送電線によるテレビ・FM放送の受信障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 14:31 UTC 版)
「電波障害」の記事における「送電線によるテレビ・FM放送の受信障害」の解説
送電線による受信障害は、VHFやFM放送に多く見られ、直進性の強いUHFではあまり見られない。上記の建築物(鉄塔など)による電波散乱・乱反射のほかに、電気的な障害も加わるため、画像がゴースト等でぶれる他に、周期的、または常時画像にノイズが入り乱れる、音声がおかしくなる等の症状が発生する。 対策としては、近隣にVHFと同じ放送をしているUHF中継局(たとえ電波が弱いものであっても)があれば、UHFアンテナ(+ブースター)の受信設備を追加して対応する。例えば1978年に埼玉県北西部(埼玉県本庄市、上里町等全域)で行われた超高圧送電線敷設に伴うアンテナ切り替え工事(費用は東京電力負担)が大規模なもののひとつとして挙げられる。当該地域ではテレビ放送開始当初から東京タワー(VHF)を受信していたが、この工事により榛名山の前橋中継局(UHF)を受信するようになった。 また、受信できるUHF中継局が無い場合、難視聴対策型共聴設備やケーブルテレビが敷設される。UHF中継局を受信し、周波数変換器でVHFに変換(広範囲にケーブルを敷設する場合は、減衰率が高いUHFでは末端まで電波が届かないため、VHFに変換する必要がある)し配信するタイプ、または直接山頂でVHFを受信するものなどがある。各家までケーブルを引き込み、保安器を境に敷設責任を分担するのが通常である。 上記2つの解決策が取れない場合、最後の手段として電波障害対策型VHFアンテナで対応する場合もある。通常のVHFアンテナと比較し、反射器が上下方向に広く取られており、ゴースト障害に強いとされるが、根本的な解決策ではないため、障害が除去しきれない場合がある。 地上デジタル放送においては、UHF波を使用しており直進性が強く送電線障害に強いこと、またデジタル放送の規格自体が障害に強いとしており、送電線障害は発生しにくいとされている。障害対応は発生した場合対策は個別に行うこととし、アナログ放送終了時には、送電線障害で設置された難視聴共聴設備やケーブルテレビは終了し撤去するとしている場合が多い。なお、通常の電線の碍子などの電気配線の絶縁が、雨水等で濡れたり乾燥を繰り返し劣化したり、強風で強く揺れる場合はメダカノイズが画面に現れる場合がある。これはVHFのみならず、UHFでも起き得る現象である。この場合の解決策は原因を特定し、原因そのものを除去するしか方法がない。 FM放送の送電線障害では、多素子の八木・宇田アンテナを設置しても、利得はあるにもかかわらず受信音質がレコードの擦り切れたような音(音の大きさに比例しジャリジャリという雑音が混ざる)になり、聴取に耐えない音質になってしまう。モノラル受信にすればほんの少しは改善されるが、すこし軽減される程度。なお、理由は不明であるが、FMダイバーシティ受信回路があるカーステレオでは比較的この障害には強く、自宅屋根上にFM八木・宇田アンテナを上げても障害がひどいのに、カーステレオでは障害が軽減されて障害が少ない、というケースがある。
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