スカラベ
英語:scarab
「スカラベ」とは、古代エジプト語でフンコロガシ(タマオシコガネ)を指す言葉である。古代エジプトではスカラベは太陽神と同一視され、再生・復活を象徴する神聖な存在として扱われた。壁画や装飾品にもスカラベの意匠が盛んに取り入れられた。
日本語においては、俗名としては「フンコロガシ」、生物学をはじめとする学術的な文脈では「タマオシコガネ(球押金亀子)」、エジプト文化をはじめとする文化史的な脈絡では「スカラベ」と呼ばれることが多い。
「スカラベ」は、いわゆる糞虫(食糞性コガネムシ)の一種である。コガネムシ科の甲虫のうち、タマオシコガネやヒジリタマオシコガネなどの種類が特にスカラベと呼ばれる。古代エジプト文化において神聖なる存在として崇められていたスカラベはヒジリタマオシコガネだったらしい。
スカラベの基本的な生態
スカラベは、動物の糞を転がす習性を持つことでよく知られている。前足で動物の糞を切り出し、団子状にしていく。そして、後ろ足で転がしながら、安全な場所まで運んでゆくという性質を持つ。糞を転がしている間は逆立ちして後向きに進む格好になる。スカラベが糞を転がす理由は、糞を食べるためである。安全な場所を確保してから食べるために、糞を必要な量だけ切り取り、転がして運ぶのである。
食糞を行う昆虫はスカラベだけではないが、たいていは糞が落ちている場所で直に食べる。糞をわざわざ球状に加工して運搬するのはスカラベに固有の特徴である。
スカラベの雌は、団子状にした糞に卵を産み付けることがある。卵から孵化したスカラベの幼虫は、周囲にある糞を食べて成長する。
エジプトにおけるスカラベの扱い
スカラベは、エジプト文化においては神聖視される重要な存在である。古代エジプトにはじまり、現代においてもその文化は受け継がれている。古代エジプトでは太陽が極めて重要な存在とされた(太陽神ラー、アテン、アメンは最高神に位置づけられる)が、スカラベが球体を転がして運んでいくさま「太陽を運行する」姿に見立てられた。そしてスカラベは想像や再生象徴として扱われるようになった。
昆虫が球体を作成した上に運んでゆく姿はそれ自体が神秘的でもある。
当時の遺跡や遺物からは、スカラベの姿をモチーフにした壁画やレリーフなどが数多く見つかっている。現代のエジプトでも、スカラベは幸運のシンボルとして装飾品などの意匠に多く用いられている。
「スカラベ」の語源・由来
「スカラベ」は、英語では「scarab(スカラブ)」という。大本を辿れば古代エジプト語を語源とする語とされるが、「scarab」直接の語源としてはラテン語の「scarabaeus」およびギリシア語の「skarabeios」が挙げられる。タマオシコガネは学名を「Scarabaeus(スカラバエウス)」というが、これは古代エジプト語の「スカラベ」に由来するラテン語である。
日本語における「スカラベ」という表記は、おそらくフランス語の「scarabée(スカラベ)」に依拠している。
日本で「スカラベ」が知られるようになった大きな契機のひとつに、ファーブルの「昆虫記」が翻訳されて出版されたという出来事が挙げられるが、ファーブルはフランスの昆虫学者であり、かつ「昆虫記」を最初期に翻訳した大杉栄などは東京外国語学校(現東京外国語大学)仏文科の出身である。つまり英訳書などを介さず原著を邦訳したと考えられる。
スカラベとフンコロガシの違い
「スカラベ」と「フンコロガシ」は、どちらもタマオシコガネの別名である。その意味では両者に違いはない。敢えて違いを挙げるとすれば、これらの呼び名は扱う文脈が異なる。エジプト文化における象徴的存在としてのタマオシコガネは「スカラベ」と呼ばれることが多く、スカラベのモデルとなった昆虫そのものは「フンコロガシ」と呼ばれることが多い。学術的な正確さを期する文脈では「タマオシコガネ」と呼ばれることが多い。「ハムナプトラ」に登場するスカラベ
アメリカの映画「ハムナプトラ」シリーズでは、スカラベは「肉食の昆虫」の名として登場する。単独で人の皮膚の中に侵入して脳を食べたり、あるいは群れになって人に襲いかかり数秒で骨だけの姿にしたりする場面が描かれている。むろん実在するスカラベは肉食ではく、人に襲いかかる習性もない。「スカラベ」の英訳
「スカラベ」は英語では「scarab」という。この英語の「scarab」は、もっぱらエジプト文化における意匠としての「スカラベ」を指す言葉である。昆虫の種名としては学名の「Scarabaeus」が用いられることが多い。
あるいは、「フンコロガシ」に相当する語として「dung beetle(糞虫)」を用いる場合もある。
「scarab beetle」はコガネムシ科の昆虫の総称として用いられる。
スカラブ【scarab】
読み方:すからぶ
⇒スカラベ2
スカラブ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 05:07 UTC 版)
「スペース・レンジャーズ」の記事における「スカラブ」の解説
太陽が2つ存在し、それが同時に上がったとき地上にいる生命体が焼き払われる荒涼とした惑星。この星の植物は焼き払われても一晩で元に戻り、動物を捕食するほど生命力がある。グラッカ星人の墓地である古代寺院が存在する。
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