で相当性が認められているが、万引きでっち上げ・アリバイ工作捏造・謀殺については相当性すら一度も認められたことがない。ただし、矢野・朝木直子の著書『東村山の闇』や矢野らが実質的に経営している地域FM局多摩レイクサイドFMでの放送の内容を東村山署元副署長が提訴した裁判で「謀殺の可能性を示す証拠がある」ことの相当性は認められたことがある。特に、元東村山署副署長が矢野・朝木直子らのウェブサイト『創価問題新聞』の記述を提訴した裁判の高裁判決(2009年1月29日)では、「万引き当日の朝木明代の服装」「上腕の内出血」を含む被告側の根拠はことごとく反駁され、万引き冤罪・他殺を信じる相当性はないとされた(矢野・朝木直子らの敗訴・同年7月3日に確定)。

矢野らは「自殺の真実性が確定すること」を「自殺説」、「自殺と完全に認定できないこと」ないし「謀殺の可能性があると信じても止む得ない事情がある」ことを「謀殺説」と定義している。この定義に基づいて、月刊誌『潮』の記述を名誉毀損として訴えた裁判において自殺説の真実性が認定されなかった(ただし相当性は認定)ことをもって「謀殺説」が認定された、と主張している。また、上記の『東村山の闇』の記述をめぐる裁判の判決(2009年7月)で「謀殺の可能性を示す証拠がある」ことの相当性が認められたことで、最終的に「謀殺説」が確定したともしている。


  1. ^ 「週刊新潮」1996年5月2日・9日号 ワイド特集 真相 東村山市議怪死事件の担当検事は創価学会員
  2. ^ 『民主主義汚染』によると電話はない
  3. ^ 9月3日の『夕刊フジ』は「創価学会追及の急先ぽうの死」として遺族・関係者が他殺を主張していることを大きく報じている。
  4. ^ Forum21: 検証―新事実が明らかになった「東村山事件」
  5. ^ 「小さな正義を信じて」出張所 朝木直子市議が週刊現代の記者に語ったこと]も参照。
  6. ^ 平成7年東村山市議会9月定例会(1995年9月21日)で、矢野は質問中に脈絡なく「私も連日マスコミ対応に追われてまして」と発言している。
  7. ^ 11/20/95 INT/JAPAN: THE POWER OF SOKA GAKKAI。矢野は、市議会平成7年12月定例会で「米国タイム誌が写真入りで朝木明代の事件と創価学会に関する特集記事をトップで掲載」と紹介している(平成7年東村山市議会12月定例会(1995年12月21日))。
  8. ^ この時期は、自公民路線(~1993)と自公連立政権(1999~)の狭間にあたる。細川羽田両連立政権に加わり、前年1994年に村山内閣の成立で野党に転落した公明党は、同年末に新生党民社党などとともに新進党の結成に加わっていた。
  9. ^ s:衆議院第112回国会 宗教法人に関する特別委員会第5号 (朝木明代市議転落死事件)
  10. ^ 衆議院会議録情報 第134回国会 宗教法人に関する特別委員会 第5号
  11. ^ 参議院会議録情報 第134回国会 宗教法人等に関する特別委員会 第6号
  12. ^ 平成20年(ネ)第2746号
  13. ^ 東京地裁判決 平成9年(ワ)第12860号
  14. ^ 東京地裁判決 平成10年(ワ)第30308号
  15. ^ 週刊現代事件 第一審判決[出典無効]
  16. ^ 週刊現代事件 控訴審判決[出典無効]
  17. ^ 『東村山市民新聞』側が名誉毀損で全面敗訴(月刊TIMES 2001年5月号)控訴審でも敗訴した『東村山市民新聞』(月刊潮 2002年3月号)
  18. ^ 東村山市民新聞ウェブサイト:警察捜査結果(自殺)を否定した最高裁確定判決と警告を受けた「ライター」
  19. ^ ブログマガジン エアフォース 名刺広告強要事件
  20. ^ 東村山市民新聞ウェブサイト:あきれた提訴!?
  21. ^ 「創価御用ライター」という意味がわかっているのでしょうか?。なお、宇留嶋が瀬戸弘幸に「創価御用ライター」呼ばわりされたにもかかわらず、市議会の傍聴席で同席したときに反論しなかったことから、本人も「創価御用ライター」であると自認している、としている(事件発生当時の東村山署のあの千葉英司元副署長と「ライター」の関係は?)。裁判は、矢野らが「原告の名誉を毀損するものではなかったが、必ずしも、適切ではなかったことは認め、遺憾の意を表する」ことにより和解し、矢野らはウェブサイト上の「創価御用ライター」を「創価擁護記事ライター」に置き換えた。
  22. ^ 救急隊国賠事件 第一審判決
  23. ^ 1104号163頁。医療判例ダイジェスト 2002年10月~12月分


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