食料のバイオ燃料への転用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/19 05:41 UTC 版)
「2007年-2008年の世界食料価格危機」の記事における「食料のバイオ燃料への転用」の解説
食料価格高騰のある合理的な説明は穀物(特にトウモロコシ)をバイオ燃料に利用していることによるというものである。毎年1億トンの穀物が食料から燃料に姿を変えていると予想されている(2007年の世界の穀物生産量は約20億トンである)。農家が前の年に比べ燃料になる穀物を生産するのに熱心になるのに従い、食料が生産できる土地と資源はその分だけ減少した。このことは食費が非常に限定されている開発途上国及び後発開発途上国が購入可能な食料の減少を招いた。この危機は例えば普通の自動車の燃料タンクをバイオ燃料で満たすこととアフリカの人が1年間に食べるトウモロコシが同じ量であるということが示唆するように、ある意味において豊かな国と貧しい国を二分しているように見える。 2007年の暮れ、トウモロコシがバイオ燃料へ利用されることが増加し、トウモロコシの価格はトレーダーによって原油価格と関連付けられ、結果としてトウモロコシの価格が上昇する「アグフレーション」が起こったが、それは他の代替穀物の価格の上昇、(最初は小麦と大豆、続いてコメ、大豆油と種々の調理油の価格上昇)ももたらした。 米国に次ぐ世界第2位のエタノール生産国であるブラジルは、世界で初めて持続可能なバイオ燃料経済について考え始めた国であるが、ブラジル政府はエタノール産業に基盤を置くブラジルのサトウキビは2008年の世界食料価格危機には何ら影響を及ぼしていないと主張している。 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は食料価格の高騰は農業政策の拙さと開発途上国における食生活の変化が原因であり、一部の評論家が唱えているようなバイオ燃料によるものではないと述べた。2008年4月29日、米国のジョージ・W・ブッシュ大統領は記者会見で「世界の食料危機の85%は気候変動と、需要増加、エネルギー価格のせいだ」と述べ、「残りの15%はエタノールのせいだ」と認めた。2008年7月4日、ガーディアン紙はバイオ燃料によって食料価格が75%上昇しているという世界銀行の推測を報じた。 セルロース・エタノールや藻類燃料のような第2世代、第3世代のバイオ燃料なら将来この問題を解決できるかもしれない。しかし、それらのバイオ燃料の実用化にはより進んだ農業技術の開発が必要とされるのに対して、トウモロコシから燃料を作る技術は熟成されており、また素早く作ることができる。
※この「食料のバイオ燃料への転用」の解説は、「2007年-2008年の世界食料価格危機」の解説の一部です。
「食料のバイオ燃料への転用」を含む「2007年-2008年の世界食料価格危機」の記事については、「2007年-2008年の世界食料価格危機」の概要を参照ください。
- 食料のバイオ燃料への転用のページへのリンク