黒人描写に関する論争・封印
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 03:31 UTC 版)
「南部の唄」の記事における「黒人描写に関する論争・封印」の解説
本作は、黒人の扱いについて大きな論争を巻き起こしている。 初公開時、全米黒人地位向上協会(NAACP)の事務局長であるウォルター・フランシス・ホワイトは、各マスメディアに以下の声明を発表し抗議した。 全米黒人地位向上協会は、『南部の唄』での音楽、生きた俳優と漫画を組み合わせる技法における顕著な芸術的メリットは認めています。しかし、内容が北(アメリカ)と南(アメリカ)両方の観客を怒らせないように努めたことで、この作品は危険なほど美化された奴隷制のイメージを永続させるのに役立つこととなり残念に思います。美しいリーマスじいやの民話を利用し、残念ながら『南部の唄』は事実の歪曲である(奴隷との関係が)牧歌的な主従関係であった印象を後世に与えてしまいます。 — ウォルター・フランシス・ホワイト ただし、ホワイトは声明発表時点で映画を見ておらず、実際はプレ上映に出席したNAACPのノーマ・ジェンセンとホープ・スピンガーンから受け取ったメモに基づき発表している。 ディズニーは公開前、「(原作の)ハリスの本のように、映画の舞台は南北戦争後であり、映画のすべてのアフリカ系アメリカ人のキャラクターは奴隷ではない」と述べている。これを聞いたヘイズ・コード事務所はディズニー側に、その証明のため本編内に日付を書くなど舞台が(南北戦争後の)1870年代と明らかに分かる描写を入れることを求めたものの、公開された映画にはそのような場面は無かった。そして、上記の声明から舞台が「南北戦争前の奴隷制が続く南部」と誤解され、「当時は黒人と白人が対等に交流することは有り得ず、設定が現実とあまりにもかけ離れ歴史的事実から逃避している」と批判されるようになり、ニューヨーク・タイムズなどの報道でこの件は広まった。 封切りイベントはジョージア州アトランタで開かれたが、主な白人俳優は勢揃いする一方、主演のジェームズ・バスケットは黒人であったため参加できなかった。 1947年4月2日には、抗議グループがカリフォルニア州の劇場周辺を「奴隷制ではなく民主主義に関する映画が欲しい」「子供たちに偏見を伝えるな」と書かれた看板を掲げ行進した。 また、他にも黒人キャラクターの従順な地位や衣装、誇張された方言、古風な描写など、ステレオタイプなイメージを強化してしまうという批判がされた。
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