重量と運動性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 01:44 UTC 版)
14世紀に登場して以降の発達の歴史に於いて、耐久力を増すために装甲部分が増加され、必然的に重量は増加したものの、十分に着て戦えるバランス配分がされている。鎧は種類にも拠るが、重量は数十キログラムにも及び、鎧だけでも20~30kg、兜や武器を含めると35kgを超えた。前述の通り、金属加工技術の発達により軽量化した物は20kg以内に抑えられた。徒歩で使用することを前提としたものでは、鎖帷子などの付属物を含めると平均して30 - 40kg程度であったとされる。ただ全身に均一に装甲されることから、訓練された騎士であれば十分な運動性を発揮でき、馬に跳び乗ることもできたという。ただ、着用者の持久力は多少犠牲になる。重量よりも問題なのはプレートアーマーは熱を溜め込みやすいことで、兜を着けると熱が頭にこもって熱中症の原因にもなり得る。また、動くとカチャカチャと金属音が響くので身を隠すのには向かない。このほか体の動きが制限されることなども影響して、甲冑と同じ重量を運搬する場合に比べカロリー消費量換算では2倍を超える上に、胸への重量負担や締め付けが呼吸を妨げより疲労しやすくなるとする報告も上がっている。 後に発生したプレートアーマーの過剰な重量化の一端には、戦乱期の終息と共に盛んになっていった馬上槍試合用の防具(一種のスポーツ用プロテクター)としての発達もある。馬上槍試合では相互に木製の槍による突打を行い、落馬したものが負けとなるが、この突打は幾ら衝突に際して砕け散ることで衝撃を緩和させる木製の槍とはいえ、生身で受ければ競技者に致命傷を負わせる。このため打撃を受ける盾や肩には強固な装甲が施され、また首周りも予期せぬ打撃で負傷しないよう可動部が簡略化され、首を動かすことはできなかった。馬上試合では前方のみ見えていれば事足りるためでもあるが、これらは関節の自由度も低く、落馬すれば文字通り「自力で動くことができない」ものも存在する。 しばしば西洋甲冑は「重くなりすぎ戦場で転倒したら起き上がれない」や「落馬すると自力で鞍に乗れない」と言われることもあるが、この誤解はトーナメント・アーマーと戦争に用いられた「実戦的なもの」とを混同したことによる。後者の戦闘用アーマーは関節の動きはほとんど制限されず、状態が悪くない限り滑らかに動くので運動の支障はほぼない。イタリアのフィオレ・ディ・リベリ(Fiore di Liberi)が記した剣術指南書には、甲冑を着たまま泳ぐ方法や、同じく甲冑を着たまま宙返りをする兵士の姿が描かれている。ただ甲冑を着た騎士を転ばせることは、これら甲冑に付き物の狭い視界や装備重量の関係で必ずしも無効だとはいえず、歩兵装備としてはこういった騎士を馬上から引き摺り下ろしたり集団で群がって打ち倒すための武器も見られる(後述)。 また甲冑を着込んでの格闘戦は強力で、特に手甲にメリケンサックやスパイクなど格闘戦用の装備を備えるものも作られている。
※この「重量と運動性」の解説は、「プレートアーマー」の解説の一部です。
「重量と運動性」を含む「プレートアーマー」の記事については、「プレートアーマー」の概要を参照ください。
- 重量と運動性のページへのリンク