初公開時
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佐藤監督は完成の遅れで試写会が開催できなかったと話していたが、僅かながら試写会は行われた。荻昌弘は「『新幹線大爆破』は、いまの邦画水準で、よく作られた娯楽作品だと認めていい。乗客が烏合の衆にさせられている類型描写とか、衝けば弱点は指摘できるが、国鉄不協力のなか、これだけ周密に一つのメカニズムの機構と機能にアプローチして劇の濃度を高めるとは、作り手の気力と根性の密度以外のものではない。ここにはあの『警視庁物語』の東映の伝統、以上に一編に賭ける誠意がある。脚本と演出は、管理体制から疎外された犯人像の設定に無声時代劇以来の暗い日本映画の心性が生きており、これが終盤に大写しにされる政府・国鉄の冷血なエゴイズムと対応して、作品を重く沈ませたのが一家言である。『東京湾炎上』はせっかくの発想を映像に活かしたとはいいかねる...後味いいとはいいかねる力作二本ながら、後味の悪さの質は違う二本であった」などと評している。 『週刊明星』1975年7月27日号の作品評。大黒東洋士は「面白かった。『天国と地獄』みたいな迫力を感じた」、深沢哲也「話の手口は『ジャガーノート』に似てるが、最近の日本映画じゃいい方です」、穂積純太郎「ちゃちな感じがなくて、予想以上の出来ばえです。しかし2時間半は長い」、深沢「犯人たちの家庭状況などを同情的に描いたりは余計。高倉を悪役に徹し切らせればよかった」、穂積「高倉の犯人役は成功だが、従来の彼のイメージにこだわったきらいがある」、大黒「総体に役者はいいね。ことに宇津井健は適役」、深沢「彼は日本のグレゴリー・ペックですからね。まじめ一点の役をやると実にいい。僕も高倉と宇津井の両"健"を買います。この作品の一番の欠点は、乗客描写が陳腐なこと。『駅馬車』以来パターン化している妊婦のお産騒ぎがあったり、恐怖で気の狂う男が出て来たり。頭のいいのは『ポセイドン・アドベンチャー』ですね。ダッーと大勢殺して生き残った何名かだけを描き分ければいいですから」、穂積「この映画がドラマとして面白くなるのは高倉が金を受け取ってからですね」、深沢「喫茶店が火事になるのはやり過ぎ」、大黒「偶然性がお粗末すぎで、あそこは試写室でも失笑を買いました」、穂積「よく出来ているだけに欠点も目立ちますが、日本映画の健闘を祝しましょう」などと高評価を与えた。 『映画芸術』1975年10~11月号は「あらゆる可能性あるデータを集めてスリルを次々と構築し、密度が高くて、飽きることないばかりか現実政治に対する誠実さの警告や思想がある。『ポルノの帝王』などを書いていた小野竜之助の脚本も持ち上げるべきである」などと評している。
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