駅周辺整備と旧駅舎の保存議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 07:39 UTC 版)
「直方駅」の記事における「駅周辺整備と旧駅舎の保存議論」の解説
2011年に解体された旧駅本屋は明治時代に建築されたものである。木造駅舎でネオ・バロック様式の駅舎としては供用停止時点で九州最古であった。正面の車寄せには古代ギリシャ建築で用いられるエンタシス風の柱が立つ構造だった。 2006年、直方市が計画している駅周辺整備事業構想の中で駅舎の建て替え計画が浮上した。のち、市が2009年に策定した「中心市街地活性化基本計画」にもとづいて駅を中心とする約105ヘクタールを2010年から整備することとなった。このうち駅舎の改築についてはJR九州が、駅前ロータリーなどを市が事業化することとなり、駅舎については前記の通り、2011年4月29日に完成式典が行われ供用を開始した。 一方、旧駅舎は歴史的価値があるとされることから、建て替え計画当初より市民有志により保存が提唱されていた。2011年1月から直方文化遺産研究会が行った署名活動に対して1万7千人あまりの賛同があり市に提出されたが、これに対しても市は、文化財的価値について調査ののち施設の一部を残し解体するとした既定方針を堅持している。最終的に旧駅舎は2011年10月に解体された。 この駅舎は、初代の博多駅を移築したものであるという説があったが、直方市が島根大学総合理工学部の専門家に依頼して建築形式などを後世に残す目的で調査した結果では、明治期の資料に「新築」とあること、初代博多駅舎は吉塚駅に移築したという記録があること、木材の再利用の痕跡が見られなかったことなどから、博多駅舎を移築したものであるという説を否定した。 これに対し、「文化的価値を考慮せずに解体したのは文化財保護法などに違反し、違法」として市民8人が市長を相手取った解体費用9000万円の返還請求を福岡地方裁判所に提訴した。福岡地裁は2013年11月26日の判決で、旧駅舎が初代博多駅の移築であるという原告側の主張を退けながらも「相応の歴史的価値や一定の芸術性がある」と認定したが、市側が保存の検討など最低限の努力義務は果たしたとして、原告側の請求を棄却した。 旧駅舎の一部部材は市で保管されイベント広場に旧駅舎車寄せが移築復元されることになり、約250平方メートルの直方駅前公園が整備されてその中に復元が行われた。幅約5.5メートル、奥行き約4.5メートルで、公園のあずまやを兼ねている。
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