車軸・車輪折損対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 22:31 UTC 版)
「国鉄キハ07形気動車」の記事における「車軸・車輪折損対策」の解説
キハ42000形グループ戦前型の装備するTR29形台車の車輪は、駆動輪も含め、戦前はごく一般的であったスポーク式車輪であった。 ガソリン動車時代はGMH17エンジンのトルクが低かったこと(および、それ以外のトラブルが遙かに多かったこと)もあってさほど問題にはならなかったが、それでも駆動輪のスポーク折損は時折発生していた。戦後、ガソリンエンジンよりもトルクの強いディーゼルエンジンへの換装が始まった1951年頃から、42500形では駆動輪のスポークが折損、またはひびの入る事故が続発するようになった(これは兄弟形式である41000形グループでも同様に発生した)。1955年9月14日には、相模線でキハ41300形41314がスポーク折損に伴って脱線転覆に至る重大事故も起きている。 キハ42500形の車軸・車輪回り事故件数年 度車軸折損又は入疵車輪折損又は入疵1953 17 25 1954 13 6 1955 10 3 ※1955年度は同年9月末までの数値。 スポーク車輪の破損を防止する最も単純な対策は、スポーク車輪自体を廃してより強度に勝る円盤状のプレート車輪に変更することであり、戦後製造の42600番台グループは駆動輪が最初からプレート車輪仕様とされ、戦前形も駆動輪交換が順次進められた。 しかし、破損は車輪のみならず、車軸にも及んだ(戦後製の42600番台も例外でなかった)。車輪や車軸の補強改良が進んだが、それでも問題の根治には至らなかった。 国鉄の中・大型機械式ディーゼル動車で続発したこれらの部材疲労による破損問題に対し、1954年末から鉄道技術研究所が対策目的の測定を行った。当初はディーゼル機関の不釣り合い振動やねじり振動に起因するトルク変動が原因と思われたが、精密な測定で導き出された事実は異なっていた。列車の発進時に、車輪とレールとの間で滑りと粘着が繰り返される際、車軸の自励的なねじり振動が発生し、その応力が極度に過大であった故に、車軸やスポークの破壊を招いていたのである。 対策であるが、ねじり振動に耐えられるほどに車軸を太くするとおよそ実用的でない太さになってしまうことがわかった。そこで問題の根治策として、エンジン・クラッチの制御系改良が図られた。この改良は次のようなものであった。 ディーゼルエンジンの調速ガバナについて、従来標準装備だったが変速操作時の過回転をきたしやすい機械式ガバナに代わり、全回転域で燃料噴射の安定制御ができる真空式ガバナへ変更。 クラッチ動作はもともと空気圧シリンダによる遠隔式であるが、シリンダに空気溜めを追加してクラッチ作動の速度を緩和。 以上の対策で、車軸自励によるねじり振動発生はようやく抑制に至った 。 なお、1952年製造のキハ42500形同型車で同様なトラブルに悩まされた夕張鉄道キハ200形の場合は、駆動系部品の相次ぐ強化の末、1957年にエンジンと変速機の間に流体継手を装備するトルク変動緩和策で問題を解決している。
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