BCMPネットワークとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 学問 > OR事典 > BCMPネットワークの意味・解説 

BCMPネットワーク

読み方びーしーえむぴーねっとわーく
【英】:BCMP (Baskett, Chandy, Muntz and Palacios) network


概要

数ベクトル定常確率が積形式与えられる待ち行列ネットワーク のひとつで, ジャクソン型を拡張して客にクラス設けサービス規律より一般的にしたものサービス時間分布は, 先着順場合指数分布のみであるが, プロセッサ・シェアリング, 無限サーバ, 後着順割込継続型場合は, 任意の分布許される. この結果1975年バスケットF. Baskett)らによって発表されたが, その後この論文著者4人のイニシャルをとって,BCMP型と呼ばれている.

詳説

 待ち行列ネットワーク (queueing network) において, ネットワーク全体定常分布が各ノードの状態の周辺分布の積として表されるとき, このようなネットワーク一般に積形式解 (product form solution) を持つといわれる. 最初に研究され一連の積形式ネットワークは, ジャクソンネットワーク (Jackson network) と呼ばれている. ジャクソンネットワークは, 定常分布表現が簡単であるので広く応用されてきたが, 経路をあらかじめ選択できない, 指数サービス限定される, などモデル制約が強い. これに対して, ジャクソンネットワーク拡張して, 客に客のクラス設け, かつより一般的なサービス機構にしても積形式解をもつことが, Baskettら [1] やKelly [2] の研究によって明らかにされた. ここでは, 前者BCMPネットワーク (BCMP network) [4], 後者ケリーネットワーク (Kelly network) と呼ぶ.


BCMPネットワーク BCMPネットワークは, 次のように定義される.


いま, ノードi\, への客の到着トラフィック方程式 (traffic equation)



\lambda_{(i, c)} = \lambda r_{0, (i, c)} + 
\sum_{j=1}^N \sum_{d=1}^C \lambda_{(j, d)} r_{(j, d), (i, c)} 
\,


の解\lambda_{(i, c)}\, 等しい率のポアソン到着としてノードの状態の周辺分布求めると, BCPM型ネットワーク定常分布この周辺分布の積で表現できる.


ケリー BCMPネットワークとケリーネットワーク2つ研究は,ほぼ同時期に独立行われたが,本質的に同種類のモデルである.しかしKelly研究は,積形式解をもつネットワーク範囲がBCMP型のプロセッサ・シェアリング,無限サーバ,後着順割込継続型を含む,より一般的な対称型サービス規律(symmetric service discipline)に拡張されている点と,客のクラス経路情報含めた形で設定するれば客の経路決定論的定めることができること明示した点で重要である.以下,対称型サービス規律について説明する


対称型サービス 対称型サービス規律ではノード内の客の位置区別し, ノードi\, に客がm\, 人いるときのノードi\, の状態 \boldsymbol {x_i} \, を, 位置k\, 客のクラスc_k\, とその客の残余サービス必要量 (サービス必要量分布相型分布(phase distribution)の場合は客のいる相番号))\phi_k\, 用いて\boldsymbol{x_i} = (c_1, \phi_1, c_2, \phi_2, \cdots, c_m, \phi_m)\, 表現するノードi\, の状態が \boldsymbol{x_i}\, であるときこのノードに客が到着すると, 客は確率 \gamma(m+1, k)\, 位置k\, 選択し, このとき位置 l>k\, にいた客は位置l+1\, に移る. また, 状態 \boldsymbol{x_i}\, において位置k\, の客が退去すると, 位置 l>k\, にいた客は位置 l-1 \, に移る. さらに, ノードi\, の状態が \boldsymbol{x_i}\, であるとき, このノードの総サービス率\varphi(m)\, 与えられ, 総サービス率位置kの客に \gamma(m, k)\, 割合配分される. すなわち, 位置k\, の客のサービス率\varphi(m) \gamma(m, k)\, となる. 対称型という言葉は, 到着した客が各位置へ割り付けられる確率とその位置で客が受けるサービス割合比例する点に由来する.


平均応答時間 ケリーネットワークでは,客を種類分け種類ごとに客がサービスを受けるノードの列を前もって決めることができる.この経路選択は客の種類適切に与えると通常のマルコフ経路選択等価であることが証明できるこのように客がサービスを受けるノードの列i_{1}, i_{2}, \ldots, i_{n}前もって与えられ,各ノードでのサービス必要量x_{1}, x_{2}, \ldots, x_{n}である客が到着したという条件の下で,その客の到着から退去までの時間条件付き期待値平均ネットワーク応答時間と呼ぶ.対称型サービスでは,上記の客がk\, 番目のノード到着してから退去するまでの平均応答時間が客のサービス必要量x_{k}比例し平均ネットワーク応答時間x_{1}, x_{2}, \ldots, x_{n}線形和となることが知られている([3]参照).


不感性 対称型サービス規律では,各ノード状態確率サービス時間分布の形とは無関係に,その平均値のみによって定まる.この性質不感性(insensitivity)と呼ばれている.また,局所平衡成り立つネットワーク不感性であることもわかる. 不感性をもつ代表的なシステムの例としては,呼がポアソン過程に従って発生する回線交換網(circuit switching network)が挙げられ呼損率保留時間分布形に関係なく平均値によってのみ定まる


局所平衡 BCMPやケリーネットワーク特徴は,局所平衡(local balance)方程式満たすことにある. これによって,積形式解直接導かれ,また積形式解が大域平衡 (global balance)方程式満足すること(定常分布であること)も容易に証明できるまた,サービス時間分布一般場合は,対称型サービス規律サービス位置区別した最も詳細な局所平衡方程式成り立つための必要十分条件となる.対称型サービス規律はこの局所平衡方式から自然に導かれたと考えられる


 



参考文献

[1] F. Baskett, K. M. Chandy, R. R. Muntz and F. G. Palacios, "Open, Closed, and Mixed Networks of Queues with Different Classes of Customers," Journal of Association for Computing Machinery, 22 (1975), 248-260.

[2] F. P. Kelly, Reversibility and Stochastic Networks, John Wiley & Sons, 1979.

[3] M. Miyazawa, R. Schassberger and V. Schmidt, "On the structure of an insensitive generalized semi-Markov process with reallocation and with point-process input," Advances in Applied Probability (1995), 203-225.

[4] J. Walrand, An Introduction to Queueing Networks, Prentice-Hall, 1988.

[5] 橋田温, 「最近ネットワーク手法」, 『オペレーションズ・リサーチ』, 26 (1981), 205-212.




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「BCMPネットワーク」の関連用語

BCMPネットワークのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



BCMPネットワークのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
日本オペレーションズ・リサーチ学会日本オペレーションズ・リサーチ学会
Copyright (C) 2024 (社)日本オペレーションズ・リサーチ学会 All rights reserved.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS