デジタルメディア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/08 05:00 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動デジタル情報であっても、文字や数字、楽譜など人が読むことを前提にしたメディアはデジタルメディアとは呼ばない。また、デジタルメディアを紙や画面出力した物もデジタルメディアとは呼ばない。デジタルメディアは、印刷メディア、書籍、新聞や雑誌、また他の伝統的すなわちアナログメディア(写真やフィルム、音声テープなど)と対比されることが多い[1][2]。
インターネットやパーソナル・コンピュータの使用と相まって、デジタルメディアは出版、ジャーナリズム、娯楽、教育、商業、政治に混乱を引き起こした。デジタルメディアはさらに、著作権法や知的財産権法への新たな困難となり、コンテンツの製作者が自ら、自分の作品に対する法的権利の一部または全部を譲渡するというオープンコンテントの動きを助長させた。デジタルメディアの遍在性とその社会に対する影響は、我々が、情報時代と呼ばれる、産業史上の新時代の幕開けにあることを示唆している。情報時代は、おそらくペーパーレス社会、つまり全てのメディアがコンピュータ上で作成・消費される社会へと至るだろう[1]。しかしながら、デジタルへの移行における課題は、時代遅れの著作権法、検閲、デジタル・デバイド、そしてデジタル暗黒時代の不安(即ち古いメディアが新しい、またはアップデートされた情報網にアクセス出来ないという問題)を含め残っている[2]。デジタルメディアは、重大で広範囲な複雑な影響を、社会や文化に与えている[1]。
歴史
電子以前
機械可読メディアは、インターネットや現在のコンピュータ、電子機械に先立ち登場した。機械読み取り可能な記号や情報は、1800年代初期のチャールズ・バベッジ によって初めて概念化された。バベッジはこれらの記号は彼を階差機関や解析機関、即ち計算間違いという問題を解決するために設計した機械へと導いてくれるだろうと想像した[3]。1822年と1823年の間、エイダ・ラブレスという数学者が、バベッジの機関を用いて数を計算するための最初の指示を書いた[3]。ラブレスの指示は、現在では最初のコンピュータ・プログラムだと信じられている[3]。 他の初期の、機械により読み取り可能なメディアは,自動ピアノやジャカード織機を含む。
デジタルコンピュータ

機械読み取り可能なメディアが使用されたが、バベッジの機関や自動ピアノ、ジャカード織機、またその他の初期の計算機の多くは、それ自体アナログコンピュータであり、物理的、機械的な部分があった[4]。デジタルコンピュータの出現によって、最初の真のデジタルメディアが現れた。デジタルコンピュータは情報を保存・処理するために二進法とブール代数を使用し、コンピュータの構成上の1つの構造部が多くの異なる処理を実行することを可能にしている。最初の現代的な、プログラムに組めるデジタルコンピュータであるManchester Mark I と EDSACは、互いに独立して1948~1949年に開発された[4][5]。 現在のコンピュータとは多くの点で異なっているが、これらの機器には自身の論理演算をコントロールするソフトウェアが内蔵されていた。そのソフトウェアは二進数、即ち0と1の組合せで何百もの記号をなす体系にコード化されていた。二進数の「1」と「0」を、デジタルメディアの「ディジット」という。
”われわれが思考するごとく”
デジタルメディアは1950年代初期に一般的に使われるようになったが、デジタルメディアの「概念的」な基盤は科学者兼技術者のヴァネヴァー・ブッシュと『アトランティック・マンスリー』に1945年に出版された"われわれが思考するごとく" に遡る[6]。
ブッシュは、科学者や医者、歴史家やその他の人が、情報を保存、分析、伝達する際の助けとなるような装置の仕組みを構想していた。この、当時想像上のものであった装置をメメックスと呼び、ブッシュはこう書いている。
メメックスの持ち主が、弓矢の起源とその性質に関心があったとしてみよう。なぜ十字軍の小ぜり合いで、短いトルコ式の弓のほうが英国式の長い弓よりも優れていたかを研究していると しよう。彼は、関連する書籍や論文などをメメックスに何冊も保存している。まず、百科事典を取り出して全体をながめ、興味深いがおおまかな記述を見つけ出して画面に映し出しておく。次に歴史のなかから関連のある項目を見つけ出し、上のものと結び付ける。このようにして、多数の項目の間のつながりをつくっていく[7]。時に彼は、本文に繋げる、またはある項目からの脇道に加えることで自身の発言を残している。利用可能なもので、弾性が弓と大いに関係があると明らかになると、彼は、自分に弾性についての教本や、物理定数の表に導いてくれる支線に分け入る。彼は、自身の分析を手書きしたページを挿入している。このようにして、彼は自分が利用できる資料の迷宮を通って、自身の興味の道をつくったのである[8]。
ブッシュは、このメメックスの制作が第二次世界大戦後の科学者らの業になることを願っていた[8]。"われわれが思考するごとく"はデジタルコンピュータよりも数年先であったが、そのエッセーはデジタルメディアの潜在的な社会的、知的な利益を予期し、またデジタル・スカラーシップ(英語版)やWorld Wide Web、wiki、そしてソーシャルメディアにわたる概念的枠組みをもたらした[6][9]。それは、出版された時でさえ、重大な所業と考えられた[8]。
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