進化的考察
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 00:33 UTC 版)
原核生物にも単純なつくりをしたコンデンシン複合体が存在することから、コンデンシンの進化的起源はヒストンのそれよりも古いことになる。また、コンデンシン I とコンデンシン II の両者が現存する真核生物に広く保存されていることは、真核生物の最後の共通祖先(last eukaryotic common ancestor: LECA)が既に2つのコンデンシン複合体を有していたことを示唆する。一部の生物種(酵母等)では進化の過程でコンデンシン II が失われたと考えるのが妥当である。 では、なぜ多くの真核細胞には2つのコンデンシン複合体が存在するのであろう。上記のように、体細胞分裂に対する2つのコンデンシンの貢献の重みは種によって異なる。哺乳類では両者が同程度の重みをもっているものの、多くの生物種ではコンデンシン I がより重要な役割を果たしている。そうした種では、コンデンシン II は(体細胞分裂への関与が軽減され)他の様々な染色体機能に関わることが可能になったのではないかと考えられる。コンデンシン II の保持とゲノムサイズに見かけ上の相関はないが、ゲノムの巨大化に伴ってコンデンシン II の重要性が増しているようにも見える。また、Hi-C技術を駆使した最新の研究では、コンデンシン II の機能と間期クロマチンの組織化の型(テリトリー型とRabl型)の関連が進化の視点から議論されている。一方、初期胚と体細胞の間でもコンデンシン I と II の重みは変化しており、分裂期染色体の形状の違いにも影響を与えている。このように、2つのコンデンシンの発現と機能のバランスは、真核生物の進化や発生の過程において大きく変化するとともに精妙に制御されているらしい。LECAが2つのコンデンシンを有していたことが、その後の染色体構造と機能の進化に大きな可能性と可塑性を生み出したのではないかと推測することができる。
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