BB84 protocol: Charles H. Bennett and Gilles Brassard (1984)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/24 09:14 UTC 版)
「量子鍵配送」の記事における「BB84 protocol: Charles H. Bennett and Gilles Brassard (1984)」の解説
このプロトコルは光子の偏光状態を情報伝達に使用するもので、発明者と発表年から取ってBB84と呼ばれる。しかしながら、二つのペアとなる共役状態のものなら何でも代用できる。また、光ファイバーをつかった多くのBB84実装は符号化した位相状態を使用している。送信者(伝統的にはAlice)と受信者(Bob)は量子通信チャンネルと呼ばれる量子状態を伝送する経路で結ばれている。光子の場合は通常光ファイバーか、もしくは単に真空を媒体とする。更に量子通信チャンネルとは別に、従来の伝送経路である無線やインターネットを通して通信する。盗聴者(Eveとする)があらゆる手段で通信に干渉する場合を考えて設計されているため、どちらの経路も安全である必要はない。 BB84プロトコルは情報を非直交状態で暗号化することによって安全性を担保する。量子の不確定性とはこれらの状態が元の状態を変化させてしまうことなく観測することが不可能であるということを意味する(複製不能定理)。お互いに共役な二つの状態を扱うことによってそれぞれのペアがお互いに直交であることを利用する。組となる直交状態は基底と呼ばれる。通常の偏光状態の組は垂直に0°、水平に90°の直線偏光か、45°と135°の対角基底、あるいは右もしくは左まわりの円状基底のいずれかが用いられる。これらの組の中でお互いに共役なものが用いられる。以降の説明では直線基底と対角基底を用いる。 基底01 BB84の最初のステップは量子伝送である。Aliceが無作為なビット(0か1)を生成し、伝送に用いる基底を二つのうちから一つ選択する(この場合直線基底か対角基底)。彼女は更にビットの値と基底の両方に依存する偏光状態を左の表のようにつくりだす。図の例では、0が直線基底において垂直偏光に、1が対角基底で135°の偏光にそれぞれ変換されている。Aliceはこのような偏光状態にある光子を量子通信チャンネルを通してBobへ送る。Aliceは偏光状態、基底、光子が送られたときの時間を記録しながらこのプロセスを繰り返す。 量子力学によれば(部分的には量子の不確定性)それぞれ違った4種類の偏光状態を区別することは4つすべてが直交にない限り不可能である。すなわち、二つの状態が直交である場合にのみ観測が成立する。例えば、直線基底で観測したときに光子の偏光状態は水平か垂直のいずれかである。もしこの光子が垂直か水平か(直線基底として)で生成されていた場合には正しい状態が観測されるが、45°や135°というような対角基底が用いられていた場合に直線基底での観測は垂直か水平の状態が不規則にあらわれる結果となる。更にこの光子は、観測に用いられた基底によって再度偏光され、初期偏光はすべて失われる。 Bobは送られてきた光子がどの基底を用いて偏光されているか分からないので、直線基底か対角基底どちらかを選びながら値を観測するしかない。Bobは光子を受け取った時間、観測に用いた基底とその結果を記録していく。すべての光子の観測を終えたBobは通常のチャンネルでAliceと通信する。Aliceは送った光子をつくるのに用いた基底、Bobは受け取った光子を観測するのに用いた基底をそれぞれ送信する。その後、BobがAliceが用いたのと異なる基底を使用して観測した約半数の値(ビット)を破棄すると、残りのビットが共有鍵となる。 Aliceのランダムなビット0 1 1 0 1 0 0 1 Aliceが用いるランダムな基底 Aliceが送る光子の偏光 Bobが観測に用いるランダムな基底 Bobが観測する光子の偏光 PUBLIC DISCUSSION OF BASIS 共有鍵0 1 0 1 更にAliceとBobは盗聴者の存在を確認するために残ったビット列のうち幾つかのサブセットを比較する。もし第三者(Eve='eavesdropper')が光子の偏光状態に関する情報を得ているとすると、Bobの観測結果に誤差が生じる。仮にp個以上のビットにその誤差が見られた場合、AliceとBobはこの鍵を破棄し、可能なら異なる量子通信チャンネルを使ってより安全な共有鍵の作成を試みる。pの値はEveに知られたビットの数がpよりも少ない場合に漏洩の痕跡のあるビットを適宜捨て、鍵の長さを短くすることによって秘匿性を保てるような値である(秘匿性増幅)。
※この「BB84 protocol: Charles H. Bennett and Gilles Brassard (1984)」の解説は、「量子鍵配送」の解説の一部です。
「BB84 protocol: Charles H. Bennett and Gilles Brassard (1984)」を含む「量子鍵配送」の記事については、「量子鍵配送」の概要を参照ください。
- BB84 protocol: Charles H. Bennett and Gilles Brassardのページへのリンク