身口意三業三昧耶戒
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この戒律は『大日経』に説く、密教の「十善戒」が発展して出来た戒律である。チベット密教ではニンマ派によって伝承され、『ゾクチェン』に関係する教えや法の際に、『身口意灌頂』と呼ばれる「四灌頂」の儀式においてのみ授けられる戒律とされる。ニンマ派の「口伝」によると、この戒律と灌頂はグル・パドマサンバヴァ(蓮華生大師)によって直接チベットへと伝えられたものである。ただし、現在では『ゾクチェン』の教えと共に、カギュ派やサキャ派、中国密教にも伝えられ、今も伝承されている。 数ある三昧耶戒の中で、最も無上瑜伽タントラの特色を表している戒律であり、伝授の際には師僧(根本ラマ;ツァエラマ)から特に慎重に解説と「口伝」を受ける必要がある。また、その際における「口伝」はニンマ派でも参加人数を限定した高度な内容を伴うものであり、その教えを中断してはならないとされている。『身口意三業三昧耶戒』の内容は以下のようになる。 『身口意三業三昧耶戒』「根本三昧耶戒」(身口意二十七根本三昧耶戒)身業戒(身体による行いに関する戒) 外三昧耶戒殺してはならない。 「不殺生」 盗んではならない。 「不偸盗」 僧侶の場合;性交渉をしてはならない、「不淫」。 在家の場合;不倫をしてはならない、「不邪淫」。 内三昧耶戒父母を誹謗したり、金剛兄弟(兄弟弟子)を殺したり、自殺をしてはならない。 仏法と「プトガラ」(pudgala:仏種)を否定してはならない。 自らの体を傷つけたり、無理な苦行をしてはならない。 秘密三昧耶戒金剛兄弟を殴ろうと思ったり、衣服を汚したり、傷つけてはならない。 金剛兄弟を殴ったり、根本ラマや明妃に暴力をふるってはならない。 根本ラマの影を踏んだり、放逸な行為をしてはならない。 口業戒(言葉による行いに関する戒) 外三昧耶戒嘘をついてはならない。 「不妄語」・「不綺語」 二枚舌を使ってはならない。 「不両舌」 悪口をいってはならない。 「不悪口」 内三昧耶戒説法者を誹謗してはならない。 思索者(哲学者)や仏教学者を誹謗してはならない。 実践する人(布教者)や修行者を誹謗してはならない。 秘密三昧耶戒金剛兄弟の言葉(指導や忠告)に従わなければならない。 根本ラマや明妃の言葉に従い、敬語を使わなければならない。 根本ラマの教えをよく聞き、理解しなければならない。 意業戒(心による働きに関する戒) 外三昧耶戒怒りに任せて、他を害してはならない。 「不瞋恚」 物惜しみや、貪りの心を起こしてはならない。「不慳貪」 邪まな見方をしてはならない。 「不邪見」 内三昧耶戒邪まな思いや行いを、そのままにしてはならない。 邪まな修行や行為への思いを、増長し、隠し、実現させようと思ってはならない。 邪見に執着したり、常に考えたりしてはならない。 秘密三昧耶戒毎日三回、毎座(毎回)修行を怠ってはならない。 毎日、毎座ごとに本尊の修法を行なわなければならない。 毎日、毎座ごとにグル・ヨガを修し、金剛兄弟の世話をしなければならない。 「支分三昧耶戒」(五欲金剛二十五種三昧耶戒)五所行(ごしょぎょう) 殺・盗・淫・妄語・悪口 五不断(ごふだん) 貪・瞋・痴・慢・嫉 五忍取(ごにんしゅ) 大香・水香・大血・大肉・菩提 五所知(ごしょち) 五蘊・五大種・五境・五根・五色 五所修(ごしょしゅう) 仏部・金剛部・宝生部・蓮華部・羯磨部
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