Aの家族に身代金要求
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/31 14:52 UTC 版)
「群馬女子高生誘拐殺人事件」の記事における「Aの家族に身代金要求」の解説
殺害・遺棄を終えたSはゲームセンターなどで時間を潰したが、20 - 21時ごろに帰宅して「自分は殺人者になった。もう終わりだ」などと思い詰め「逮捕される前の前妻Yらに会おう。そのために直接児童相談所に乗り込み、職員を人質にとってYらを連れてこさせよう」などと考えた。Sは「そのための武器として拳銃を買うためには最低でも50万円必要だ」と考え、資金としてまとまった金を手に入れる方法に強盗などを思いついたが、良い場所が思いつかなかったため行き詰まった。しかし、Aから奪った携帯電話の存在を思い出したため、その携帯電話を使って娘Aの安否を心配していた両親から身代金を得ることを企てた。 Sは「大金を要求しなければAの両親は警察に届け出ないだろう」と考えて要求額を50万円に決め、同日23時15分ごろ - 翌20日12時ごろまでの間、数回にわたり前橋市内の複数個所からA宅に電話を掛け、応対した両親を「娘はどうなっても良いのか。50万円を用意しろ」「警察には届けるな」などと脅して身代金を要求した(拐取者身の代金取得)。しかしAの両親は群馬県警察に通報し、その指示通りSとの交渉を続けた。 犯人Sからの電話には「金を持ってこなければ(被害者Aを)殺す」など明確に誘拐を示唆する内容がなかった一方、Sは「(Aとは)メル友で面識がある」などと話していたことに加え、要求額も身代金としては少額だった。そのため群馬県警は当初、身代金誘拐事件ではなく単純な恐喝事件・行方不明案件として捜査を開始し、報道協定を申し入れなかったほか、20日に恐喝容疑でSを逮捕した時点でもその事実を発表しなかった。結局、交渉の末に「7月20日10時ごろに身代金23万円を受け渡す」ことになったが、Sは「Aの家族が警察に通報し、警察が見張っているかもしれない」と考え、Aの父親と携帯電話で連絡を取りながら身代金の受け渡し場所を変更した。12時14分ごろ、Sは現金受け渡し場所として指定した佐波郡赤堀町(現:伊勢崎市)内の受け渡し場所で身代金として現金23万円を得た。Sはすぐにその場から逃走したが、約800メートル走った交差点の赤信号で停車したところ、追跡していた覆面パトカー数台に行く手を塞がれて群馬県警の捜査員に取り囲まれ、恐喝容疑で逮捕された。被疑者Sは当初、取り調べに対し「自分以外に5人の仲間がおり、仲間が人質(被害者A)を確保している」などと虚偽の供述をしていたが、群馬県警が7月23日20時ごろにポリグラフ検査を受けたところ共犯がいない可能性が強まったため、さらに追及したところ「自分が(Aを)殺して死体を遺棄した」と自供した。これを受けて群馬県警がSの供述した場所を捜索したところ、供述通りAの遺体が発見されたため、群馬県警捜査一課・大胡警察署は被疑者Sを殺人・死体遺棄容疑で逮捕した。 群馬県警捜査一課は事件当初、本事件を誘拐事件として捜査せず、報道協定を締結しなかった理由として「誘拐現場の目撃情報がなかったことに加え、脅迫電話には被害者Aが出ていなかったことから『被害者Aが拘束されている』という確証がなかったためだ」などと説明した。また県警刑事部長・津久井信次は「発生当時、Sは電話で明確に誘拐を示唆しなかった一方で知り合いを自称していたため、被害者が誘拐されているという確証がなかった。恐喝容疑で逮捕した事実を発表しなかったのはSの『共犯者がいる』という言葉を前提に捜査していたためだ」と、警察庁も「報道協定は『報道の自由』を制限するもので、あくまで特別なものだ。被疑者Sの電話には切迫感がなく、報道協定を締結する必要があったとは言えない」と説明したが、『読売新聞』は「Sの脅迫電話は十数回に及んでおり、金の要求と同時に被害者Aに危害を加えることを示唆する発言もあったため『当初から誘拐事件として扱うべきだった』との見方もある」と報道したほか、『毎日新聞』も大谷昭宏(ジャーナリスト)・土本武司(元最高検察庁検事・帝京大学教授)の意見を引用して「報道協定の申し入れの判断は『被害者の生命の危険性』が最終的な決め手だ。今回は結果的に被害者Aは脅迫電話以前に殺害されていたが、Sは電話で被害者Aの生存・共犯者の存在をほのめかしており、県警はその時点でAへの危害も想定できただろう。警察は今回の判断に誤りがなかったかを検証すべきだ」と指摘した。 群馬県警捜査一課・大胡署は2002年7月25日に被疑者Sを殺人・死体遺棄容疑で前橋地方検察庁へ送検したほか、大胡署に「赤城山中女子高校生殺人・死体遺棄事件捜査本部」を設置して未成年者略取容疑でもSを追及した。その後、2002年8月13日には略取容疑で、9月4日にはSが自供した7月9日の強盗事件に関する強盗容疑でそれぞれ被疑者Sを再逮捕した。 前橋地検は(Sが略取容疑で再逮捕された)2002年8月13日に被疑者Sを殺人罪で前橋地方裁判所へ起訴し、同年9月3日には拐取者身代金取得などの罪で、9月13日には強盗・住居侵入の罪でそれぞれ追起訴した。
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