ラテン語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/12 05:55 UTC 版)
現代も使われる表現、日本語への影響
慣用表現・格言
古典ラテン語の慣用表現は、現代の西洋諸語においても使われることが少なくなく、そのうち一部は日本語にも入っている。ラテン語起源の英語などの単語が日本語でも使われる例は、もちろん数多くある。
- ad hoc アド・ホク:暫定の、臨時の(アドホック)
- ad lib. アド・リブ(ad libitum アド・リビトゥムの略):即興(アドリブ)
- alius ibi (alibi) アリウス・イビ:「他の場所で」の意(アリバイ)
- anno Domini アンノ・ドミニ:「主(イエス・キリスト)の年に」、すなわち「西暦」という意味。A.D.と略される。
- a priori ア・プリオリ:先天的に、(哲学)先験的に(ただし古典ラテン語法ではない)(アプリオリ)
- aqua アクア:水
- corona コロナ:王冠
- cum () クム:ともに、英語の with
- de facto デ・ファクト:事実上の(対義語は de jure(法律的には))、defact は誤り(デファクト)
- exempli gratia (e.g.):たとえば
- et alii (et al.) エト・アリイ:その他の者達(論文の著者名省略などでしばしば用いられる)
- et cetera (etc.) エト・ケテラ:その他(エトセトラ)
- ego エゴ:私、自我
- facsimile ファクスィミレ:似せて作れ(ファクシミリ)
- fossa magna フォッサ・マグナ:大きな溝(大地溝帯)
- gloria グロリア:栄光
- id est (i.e.):すなわち
- in situ:本来の場所で
- in vitro:ガラス器(試験管)内で
- in vivo:生体内で
- Pacta sunt servanda パクタ・スント・セルウァンダ:合意は守らるべし (Pacta sunt servanda)
- persona non grata ペルソナ・ノン・グラータ:外交上好ましくない人物
- Quod Erat Demonstrandum (Q.E.D.) クオド・エラト・デモンストランドゥム:証明終わり(直訳は「証明されようとしていたもの」)
- sine () スィネ:~なしに、ともなわず、英語の without
- virus ウィルス:毒
- missile ミッスィレ:投げられるもの(ミサイル)
- Requiescat in Pace:「安らかに眠れ」。墓碑に刻まれる文字。
- Memento mori:死を記憶せよ(メメント・モリ)
- Carpe diem:その日を摘め。いまを生きる(ホラティウス)
- Amor Vincit Omnia:愛はすべてを征服する。愛の勝利(ヴェルギリウス)
- Veritas Vincit:真実は勝つ(ヤン・フス)
- Justitia Omnibus:すべてに正義を(アメリカ合衆国ワシントンD.C.の標語)
- Plus Ultra:プルス・ウルトラ (モットー)、さらなる前進(スペインの標語)
- Sic transit gloria mundi:「かくのごとく世界の栄光は立ち去りぬ」(着座した教皇が蝋燭の灯を吹き消しこの言葉を発する習わしがあった)。
- Fiat justitia ruat caelum:正義はなされよ、たとえ天が落ちるとも
- Quidquid latine dictum sit, altum videtur :「ラテン語で言えば何でも立派に聞こえる」(ラテン語についての格言)
- primus inter pares:「同輩中の首席」。大日本帝国憲法下の内閣総理大臣の位置づけやスイスの連邦大統領の位置づけをあらわす語。もともとは中世ドイツにおける王と諸侯との対等の位置づけを現した(ハインリヒ1世参照)。
商号・固有名詞
ラテン語由来の商号や固有名詞としては、例えば以下のようなものがある。
- 月の海:名前はラテン語で綴られる。
- 星座の名前もラテン語で綴られる。特に黄道12星座は占星術で使用されるときはヨーロッパ諸語では翻訳されない。また、ケンタウルス座アルファ星をAlpha Centauri(アルファ・ケンタウリ)と呼ぶように、星座名のラテン語の所有格が用いられる。
- Audi(ドイツの自動車メーカー):audi は「聞け」の意。創業者ホルヒ(Horch, 聞け)に因む
- ボルボ(スウェーデンの自動車メーカー):volvoは「私は回る」という意味。SKFのベアリングのブランド「ボルボベアリング」に因む名称である。
- ボルボ・グループ(ボルボ・カーズと同じボルボの名称を持つスウェーデンの企業グループ)
