肺動脈楔入圧
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肺動脈楔入圧(はいどうみゃくせつにゅうあつ 英: pulmonary arterial wedge pressure (PAWP))は肺毛細血管楔入圧(英: pulmonary capillary wedge pressure: PCWP)とも呼ばれ、肺動脈分枝に、先端にバルーンを付けた肺動脈カテーテルを楔入、すなわち膨張したバルーンでその血管を閉塞して、バルーン先端で測定される圧力のことである[1]。左房圧を推定できる。
肺静脈楔入圧(PVWP)は上記と同義ではない。PVWPは、信頼性は低いものの、肺動脈圧と相関があることを示した研究がある[要出典]。
生理学的には、肺動脈圧、肺動脈楔入圧、肺静脈圧、左房圧に区別されるが、臨床ではこれらすべてを測定することはできない[2]。
PAWPの非侵襲的な推定技術も提案されている[3]。
臨床的意義
部位 | 正常 範囲 単位 (mmHg)[4] |
|
---|---|---|
中心静脈圧 | 3–8 | |
右室圧 | 収縮期 | 15–30 |
拡張期 | 3–8 | |
肺動脈圧 | 収縮期 | 15–30 |
拡張期 | 4–12 | |
肺静脈/ |
2–15 | |
左室圧 | 収縮期 | 100–140 |
拡張期 | 3–12 |
肺循環のコンプライアンスは大きいため、PAWPは左心房圧の間接的な指標となる[5]。
例えば、急性肺水腫の原因を判断するためのゴールドスタンダードと考えられており、PAWPが20mmHgを超えると肺水腫が発生する可能性が高い。また、肺動脈楔入圧の上昇は左心不全を強く示唆することから、左心不全や僧帽弁狭窄症の重症度を診断するためにも使用されている[6]。
従来、PAWPが正常な肺水腫は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または非心原性肺水腫(オピオイド中毒など)の診断を示唆すると信じられていた。しかし、(前方への血流の勾配を促進するために)バルーンを収縮させると毛細血管の静水圧は楔入圧を上回るため、楔入圧が正常でも静水圧性肺水腫とARDSを決定的に区別できないとされる[要出典]。
生理的な値:6-12mmHg[7]
出典
- ^ Peacock, Andrew J.; Lewis J. Rubin (2004). Pulmonary Circulation: Diseases and their treatment. Arnold Publisher. ISBN 978-0-340-80782-8
- ^ “Pulmonary venous pressure: relationship to pulmonary artery, pulmonary wedge, and left atrial pressure in normal, lightly sedated dogs”. Catheterization and Cardiovascular Interventions 56 (3): 432–8. (July 2002). doi:10.1002/ccd.10203. PMID 12112902.
- ^ “A novel method to estimate pulmonary artery wedge pressure using the downslope of the Doppler mitral regurgitant velocity profile”. Echocardiography 21 (8): 673–9. (November 2004). doi:10.1111/j.0742-2822.2004.03174.x. PMID 15546367.
- ^ Table 30-1 in: Trudie A Goers; Klingensmith, Mary E; Li Ern Chen; Sean C Glasgow (2008). The Washington manual of surgery. Philadelphia: Wolters Kluwer Health/Lippincott Williams & Wilkins. ISBN 0-7817-7447-0
- ^ “Gun Shot Wound Case Study Discussion”. 2009年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年3月2日閲覧。
- ^ “CV Physiology”. Richard E. Klabunde, PhD. 2022年12月24日閲覧。
- ^ “Pulmonary Capillary Wedge Pressure”. Duke Orthopaedics. 2022年12月24日閲覧。
外部リンク
PCWP(肺動脈楔入圧 はいどうみゃくせつにゅうあつ)
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「心臓カテーテル検査」の記事における「PCWP(肺動脈楔入圧 はいどうみゃくせつにゅうあつ)」の解説
左房圧を反映するといわれている。僧帽弁狭窄症などがない限り左室拡張末期圧(LVEDP)に等しいとされている。平均圧は正常では2~15mmHgである。PCWPが増加する病態としては左房への流入血液量が増加する病態、具体的には僧帽弁閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、心室中隔欠損症、動脈管開存症などがあげられる。左室の収縮力低下でも増加し、左心不全、拡張型心筋症、虚血性心疾患などもあげられる。限界があるもののPCWPは心臓の前負荷の指標の一つである。PCWPの平均圧が22mmHgを超えると肺水腫が出現し始めるといわれている。PCWPが減少する病態としては循環血流の低下があり、大量出血や熱傷などがあげられる。
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