進化的戦術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 15:49 UTC 版)
アナキストは一般的に直接行動をとる。不当なヒエラルキーに抗議したり、コミューンなどの非階層的反体制集団を作ることにより、生活を自己管理するという形をとる。多くの場合、意思決定はオリゾンタリダ(英語版)として知られる反権威主義的な方法で行われ、誰もがそれぞれの意思決定において平等な発言権を持つ。現代のアナキストは、様々な草の根運動(明示的にアナキストという訳ではない)に関わっており、多かれ少なかれオリゾンタリダに基づいて個人の自律性を尊重し、ストライキやデモなどの大衆活動に参加している。古典期の「ビッグ・ア・アナキズム」とは対照的な「スモール・ア・アナアキズム」という新たな造語は、古典的アナキズムをベースにしたり、クロポトキンやプルードンを参考にして自分の意見を正当化したりはしない傾向を示している。むしろ彼らは、後に理論化されるであろう自身の経験に基づいた思考と実践を行っているのである。 アナキストの小規模なアフィニティ・グループにおける意思決定プロセスは、戦術的に重要な役割を果たしている。アナキストは、指導者や指導的グループを必要とせずに、グループのメンバー間での大まかな合意を形成するために、様々な方法を採用してきた。一つの方法は、グループの個人がまとめ役を担い、自ら議論に参加したりせず、特定の点を推進したりもすることなく、合意形成のための手助けをすることである。少数派は通常、提案がアナキストの目標、価値観、あるいは倫理観と矛盾していると感じる場合を除き、大まかな合意を受け入れる。アナキストは通常、自律性とメンバー間の友情を強化するために小規模なグループ(5人から20人程度)を形成する。このような種類のグループは、より大規模なネットワークを形成し、相互に接続し合うことが多い。アナキストは現在でもストライキに参加しており、特に、組合を中心に組織されず指導者がいないストライキであるワイルドキャット・ストライキ(英語版)を支持している。 アナキストは、メッセージを広めるために活動の場をオンラインに移した。かつてのように新聞や雑誌も使われていたが、流通やその他の不便さから、アナキストはウェブサイトを作成したり、電子図書館やその他のポータルを主催するようになった。また、アナキストたちは、無料で利用できる様々なソフトウェアの開発にも携わっていた。これらのハクティビストが開発や配布に取り組む方法、特に国家の監視からユーザーのプライバシーを守るという点はアナキストの理想と類似している。 アナキストは自らを組織し、公共空間を屯し埋め尽くす。抗議活動のような重要なイベントが行われ空間が占拠されている際、それは一時的自治区(英語版)(TAZ)とよく呼ばれ、シュルレアリスムや詩、アートが融合してアナキストの理想を示す空間となる。屯するのは資本主義の市場たる都市空間を取り戻すための方法であり、実利的需要に応える模範的な直接行動であるとアナキストは考えている。空間を確保することで、アナキストは自分たちのアイデアを実験し社会的な絆を構築することができる。すべてのアナキストがそれらに対して同じ態度を共有している訳ではないが、非常に象徴的なイベントでの様々な形態の抗議活動が、これらの戦術に加えて現代のアナキズムを明瞭なものにしているカーニバレスク(英語版)な雰囲気を形成している。
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