- アシックス(日本のスポーツ用品メーカー):社名の由来はMens Sana in Corpore Sano(「健全なる精神は健全なる身体にこそ宿るべし 」)のMens(精神)をAnima(生命)に置き換えたもの。
- アクエリアス:aquarius(アクアリウス)は「みずがめ座」の意。「アクエリアス」はそれを英語読みしたもの。
- 商標名等は当該記事を参照。
- 『AERA』(朝日新聞社の雑誌):æra は「時代」の意。英語の era
- エルガ(いすゞの大型路線バス車両):erga は「~に向かって」の意。
- エルガミオ(いすゞの中型路線バス車両)
- レジアス(トヨタのミニバン):regiusは「華麗な、素晴らしい」の意。
- スープラ(トヨタ自動車のスポーツカー):supraは、「上へ、〜を超えて、至高」の意。
- 『SAPIO』(小学館の雑誌):sapio は「私は考える」の意(現在分詞は sapiens)
- 『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ原作のマンガの題名):thermae romaeは「ローマの浴場」の意。
- ニベア:nivea は「雪」ないし「雪のように白い」の意
- プリウス(トヨタ・プリウスおよび日立製作所のパーソナルコンピュータ、Prius):prius は「~に先立って、先駆け」の意
- プレナス(ほっともっとの運営企業):plenus は「満たされた、豊富な」の意。
- プロペ:propeは傍に、近くにの意
- ベネッセコーポレーション:bene + esse で「良く存在すること」の意の造語
- りそなホールディングス・りそな銀行(大和銀行とあさひ銀行が合併してできた金融機関とその金融持株会社):resona[注釈 11] は「共鳴せよ、響き渡れ(命令形、単数)」の意
- ユヴェントス:イタリアの著名なサッカークラブ。juventus は「青春、青年」の意
- ヴェンタス:ハンコックタイヤのスポーツタイヤとプレミアムタイヤの名称。ventusは「風」の意。
- 湘南ベルマーレ:湘南をホームタウンとするJリーグクラブ。bellum(美しい)+ mare(海)で Bellmare
注釈
- ^ 特に植物学の論文においては2011年12月までラテン語で記述することが正式発表の要件であった[1] → 国際藻類・菌類・植物命名規約。
- ^ 一例を挙げれば「cogito ergo sum」の発音により忠実なカナ表記は「コーギトー・エルゴー・スム」であるが、三省堂刊大辞林には「コギトエルゴスム」の項目に掲載されている。
- ^ Z はラテン語に不要だがギリシア語の [z] の音を表す場合には必要だった。
- ^ 現代のロマンス諸語とは違い、[s] や [tʃ]、[ʒ]、[dʒ] などのように発音されることはなかった。
- ^ 文字Zがラテン語表記に再登場した。
- ^ 日本語でいう促音の発音。
- ^ 欧米で[ai]とすることが多い。
- ^ 欧米で[ɔi]とすることが多い。
- ^ 教会式ではKyrie eleison(主よ憐れみ給え、もともとギリシャ語)は s [s]。
- ^ 母音間、あるいは単に s + 母音 の場合に [z] と発音することもある。
- ^ かつて日産ディーゼル(現・UDトラックス)が製造・販売していた大型トラックのレゾナの綴りもRESONAであるが、こちらは英語のresonanceが名称の由来である(ただしresonance自体はラテン語のresono(resonaの原型)に由来する)。
出典
- ^ 仲田崇志、永益英敏、大橋広好「第4回「第18回国際植物学会議(メルボルン)で変更された発表の要件:電子発表の意味するところ(Changes to publication requirements made at the XVIII International Botanical Congress in Melbourne: What does e-publication mean for you. Knapp, S., McNeill, J. & Turland, N.J. Taxon 60: 1498-1501, 2011)」 の紹介と日本語訳」(PDF)『日本微生物資源学会誌』第27巻第2号、日本微生物資源学会、2011年12月、2021年3月7日閲覧。
- ^ Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, Tenth Edition (1999) "Foreign Words and Phrases"
- ^ 松平 & 国原 1992, pp. 31.
- ^ 松平 & 国原 1992, pp. 21–22.
- ^ 松平 & 国原 1992, pp. 33.
- ^ 松平 & 国原 1992, pp. 16–17.
- ラテン語のページへのリンク