1975年式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 03:50 UTC 版)
1975年式トリノは幾つかの小改良を除いては、大部分は前年とほぼ同じ形態であった。モデルラインナップの唯一の変更点は、グラン・トリノ・エリートがトリノのラインナップから外れた事である。エリートはこのモデルイヤーから独立車種となり、名称も単にフォード・エリート(en:Ford Elite)として販売されるようになった。1975年式トリノは全てのモデルで信頼性の高いセミ・トランジスタ式点火装置が採用され、始動性と燃費が向上し、整備コストも低廉となった。ラジアルタイヤの標準化も省燃費化に貢献し、パワーステアリングとブレーキブースターも全モデルで標準装備となった。1975年式トリノは新しいデザインのステアリングホイールと、オプションで燃費計として機能する負圧計が設定された事も特徴であった。 1975年式は外装や寸法は殆ど変化しなかったが、唯一特筆すべき点としては、ベースモデルのトリノのグリルとフロントフェイスがグラン・トリノのものと共通化された事が挙げられる。しかし外見の変化はなかったものの、1974年式と比べて重量は増加し続けていた。 連邦大気汚染規制法の改正により、フォードは1975年式トリノを基準適合させる為に三元触媒を採用した。しかし、三元触媒は強い排圧を発生させる為にエンジン出力は大きく減少する事になった。こうした事態に対処する為、フォードは1975年式全モデルの標準エンジンをチャレンジャーV8系351V8に変更し、変速機もクルーズOマチック3速ATのみとする事になった。MTは全て廃止され、エンジン出力も460 cu in (7.5 L)エンジンを除いて1974年式よりも大幅に減少し、重量増加によって燃費も運動性能も低下し続けていた。オプションエンジンは400 cu in (6.6 L)・2バレルV8と460・4バレルV8のみとなり、351・4バレルV8は廃止されてしまった。 ミッドブロックの351 Cleveland(351C)V8エンジンは1974年式を最後に廃止された。代わって新型のミッドブロックV8である351 Modified(351M)V8エンジンがラインナップに加えられた。このエンジンはチャレンジャーV8系の351V8エンジンと共に、351・2バレルエンジンを選択した際に搭載されたものであるが、351Mは400 cu in (6.6 L)向けの背の高いシリンダーブロックを採用し、コネクティングロッドやインテークマニホールド等の多くの部品を351Cエンジンや400エンジンと共有していて、フォード内の生産コストの低減に貢献した。351Wと351Mの間にはかなりの出力性能差があったが、強化された排出ガス規制の為にカリフォルニア州では351Mエンジン搭載車は購入できなかった。 グラン・トリノ・スポーツは実質的には1974年式と殆ど変わらない形態で購入する事が出来た。それは同時に、グラン・トリノ・スポーツは他のグラン・トリノと殆ど差別化が行われないまま継続されていた事も示しており、顧客の関心はもはや殆ど得られない状態であった。結果的に1975年式グラン・トリノ・スポーツは歴代のスポーツモデルで最も不人気な年式となり、5,126台を売り上げるに留まった。 1975年式トリノは1974年式に比較して大きく売り上げを落とした。これは前年式の稼ぎ頭でもあったエリートが独立車種となった事も影響しており、トリノは生産台数の大部分を失う事になった。フォードは1975年に195,110台のトリノを生産したに留まり、1975年式エリートの生産台数123,372台を合わせたとしても318,482台に過ぎず、1974年式から大きく落ち込む結果となった。主要な要因としては、顧客の関心がより小型で経済性の高い車種へと移り、需要もそのような小型車へシフトする傾向があった事が考えられた。フォードはそうした顧客層の新たな指向に合わせて、フォード・グラナダ(en:Ford Granada (North America))を開発しており、トリノの顧客層を大きく侵食しつつあった。グラナダはフォードのコンパクトカーに分類される車種で、フロントフェイスは1974年式グラン・トリノ・エリートを強く意識したものであり、その大きさは1960年代のトリノに近いサイズでもあった。
※この「1975年式」の解説は、「フォード・トリノ」の解説の一部です。
「1975年式」を含む「フォード・トリノ」の記事については、「フォード・トリノ」の概要を参照ください。
- 1975年式のページへのリンク