間接的な歴史的背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 09:20 UTC 版)
「不確かさ (測定)」の記事における「間接的な歴史的背景」の解説
ウルグアイラウンドなどの貿易協定で、科学技術や工業技術上の非関税障壁の撤廃が目指されたが、国ごとに測定用語の意味が異なったり、測定値の信頼性が異なるままでは不都合であるとされた理由には諸説ある。 まず、国ごとに測定用語の意味や、測定の信頼性が異なると、貿易上で不都合という理由がある。例えば国同士が石油や天然ガスの取引をする場合でも、あるいは食料品や鉱物資源の取引をする場合でも、取引物の重さや体積を測定する方法や評価方法は、各国で共通化する必要がある。だから自由貿易協定などの国際条約による貿易の自由化のためには、前提として、計量行政の国際共通化が必要になった。 科学研究などでも、国際的な共同研究をする場合には、各国が計量行政を共通化する必要があった。 また、工業規格の国際共通化として ISO 規格があるが、その国際規格を運用する上でも、計量行政の国際共通化が必要である。 このような理由から計量行政の国際共通化が必要になり、その上で測定用語の意味の見直しも行われた。この際に「誤差」などの用語の意味の再検討も行われ、代わりに、より実証的な概念を目指し「不確かさ」という用語が定義された。 計量行政の運用上に、なぜトレーサビリティ制度が関わってくるのかというと、これは品質保証分野でのトレーサビリティの考え方の起源に関わってくる。今日の品質保証分野でのトレーサビリティの起源には諸説あるが、アメリカ合衆国でのアポロ計画がトレーサビリティの概念の普及に大きな影響を与えた、という説が有力であるとされる。アポロ計画は、アメリカの国家事業であるし、宇宙空間という苛酷な条件下で、打ち上げなどに莫大な予算を使うことからことから、部品や機器の信頼性を保証するための何らかの仕組みが必要であった。また部品や機器の信頼性を保証する仕組みが業界ごとに異なっていると不都合であった。宇宙計画には膨大な業界が開発に関わるので、業界ごとに信頼性保証の仕組みが異なっていては不都合なのである。 このため、業界が異なっていても信頼性の評価方法を共通化する仕組みが必要であり、そのためには評価方法の共通化が必要であった。また、部品には工程に多くの企業が関わっているので、どの部品にどの企業がどの順序で関わったのかという履歴を追うための仕組みが必要であり、これがトレーサビリティ制度のきっかけになった。 このトレーサビリティの仕組みを開発する際、測定器なども宇宙開発に必要な部品に含まれるので、どの業界でも、たとえば機械業界や化学業界など、たとえ業界が異なっていても、共通して測定値の信頼性を評価できる仕組みが必要であった。そのため、特定の業界には依存しない形で、測定の用語や精度保証の仕組みを再設計する必要があった。 誤解ないように言うが、アポロ計画以前に、異なる業界間で技術や評価方法を共通化する仕組みが無かった訳ではなく、工業規格などの共通化の仕組みは存在していたし、測定値の信頼性を評価する仕組みもあった。そもそも工業規格とは、そのように技術や評価方法を共通化することで工業を発展させるものである。また、測定は工業規格でも基礎的な分野である。だが、アポロ計画の始めごろの規格や運用では、業界ごとの共通化が不十分であり、更なる改善が必要になったということである。
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