iPhone向け小型液晶事業への依存と経営悪化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 02:22 UTC 版)
「ジャパンディスプレイ」の記事における「iPhone向け小型液晶事業への依存と経営悪化」の解説
しかし、元々成長し切った会社の寄せ集めであり伸び代に乏しかったため、設立当初より赤字が続き、設立から5年目となる2017年に構造改革が行われた。設立の経緯上、生産部門以外の機能を自社で持たない、事実上の「国策企業」であるため、経営方針がトップダウン式に決定される競合他社とは異なり、全ての経営計画において経済産業省と産業革新機構の承認が必要という意思決定の遅さがあり、また解雇がそのままアベノミクスの失敗を想起させるため、シャープ以外の日本のディスプレイメーカーのうち、大半の人員と工場を丸抱えしているにもかかわらず、リストラができないという「負の遺産」があるとの危機意識が、2017年の時点で存在した。 スマホ向けの小型液晶で高いシェアを持っていた。主にスマホのディスプレイに使われる低温ポリシリコン(LTPS)TFT-LCDパネルの出荷額ベースの市場シェアは、創業から2018年まで世界1位であった。例えば2018年度の世界シェアは17.6%で、後に2019年度に首位となる京東方科技集団(11.9%)に差をつけて上回っていた(IHS Markit調べ)。また、LTPS TFT-LCDパネルの出荷量ベースの市場シェアでも、創業から2017年まで1位であり、2018年の時点でも1位の天馬微電子(22%)に次ぐ2位の18%という高いシェアを誇った。車載向けの小型液晶でも18.1%で世界1位(2017年度)であった。高級なLTPS TFT-LCDパネルを主軸とするため、LTPS以外も含めた小型LCDパネル市場全体における当社の出荷量ベースの市場シェアは低く、例えば2018年度は5.0%で世界8位であった。 一方で、当社は有機ELパネルを生産していないため、中小型パネル市場全体における出荷額ベースのシェアでは、有機ELパネル最大手のサムスンディスプレイに水をあけられていた。例えば2017年度において、中小型パネル市場1位であるサムスンの市場シェアが33%なのに対し、当社の市場シェアは13%で世界2位であった。なお、データの上では「中小型向け液晶でトップ」となっているが、実際はパソコンやタブレットを中心とする中型パネルのシェアは全くなかった。また、大型パネルは生産しておらず、全くシェアが無かった。例えば2016年(平成28年)度において、スマホを中心とするモバイル向けが8割、とりわけiPhoneへの依存率は5割を超えるなど、スマホ向け小型液晶事業に、さらに言うとiPhoneと言う1つのスマホに極度に依存していた。 2016年度には、2017年3月発売予定のゲーム機Nintendo Switchにディスプレイを供給したため、2016年度だけはゲーム機向け液晶でもシャープに次ぐ世界2位のシェアがあった。ただしローンチ版Nintendo Switchの液晶を生産したJDI茂原工場の4.5世代ラインは2016年いっぱいで閉鎖され、その後はスマホ用の狭額縁液晶「フルアクティブ液晶」の生産ラインに振り分けられた。なお、当社が有機ELに対抗するため社運をかけて開発した「フルアクティブ液晶」は、有機ELに匹敵する性能を持ちつつ安価であるため、有機ELへシフトするスマホ業界を液晶へ引き戻す役割を果たすことが2016年12月の段階では想定されており、量産品は2018年発売の廉価版iPhoneである「iPhone XR」などに搭載され、その人気によって当社は2018年度に5年ぶりの最終黒字となることが2018年11月の段階でも想定されていた。 2016年(平成28年)に、主にパソコン向けの中型ディスプレイに参入した。 なお、2019年よりBOEやCSOTなどの中国メーカーがHuawei、Oppo、VIVO向けのLTPSパネルの生産を拡大したことと、中国・韓国メーカーが有機ELディスプレイの生産を拡大したことにより、相対的に中小型パネル市場における当社のシェアは出荷量・出荷金額共に縮小し、そのため2020年現在もiPhone向けの液晶が頼みになっている。
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