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BOE (企業)

(京東方科技集団 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/25 14:35 UTC 版)

BOEテクノロジーグループ
各種表記
繁体字 京東方科技集團股份有限公司
簡体字 京东方科技集团股份有限公司
拼音 Jīngdōngfāng Kējì Jítuán Gǔfèn Yǒuxiàn Gōngsī
英文 BOE Technology Group Co., Ltd.
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BOE本社
BOE工場

BOEテクノロジーグループ(京東方科技集団、簡体字中国語: 京东方科技集团股份有限公司: BOE Technology Group Co., Ltd.SZSE: 000725)は、中華人民共和国北京市大興区の北京経済技術開発区[1]に本社を置く電子製品製造メーカー。液晶ディスプレイ製造分野では、2019年より世界1位のシェアを誇る。略称BOE

創設者は王東升で、赤字の真空管工場を25年で世界1位の液晶ディスプレイメーカーにまでのし上げた。2019年に王が引退し、董事長はBOE創設以来の部下である陳炎順となった。日本法人として、BOEジャパン株式会社: BOE Japan Co.,Ltd.)が2011年11月に設立された。

概要

中国の大手ディスプレイメーカーで、主に液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを製造している。

2022年現在、ディスプレイの市場シェア世界1位。内訳では、スマートフォン向けで1位、タブレット向けで1位、ノートパソコン向けで1位、汎用ディスプレーで1位、テレビ向けで1位、つまり全ての分野で1位[2]。小型液晶パネルでは世界1位、大型液晶パネルでも世界1位だが、有機EL(OLED)パネルは弱く、サムスンディスプレイとLGディスプレイに次ぐ世界3位[3]

2010年代後半より有機ELディスプレイ(OLED)に力を入れており、2018年には成都市にOLED工場(B7)を稼働。当初はファーウェイを主要な顧客としていたが、ファーウェイは2020年より米中関係悪化の煽りを受けてスマホ部門が縮小したため、Appleなど他のスマホメーカーにOLEDの供給を広げている。2019年、四川省綿陽市の工場(B11)にiPhone専用OLED生産ラインを稼働し、2021年よりApple社のiPhoneへの供給を開始。それまでサムスンD製OLEDしか使わなかったサムスン電子の「Galaxy」シリーズにも2021年よりOLEDを供給したことで話題となった[4]

2020年には、シャープより技術供与を受けてIGZO液晶を製造していたCECパンダの成都工場と南京工場(現・BOE B18、B19)を買収。「IGZO」(VAパネル&酸化物TFT-LCD)の技術を獲得し、IGZO液晶を生産すると同時に、将来のテレビ向けの大型OLEDパネルの量産を目指してIGZO OLEDの開発を行っている。

Appleとの関係

2020年よりAppleのサプライヤーとして参画している[5]。MacBookとiPadの一部モデル向けにIGZO液晶を納入している。またiPhone向けにOLEDディスプレイを納入している。2022年現在、ディスプレイに関してはサムスンDとLGDに次ぐ第3位のサプライヤーであり、成都工場(B7)や重慶工場(B11、B12、B13)などApple専用ラインを多数持つ。

2022年1月、Appleに無断でディスプレイの仕様を変更してiPhone向けに出荷していたことが発覚し、Appleが激怒。納入がストップした。5月に納入が再開。サプライチェーンから除外はされなかったものの、納入数がかなり減らされた[6]

2022年、iPad用ディスプレイではLGDを抜いて第1のサプライヤーとなったが、iPhone用ディスプレイでは許されず、iPhone 14でも納入数がかなり減らされた[7]。予定ではiPhone 14に最大3000万枚を供給し、LGの供給量を上回ると想定されていたが、500万枚にされた。

iPad用OLEDの開発を目指してサムスンD、LGDとしのぎを削っており、2022年には重慶工場(B12)にiPad用のリジッドOLEDラインを稼働。iPad Air (第5世代)より搭載される予定だったが、量産に難航し、BOEによるiPad用OLEDの開発は断念された[8]

