賃借権の物権化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 16:45 UTC 版)
かつては賃貸人が賃貸借の目的物を譲渡した場合、賃借人は(後述の対抗要件を有しない限り)新所有者に対して賃借権を対抗できないとされ、新所有者が賃借権を承認しないときは、賃貸借契約は終了するとされていた。これがローマ法以来「売買は賃貸借を破る」の法格言によって表されてきた原則である。 しかし、所有と利用の分離が進む現代社会において、賃貸借の中でも特に土地(宅地や農地)や建物の賃借権については国民の生活基盤となるものであるが、民法の借主の権利保護は十分とはいえず、借主は土地や建物に投下した資本や労力を回収できないままに追い出される立場に置かれるという問題を生じた。そのため、日本ではヨーロッパと同じく借主保護立法が重ねられ、宅地・建物については建物保護に関する法律、借地法、借家法及びそれらを一本化した借地借家法が制定され、また、農地については農地法など特別法による強化が図られ、その結果、賃貸借には物権に類似した効力が与えられるようになった。これを賃借権の物権化あるいは債権の物権化という。具体的には、借地権の存続期間、借地契約の更新、借地権や借家権の対抗力などを中心とする。 従来、賃借人が借地上の不法占拠者などを排除しようとする場合、債権者代位権(423条)を流用して、賃貸人の所有権に基づく物権的妨害排除請求権を、賃借人が代位行使するという法律構成がとられてきた。しかし、判例は、対抗力のある不動産賃借権については、賃借権の物権化を理由として、賃借権に基づく妨害排除請求権も認める方向にあった(最判昭和30年4月5日民集9巻4号431頁)。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)は対抗要件を備えた不動産賃借権に基づく賃借人の妨害排除請求権や返還請求権を明文化した。 一方、アメリカ合衆国やオーストラリアではむしろ貸主保護に傾いているといわれている。
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賃借権の物権化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 21:34 UTC 版)
ボアソナードの独自説を立法化し、中途半端に慣習に委ねたのは無意味な学説の押し付けである(江木ほか) 賃借権を債権でなく物権としたために、所有者の許可無く又貸しが可能になるのは不当(村田、末松謙澄)賃借権を強化する趣旨である(箕作) 賃借権を債権でなく物権とすると、債務者以外にも主張できるため借主の地位が強化されるが、抵当権が設定され所有権が複雑化するのと、民法の文理上無理があることから、フランスの通説は債権説。旧民法に概ね好意的だったフランスでも、この規定は困惑を以って受け止められた。 『別調査民法草案』では永借権と共に人権(債権)。
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