NOLR-8
NOLR-8
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 23:55 UTC 版)
水電妨(NOLQ-X)の受信装置を担当した日本電気によって、その技術的成果を全面活用した電波探知装置として開発されたのがNOLR-8であった。これは同社のNOLR-6の後継機種と位置付けられたが、このような経緯のために、従来とはまったく別系列のASMD重視の機種となっており、通信波帯ESM機能を削除する一方で、ミサイル・シーカー波の瞬時探知・全方位同時捜索などの機能を備え、また戦術情報処理装置や電波妨害装置との連接にも対応していた。 上記のように、水電妨は受信装置だけでも5架構成であり、DDクラスへの搭載にはあまりに大規模で、価格低減のためにも小型化が求められた。このことから、同時期にアメリカ海軍が装備化したAN/SLQ-32をモデルに、受信装置を1架とするための検討に着手した。小型化のため、まずIFM処理で周波数を多重計測する新しい技術開発を行って、計測ハードウェアを水電妨の半分以下とした。またマルチビーム・モノパルス処理については、処理ハードウェアの耐環境性能を向上させることで、空中線側に大部分の処理を集約するとともに、全体的に実装を高密度化するための再設計を実施して、1架内への収容が実現された。 また水電妨の技術的陳腐化に対応して、新技術の適用による性能向上も図られた。マルチビーム・モノパルス方探については、アンテナのビーム数を水電妨試作機の約4倍として精度・感度を向上させており、またこれに伴うハードウェア規模の増大を抑制するために小型マルチビーム・アンテナを新たに採用して、これにMMIC技術を用いた小型受信モジュールを組み合わせることで小型・高精度化を両立させた。また探知処理については、新たにソフトウェア信号処理を導入することで性能向上を図った。 このように開発された装置は、昭和60年度艦に搭載されて海上公試を迎えたものの、公試中から早くも長短両面が顕在化したことから、海上幕僚監部主導のもと、官民合同の戦力化検討会が設けられ、改良が重ねられた。特に誤追尾とマスト遮蔽の問題への対策が求められることになった。誤追尾の問題は、一般船舶のレーダー電波や地形による反射電波による偽目標を含む多数の目標を探知してしまい、追尾処理が混乱することが主原因であり、追尾分解能の向上による対策が図られたが、ソフトウェア処理を採用していたことが幸いし、大幅な処理の追加にも関わらず迅速に開発を行うことができた。またマスト遮蔽の問題(マストによる電波の遮蔽)については、艦上での配置について装置メーカー側が容喙することはできないと認識していたのに対し、海幕や造船会社側が予想以上に協力的で、マストの形状自体の変更まで含めた改善が行われた。
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