歴史

1951年に国営の真空管工場である「北京電子管廠」として設立。この工場が、北京市の経済改革の一環で1993年に独立することになった。

1993年にBOEが設立された。設立当初の英語名はBeijing Oriental Electronics Group Co., Ltd。北京電子管廠の工場長だった王東升が董事長に就任し、赤字で潰れかけだった国営の真空管製造工場を建て直した[9]

1997年6月10日に深圳証券取引所A株に上場し、2001年1月12日に同取引所のB株に上場した[10]

2003年IPS方式のバリエーションである「FFS方式」を開発した韓国Hydis社(韓国ハイニックスの液晶ディスプレイ部門を2001年に分社化したもの)を買収した。しかしHydis社の経営を改善することはできず、Hydis社は2006年に不渡りを出したため[11]、2007年に台湾の液晶パネルメーカーであるPrime View International社(2009年にE-ink社に改称)に売却した[12]。一方BOEは「FFS方式」をベースに「ADS方式」の液晶パネルを開発した。

特に2010年代以降は、ADSパネルが各社のテレビに採用されるなど、液晶ディスプレイメーカーとして急成長。2014年までに、北京市(B4)、内モンゴル自治区オルドス市(B6)、重慶市(B8)などに巨大な液晶ディスプレイ工場を次々と稼働させた。こうした工場群を背景に液晶ディスプレイの出荷量は年々増加。2017年1月には大型液晶パネルの月間の出荷量で初めて世界1位となり[13]、2019年には年間でも出荷枚数、出荷面積ともにLGディスプレイを抜き、液晶パネル世界シェア1位となった[14]

2019年には中国政府の後押しを受け、1.6兆円の投資をして中国各地に新工場を建設する計画を発表[15]。重慶の有機ELパネル工場(B12)は2021年に量産開始。

トリビア

  • 日中国交正常化が実現した6年後の1978年10月、鄧小平副首相が日中平和友好条約批准のために訪日。その際、松下電器産業(現・パナソニック)のテレビ工場を視察し、松下幸之助氏に中国への協力を要望し、日本企業の中で「中国進出第1号」となる進出を果たすと共に、『日中友好合作の模範企業』となった。1987年:北京松下彩色顕象管有限公司を設立。この時に、中国側の母体となったのがBOEの前身である北京電子管廠である。

脚注

  1. ^ 企业概览
  2. ^ 中国パネル大手「BOE」が世界シェア首位に躍進 東洋経済オンライン
  3. ^ 液晶パネル・タッチパネル業界 市場規模・動向や企業情報 日経テレコン
  4. ^ 中国BOEが韓国SamsungにOLEDディスプレイパネル供給?価格競争激化か - iPhone Mania
  5. ^ アップル取引先、中国が最多 日本経済新聞
  6. ^ BOE、引き続きiPhone用OLEDディスプレイのサプライヤーにとどまる - iPhone Mania
  7. ^ iPhone14向けBOE製OLEDディスプレイの調達数増にAppleが慎重な姿勢? - iPhone Mania
  8. ^ iPad Pro(2024)用OLEDを、LGとSamsungが供給〜将来はMacも - iPhone Mania
  9. ^ “京東方科技集団とは”. 日本経済新聞. (2017年9月21日). https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2133709020092017FFE000/ 2017年12月25日閲覧。 
  10. ^ 京东方A(000725)公司概况-pc_hsf10资料” (中国語). 2017年12月25日閲覧。
  11. ^ “【現場から】構造調整前に考えよ、H・O・P・E=韓国(1)”. 中央日報. (2016年5月25日). https://web.archive.org/web/20160528121820/http://japanese.joins.com/article/116/216116.html 2018年1月8日閲覧。 
  12. ^ 韓国BOE Hydis社の売却先,台湾と香港の企業連合に決定 日経クロステック(xTECH)
  13. ^ “中国BOE、大型液晶パネル出荷枚数で初の世界首位”. 日本経済新聞. (2017年2月27日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H6Z_X20C17A2FFE000/ 2018年1月8日閲覧。 
  14. ^ 19年世界液晶パネル番付、BOEが初めて首位に AFPBB News
  15. ^ 中国BOE、1.6兆円投資 有機EL・大型パネル工場 日本経済新聞

外部リンク




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