進化的多様性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 02:35 UTC 版)
大半の顎を持つ脊椎動物における上顎の口腔の縁の形成では、より原始的な形態においてのみ前上顎骨が中心部を構成する。ハリセンボンにおいては癒合し、チョウザメ科といった硬骨魚類軟質亜綱では失われている。 非哺乳類型獣弓類や爬虫類では、対をなす巨大な膜内骨が前上顎骨の後方に存在し、septomaxilla と呼ばれる。白亜紀の真獣下綱であるアクリスタテリウムでは痕跡器官となっているため、アクリスタテリウムは知られている中では最古の獣亜綱の哺乳類と考えられている。単孔目では septomaxilla が残っていることが確認されている。コウモリでは、前上顎骨の大きさや組成の違いから分類が行われている。 鳥類の嘴は非鳥類型恐竜の持つ前上顎骨に起源を持つとされる。獣脚類の前上顎骨は左右一対の骨が前方に突き出しており、鳥類への進化の過程でこれらが癒合して嘴の形成に至ったと考えられている。2015年に発表されたニワトリ・エミュー・ワニ・カメの胚の研究では、胚発生における線維芽細胞増殖因子とWntシグナル経路の働き方が鳥類と爬虫類で異なることが提唱されている。具体的には、爬虫類ではこれらのタンパク質は顔への分化が予定されている2つの領域のみで発現する一方、鳥類ではより広範な領域で発現していることが示されている。さらにニワトリの胚でこれらタンパク質の作用を阻害したところ、嘴ではなく前上顎骨状の骨が形成された。これらのことから、胚発生に関与するタンパク質の発現領域の変化が前上顎骨から嘴への進化を促したことが示唆される。
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