餌用・食用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 03:46 UTC 版)
絹を取った後の蛹は熱で死んでいるが、日本の養蚕農家の多くは、鯉、鶏、豚などの飼料として利用した。現在でもそのままの形、もしくはさなぎ粉と呼ばれる粉末にして、魚の餌や釣り餌にすることが多い。 また、貴重なタンパク源として人の食用にされる例は多い。90年余り前の調査によると、日本の長野県や群馬県の一部では「どきょ」などと呼び、佃煮にして食用にしていたと報告されている[要出典]。太平洋戦争中には、長野県内の製糸工場において、従業員の副食として魚肉類の代わりに提供された。最初は特有の臭いもあって、なかなか手の出なかった従業員達も、貴重なタンパク源として競って食すようになり、しばらくして数に制限が加えられたという。 現在でも、長野県ではスーパー等で蚕蛹佃煮として売られている。伊那地方では産卵後のメス成虫を「まゆこ」と呼び、これも佃煮にする。朝鮮半島では蚕の蛹の佃煮を「ポンテギ」と呼び、露天商が売るほか、缶詰でも売られている。中国では山東省、広東省、東北地方などで「蚕蛹」(ツァンヨン、cānyǒng)と呼んで素揚げ、煮付け、炒め物などにして食べる。ベトナムでは「nhộng tằm」(ニョンタム)と呼んで、煮付けにすることが多い。タイ王国でも、北部や北東部では素揚げにして食べる。 日本企業のエリー(東京都中野区)は2020年1月、カイコと牛肉を半々使ったハンバーガー店を開業した。 ヒトに有用な栄養素を多く含み、飼育しやすく、蛹の段階では内臓に糞が詰まっていないことから、長期滞在する宇宙ステーションでの食料としての利用も研究されており、粉末状にした上でクッキーに混ぜて焼き上げる、一度冷凍したものを半解凍する、などの方法が提案されている。今では言われなければわからないほど自然な形に加工できるようになっている。また、蛹の脂肪分を絞り出したものを蛹油と呼ぶ。かつては食用油や、石鹸の原料として利用された。現在では主に養殖魚の餌として利用される。 他に、爬虫類や両生類など昆虫食動物を飼育する際の餌として生きた幼虫を用いる。その分野では「シルクワーム」の名で呼ばれる。ミールワームやコオロギなどより栄養価が高く、また水分の多い素材として重視される。
※この「餌用・食用」の解説は、「カイコ」の解説の一部です。
「餌用・食用」を含む「カイコ」の記事については、「カイコ」の概要を参照ください。
- 餌用・食用のページへのリンク